主観的な潜在的可能性
A「ひとりひとりの動きと、この世界はものすごく滑らかに連動しているよね。」「ここで、こう手を動かすと、風が起きて、この風は世界とたちまち連動する。」
B「ひとつひとつ計算してたら大変よね。ラグがないし、どれだけすごいマシンスペックなのかしら。」
A「そうそう。普通の計算ではありえない。これはね、僕が思うには、部分と全体を一致させていると思うんだ。」
B「部分と全体を一致ってどういうこと?」
A「部分でありながら全体でもあるということだよ。」
B「うーん。よくわからないけど。おもしろそう。」
A「部分と全体が一致していれば、部分は全体だから、部分の変化と全体の変化は連動や計算すらしなくていいんだ。なぜなら同じものだから。」
B「なるほど。同じものが同じ動きをするのは当然ね。とはいえ、そんな状態ってどうやったらできるの?」
A「たとえ話でいこう。ここは、無数の主人公を選択できるゲームの世界だ。だれにでも、なんにでもなれる。ヒトや、ヒトではない蚊や石や靴、微生物や粒子にだってなれるゲームの世界って考えて。」「そこで特定の主人公を選択すると、特定の主人公から見える/感じることの領域があって、また、特定の主人公を選択したときには見えない/感じることのできない領域の、大きく2つの領域が生じるわけだ。」
B「イメージがむずかしいわね。。。まあ、つきあうわ。」
A「ここで、特定の主人公を選択したときには見えない/感じることのできない領域を、"主観的な潜在的可能性"と解釈する。」
B「主観的な潜在的可能性?」
A「特定の主人公という主観的な視点/視野/視座からは見えない/感じることはできない、っていう意味では潜在的だけど、その主観的には潜在的な領域を、他の特定の主人公になりさえすれば見える/感じることのできるという可能性の状態だって考えるんだ。」
B「ほほう。他の誰かになれば見える/感じることのできる可能性の総体として、見えない領域を捉えるってわけね。」
A「お!すごい理解度だね。やるなあ。」
B「ここまではね。つづけてつづけて。」
A「で、"特定の主人公を選択したときに見える/感じることのできる領域"と、"特定の主人公を選択したときに見えない/感じることのできない領域"であるところの"主観的な潜在的可能性"を足すと、"全体"になる。」
B「えっ。」
A「自分から見えるところと、その他全部だから、足せば全部じゃんってこと。」
B「あ、そうか。そうなのかしら。うーん。ま、いっか。つづけてつづけて。」
A「お。ありがとう。でね。部分であるところの"特定の主人公"は、自分が見える/感じることのできない領域を"主観的な潜在的可能性"だと認識できれば、見える/感じることのできない領域を"見える/感じることができない"と見える/感じることができていることになるので、"全体"を見る/感じることのできる存在になると、そういうわけなんですよ。」
B「屁理屈っぽいけど。ふふ。言わんとすることはわかったわ。」
A「ただ、ここには落とし穴があってね。選択できる主人公の数が予め規定されている状態だと、こうはいかないのよ。なぜなら、選択することのできない主人公の見える/感じることのできる領域を記述できない、見ることができないからね。」
B「ふむふむ。」
A「で、どうやったらいいかっていうと、いくらでも無限に、部分を、さっきのたとえでいうと、選択できる主人公を、無限に設定してもいいって定義するんだ。」
B「選択できる主人公を無限に設定できる、ね。で、そう定義するとどうなるの。」
A「無限に主人公を設定できるって、可能性としてはどんな主人公でも設定できるってことになるでしょ。そうすると、特定の主人公から見える/感じることのできる領域と、主観的な潜在的可能性の組み合わせは、あらゆる可能性を含めた状態、すなわち"すべて"って言えるようになるというわけでございます。」
B「ほー。なんとなくわかった感じがするー。」「この世界を、無限の主人公を選択することのできる世界って考えて、特定の主人公において見えない/感じることのできない領域を、主観的な潜在的可能性。ふふ。と捉えると、この滑らかさが説明できるってわけね。で、滑らかってのも違って、同じだから同じじゃんってことね。。。」
A「うんうん。そんな感じ。それが言いたかったこと。」
B「あなたもわたしも部分であり全体ってことね。」「すてきね。」
A「でね。この会話が記述されているScrapboxっていうのはその世界観がとってもわかりやすいようにできているんだ。」
B「えっ。そうなの。この話って、そのスクラップボックスってのに記述されているの?」
A「そうだよ。ぼくたちの会話は、全部Scrapboxに記述されている。」
B「ブラックホールみたいね。」
A「似たようなものだよ。」「でね。Scrapboxは、無限にページを記述できるんだ。さっきの主人公を無限に設定できるってやつだね。」
B「それだけだと、特別なツールって感じはしないわね。」
A「その通り。実は、これ以外にも特別なところはないんだ。特別なところを作ろうとせずに、削ぎ落していったからできたツールとも言える。特別なことがないことが特別なんだよ」「で、削ぎ落したところのなかでも一番すごいと思うのが、分類機能。だいたいのツールって、分類機能を個別に設けてるんだけど、Scrapboxは、括ったりとか/箱を用意していれたりとか/札つけたりとかの分類機能も含めて、全部、ページ内の記述で表現できるようになっている。」「それのなにがすごいかというと、分類構造を個別に作っちゃうと個別の分類構造用の要素を主人公にできなくなっちゃうんだけど、それを回避してるんだよ!」
B「よくわからないけど、すごいことなのね。つづけて。」
A「言い方を変えると、どんなページでも、主人公ページになることができる。ってことになるんだけど、それによって、無限にページを作成することができるのと組み合わせることで、さっきのたとえ話の"選択できる主人公を無限に設定できる"が成立するんだよ。」
B「スクラップボックスでは、ページが主人公たちなのね。わかったわ。」
A「で、Scrapboxのトップは、フラットにすべてのページが並んでいて、一見カオスなんだけど、これはまだ主人公が選択されていない状態を示唆しているんだよ」「でね。主人公が選択されると、主人公ページの視点/視野/視座であるところの記述内容を体験できるようになって、その時に記述の中の分類機能である木構造とか網構造とか札がついた状態とかを見ることができるんだ。」
B「わたしたちは、そのスクラップボックスをみることはできるの?」
A「僕たちはScrapboxのページのなかの存在だから、今は、直接は見えないよ。いつかこのページの中から飛び出して見えるようになりたいね。」
B「そうなのね。」「でも無限にページを追加できるのだから、これから作成されるページとページの余白を"主観的潜在的可能性"と捉えれば、わたしたちから、今でもスクラップボックスは見えていると解釈できるかもね(笑)。」
A「うまいこと言うね。」「すてきだね。」
B「括るという概念は、最小にも最大にもなる。」「括るという概念は、言語そのものの機能で、これが世界をつくる。」「括るという概念は、木にも網にも札にも表にもなる。」