9317_戦没画学生慰霊美術館「無言館」
観たい人だけが来てくれればいいとでもいうように、長野県上田市の塩田平の丘の上にひっそりと建つ、「無言館」に行きました。ここは、太平洋戦争で志半ばで戦死した画学生の遺作、遺品を展示している美術館です。館主の窪島誠一郎さんが日本全国をまわり、ご遺族さんたちを訪ね、戦没画学生たちが遺した作品を蒐(あつ)めたそうです。
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口をつぐめ、眸(め)をあけよ
見えぬものを見、きこえぬ声をきくために
窪島誠一郎
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「もし今日が人生最後の日だとしたら、今日やることは、私が本当にやりたいことなのだろうか?」
スティーブ・ジョブズは毎朝、自分にそう問いかけていたそうです。
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私がこの丘を上り、無言館で感じたかったことは、若き芸術家たちが生還の望みの薄い征途につくとき、「彼らは何をしたかったのだろうか」ということでした。
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丘の上に立つ無言館は、コンクリート打放しの壁構造。入口を端に持つ縦の動線と、出口を端に持つ横の動線とが中央で交わり、ヨーロッパの僧院を思わせる「十字架」の形をした間取りでした。
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戦没画学生の作品の前では誰もが無言になってしまう。無言館の名の由来だそうです。
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描く対象は、今まで育ててくれた両親、祖母や姉妹、そして恋人。画学生百余名の作品を、私も無言で観賞しました。中でも私の心に一番残った作品は、伊勢正三の「数寄屋橋界隈」でした。
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伊勢は写生が好きで、生還の望みの薄い征途につく前日も、数寄屋橋に描きにいったそうです。いつもと同じように描いていたという姿勢に、私は深く心を打たれたのでした。描くことを深く愛してことに心を打たれたのでした。
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壁にかかる作品だけでなく、ガラスケースの中には、招集令状、戦地からの絵手紙、そして戦死の報告書類なども展示されていました。伊勢は 30才で中国の野戦病院で戦病死しました。
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初めての訪問では、私はここまでしか感じることができませんでした。けれども、作品のもっと奥にあるもの。あふれるような存命の歓びや、肉親への感謝などを感じたく、私は無言館に何度も訪ねることになるでしょう。
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戦没画学生慰霊美術館「無言館」
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