教養としての「会計」入門
https://gyazo.com/9f1091ce70c6e1f89426eab6bcefa86a
なぜこの本を読んだか
本業でコスト計画を作ったりする活動にコミットするようになったのでそもそも「P/L」とか「B/S」とか「資産」とか「費用」とかをもっと深いレベルで正しく認識したいと思ったのがきっかけ
何が書かれている本か
上記のようなキーワードが具体例やなんでそうなのかまで含めて記述してある。
人によっては好き、嫌いはあるかもしれないが自分は知識だけではなく歴史や事例を交えながら、時には不要な知識についてはあえてざっくりした記述にしたりと読者が理解することにフォーカスしていて良い本だと感じた。
特に、 P/L (Profit and Loss Statement) a.k.a 損益計算書 、 B/S (Balance Sheet) a.k.a 貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)、キャッシュ・フロー計算書 の3つの図の関連性について深く理解できるようになった。
また本書の中にも登場している「会計」の考え方とキャッシュ(現金) の考え方が腑に落ちてなくてモヤモヤしていたが、明確に 「利益を見てもキャッシュのことは何もわからない」 と言い切っていて丁寧な説明をしてくれていた。
メモ
専門用用語や計算、指標が多くあったので内容というよりはインデックスとして自分のための雑記として残す
財務主要3表
B/S (Balance Sheet) a.k.a 貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)
期末などのスナップショットにおける財産一覧であり、前期末などと比較して使うので結果を示している
P/L (Profit and Loss Statement) a.k.a 損益計算書
B/S の結果に至るためのプロセスに関する記録
キャッシュ・フロー計算書
キャッシュの移動を直接見るもの
利益などの状態に依らず「キャッシュがなくなれば倒産」なので重要な財産
B/S
https://gyazo.com/f651a87161b176cc6984bddaffd52d77
※ 本書の図を著者が改変して掲載
それぞれの構造
https://gyazo.com/17186b815f8748803260bdd1b8454fe8
※「営業」という言葉は全て「本業」に読み替えるとスムーズに読める
P/L
https://gyazo.com/53d81ee972e08ce6e94b062a6494c22b
※ 本書の図を著者が改変して掲載
キャッシュフロー計算書
発生主義 という考え方により「キャッシュ」が動くタイミングと会計上の計上のタイミングが異なることがよくある
例えば、商品を出荷した際に月末にその金額を支払ってもらう (このとき発生する請求権として計上する項目は売掛金と呼ぶ) ということは発生し得る。
したがって、キャッシュと利益は別々に見る必要があり、しかも「キャッシュがなくなれば倒産する」という性質上とても重要な資産の1つなので個別で観察できるようにする。
また、投資や借入に伴うキャッシュの流出はP/Lには反映されなかったり、後述するが減価償却などキャッシュの動きと計上が全く連動しない項目もある。
特殊な資産の考え方
棚卸し資産
棚卸し = 在庫のこと
つまり在庫も資産であるという考え方
ここで費用について注意すべきことがあり、
商品を作ることそのものは、現金と商品という財産の等価交換にすぎない
財産が消失する出口 (例えば販売など) で初めて費用が計上される
本書の例をそのまま引用すると (ここでもキャッシュと利益などの移動は同一タイミングでは発生しないということがわかる)
1個100円の商品100個を10000円支払って仕入れました。このうち期中に80個売れた結果、期末には20個が在庫として残りました。当期の費用になるのはいくらでしょうか。
....
確かにキャッシュは10000円支払っていますが、そのうち売上高という収益に貢献したのは実際に販売された80個だけです。ですから、この販売された80個分に相当する8000円だけを売上原価として費用にするのです。
...
販売されずに残った20個は棚卸資産として貸借対照表に計上されます。売れ残った商品は来年度に売れる可能性のある財産なので、財産一覧表である貸借対照表に計上するのです。
減価償却
18世紀半ばから19世紀にかけて産業革命が起こった。
これまで主要な費用は人件費や原材料費だけだったのに対して産業革命以降は大規模な施設の建設が必要となった。
この際に全てを費用としてその年度に扱ってしまうと、その年度は大幅な赤字になってしまう恐れがある (キャッシュとしては動いているので支払能力自体はある) 。
したがってここの実情を反映するためにもそういった大規模施設は将来N年に渡って価値を産むはずだということでN年かけて費用にしていくという考え方が減価償却。
(ちなみにこの例からも「キャッシュと利益などの発生のタイミングが異なることがわかる)
減価償却の重要なポイントは、取得時にキャッシュが流出するものの P/L 上は分割で費用を計上するため「実際にはキャッシュの動きはないものの、費用が発生している」という会計上の整理になり、費用は利益を減少させて結果的に法人税を減らすためキャッシュの動きがないにも関わらず、法人税を抑えることができキャッシュの内部留保の手助けとなる
固定資産の減損
「既に支払った額を回収するだけの十分なキャッシュの流入が見込めないことがわかった」という場合にはその固定資産の価値を費用として処理する必要がありその際には「キャッシュはすでに動いているものの」大幅な損失のように見える。
つまり減損処理によって会計上は多額の費用が発生するが、新規にキャッシュの流出はしていないという状況になる。
(ちなみにこの例からも「キャッシュと利益などの発生のタイミングが異なることがわかる)
経営分析のための指標
ROE (Return on Equity)
ROE という有名な指標からブレークダウンしていくとおおよそ以下のような式変形ができる
https://gyazo.com/36f7c7bb3d8ae98e4cf79dd4f0eaeab2
それぞれについて説明すると
ROE
株主から見た収益性指標であり、つまり株主の投下資本に対してどれだけのリターンが株主に対してあるかという指標
ROA
ROE を分解した際に総資産 (貸借対照表の右側) がどれだけの利益を生み出しているか
財務レバレッジ
負債と純資産の割合で基本的には、負債の割合を増やせば増やすほど ROE が上がる
これは、「株主がどのような資金の出し方をしようとも、会社が生み出した等基準履歴は全て株主のもの」という考え方があるから
(とはいえ後述の安定性指標が悪化する + キャッシュがなければ倒産なので返済義務のある負債を増やしすぎるのも問題となる)
総資産回転率
総資産には、会社設備なども含まれるため、会社の仕組みと捉えることができる。
つまり回転率というのは、売上高を作るのにどれだけの規模の仕組みが必要となっているのかという指標
業種特性が出る指標なのでこれ自体を別業種で比較することに意味はなく、むしろ「ビジネスモデついての理解を手助けするもの
逆にいうと業界内では比較することができて、会社の「動きづらさ」や「無駄」を指摘してくれる
費用/売上高
最終的には「売上を上げる」 or 「費用を下げる」になる
ただし「費用」は必要悪であり、売上を作る源なので悪玉なのか善玉なのかを意識する必要がある
自己資本比率
https://gyazo.com/1f4820117c1628818ed48996ed00dd39
自己資本比率は高ければいいというもでもなければ、低ければいいというものではないのです。
ROEのためには自己資本比率は低い方がいいですが、だからと言って低すぎると、借入金の元本返済や利息の支払負担が増えますから、安全性は確実に損なわれます。
管理会計の話
これまでは全て財務会計 (株主目線で会社のことを説明するための会計) を紹介してきていたが最後に内部の意思決定のための管理会計について紹介されている。
とはいえ紹介されていたエピソードが全てを物語っているのでそれを書いてしまう
毎月2000枚のピザをつくっているピザ屋さんがあります。
ピザの販売価格は1枚800円です。このピザ屋さんでは正社員が2人働いており、人件費の合計は月40万円です。ピザの材料費は1枚300円で、それ以外に店舗家賃などの固定的な経費が毎月20万円かかっています。
...
お客様はあまり多くなく、時間的には余裕があります。また、1人のお客様が食べるピザは通常1枚です。このとき、次の2つのケースが起きたとしましょう。
① ピザをお客様に出すときに1枚落としてしまったので、新たに作り直してお客様に出した。
② お客様が入ってきたのに、怖い飼い犬がいたために、お客様は席につかずに帰ってしまった。
まず大前提として、儲かった、損したは相対的な概念であり比較対象を正しく選ぶ必要がある。
①の場合には、「落とした」「落としていない」で比較すべきだし、②は、「犬がいるから帰った」「犬がいないので帰ってない」で比較すべき。
①
売上高 -> どちらも 800円の売上が立つので差額0
費用
材料費 -> 1枚分余計なので300円多い
固定費 -> 人件費、店舗家賃ともに変わらない
以上から 300円の損ということになる
②
売上高 -> 売れたかもしれないという機会損失になっているので売上高は800円マイナスと捉えることができる (つまり 800円損した)
費用 -> 変わらない
感想
本書全体を通して、知識を伝えるよりも考え方を伝えるということに特化していて自分はとても勉強になったし、すんなりと入ってくれた (その分定義や細かい言葉については曖昧になっているかもだが)
またそれぞれの成果物の関係などについても丁寧に触れていて非常に理解が深まった
特に個人的には「キャッシュ」と会計上の損益が一致しないこともあるけどこれはそういうもんなのかなーとモヤモヤしてた時期があったが「利益を見てもキャッシュのことは何もわからない」と言い切ってくれて非常に心強かった
会計について勉強するならまず間違いなくいい本だと思う