9310_便器交換は、慣れている移乗の仕方を変えないこと
23年前に竣工した、私のバリアフリー住宅の第 1作のお住まいです。今回、住まいてさんに呼ばれたのは、「ウォシュレットのお湯が出なくなってしまったので、便器を交換したい」とのことでした。通常、便器全体を取り換えることが一般的ですが、あえてそうせず、下の陶器部は残して、上の機能部のみ交換しました。
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便器の「機能部」とは、陶器部の上に載る、タンクや便座、ウォシュレットの部分です。便器全体を交換したとしても、機能部のみ交換との値段差はわずかでした。その理由は、床に接している陶器部の形状でした。
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最近便器はコンパクトになるのに従い、便座先端からその下の床面まで、寸胴(ずんどう)型になりました。相対的に、床に接している陶器部が大きくなったので、車いすから便器に移乗する時、つま先がぶつかってしまう心配があったからでした。
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対して、使い慣れているこの便器は、便座先端が張り出しているように見えます。慣れている便器への移乗を変えないことを優先することにし、機能部のみを交換しました。新しい機能部は、以前のものと全く同じではなく、節水タンクになっていました。
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私のバリアフリー住宅の第 1作のお住まいなので、「便器のかさ上げ」もまた、初めてのことでした。便器の形に合わせるのではなく、便器左右の床全体を高くしました。その後、ここまでする必要がないことがわかり、現在では、便器が床に接する部分の形に合わせて、楕円形のかさ上げ台を作っています。
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最低限のスペースしかないトイレですが、車いすユーザーの奥様がこのトイレで、認知症のご主人を最後までお世話したとのことでした。私はそこまで見越していた訳ではないですが、そのような場面まで、思い浮かべなければとならないのだと、学ばせていただきました。