4/15/2025 Clenchhh EP セルフライナーノーツ
#思想
#ライナーノーツ
#制作録
今日ClenchhhというEPをリリースしたので、セルフライナーノーツを書きました。
https://satoruohno.bandcamp.com/album/clenchhh
https://music.apple.com/jp/album/clenchhh-single/1808605424
1曲目:pain=RMVR
1曲目のpain=RMVRはなんともサウンドというか~~らしさというものを名状しがたい中で、
Clenchという力を込めつつ歯を食いしばるようなテーマと、サウンドの某アーティストっぽさから、
このような名前になりました。痛覚を殺して痛みに耐える、というようなイメージです。
Painkiller(鎮痛剤)という言葉を利用しなかったのは、Judas Priestが先に思い浮かんだのと、
韻の関係と、非日常感が欲しかったためです。
(Pain Removerという表現だと、Painkillerとは違い、イメージが錠剤以外にも浮かんできやすいかも、と思いました)
サウンド面に言及すると、後半に出てくる他の音を押しのけて無理やり4つ打ちのリズムを押し込んだようなミックスが
曲名のような空元気具合、ギリギリ具合を上手く表せているんじゃないかと思っています。
2曲目:Clenchhh
2曲目のClenchhhは金属的なサウンドデザインとテンポが変わる展開で力が入る感じがして良いと思い、
この名前になりました。この曲の名前が一番に決まって、アートワークとの共通項みたいなものも見えたので、
こちらが表題曲となり、他の2曲の名前も決まっていきました。
直前まで「筋収縮」、「Clench//Contract」という名前から改名を経ており、
EP自体の名称もMuscle Contraction EPとClenchhhの間で迷っていたのですが、
医学っぽい表現はあまり馴染まなかったのと、Contractionという単語が字面的にもあまりにも客観的過ぎて
力んでいないように感じたため、Clenchになりました。
hが多いのは、ギシギシ感というか、タイヤ痕みたいなものです。
3曲目:ちぎれたちぎり(T_T)
3曲目のちぎれたちぎり(T_T)も言葉遊び的な曲名になっていて、
力み過ぎて体が千切れる(Tear)ような感覚と、涙(Tear)がこぼれちゃうぜ、みたいな事を意識して付けました。
「体が千切れる」という表現は安直/鉄板なしんどさから取っているというよりかは、
過労の末に肩から先と膝から下の感覚がなくなったという過去の実体験を基にしています。
力が抜けた感じは中間のポストロック部分で表現していて、その後のユーフォリックな展開はある種のコーピングを経た後、
みたいな解釈を勝手にしています。
また、以前はEP自体がMuscle Contractionという名前だったということもあり、
Contraction、Contract(契約、契り、収縮)という言葉がClench(力をこめる、食いしばる)やTear(涙、千切れる)などの他にアイデアプールというか、作品集に対するイメージ言葉集の中に入っていたのですが、
筋書を残したまま2曲目の名前を語感のために変えたので、3曲目の「結」の部分が浮いたようになりました。
それでも曲名をそのまま残した理由は、この曲名とサウンドのズレた感じが個人的に面白いと感じたためです。
(余談:ここの筋書の解釈というか並びは割と自由で、契約を破られて怒りが湧いて涙が出る、であったり、痛みを我慢してまでルールを力ずくで破ろうとする、など、個々人によって多様になると思っています。ここは僕自身の感情をあいまいなまま音にしたかったということもあり、アイデアプール以上に固めることはしませんでした。)
テーマ
怒りと痛みというものは個人的に凄く長い間取り組んでいて、
僕自身が17歳あたりで作曲を始めるきっかけとなったバンドであるKornやDIR EN GREYも良く扱っているテーマです。
20歳あたりでヒップホップを聴き始めて以降、上記のテーマに加えて「社会的な作品を出してみたい」という思いが芽生え、
表現の仕方にずっと悩んでいたのですが、今回は「社会に対する怒り」の怒りの方に主に焦点を当てて
インストで表現することにしました。クラブチューンも制作してはいるのですが、並行してこのような作品も
作り続けていきたいと考えている次第です。
サウンド面
全体的なミックスの汚れ感は音の扱いが難しかったのもありますが、半分はわざと出していて、
このサウンドの汚れ感が怒りの心情や、勝手に拳や奥歯に力がたまっている感じを上手く
表現できたように感じています。
サンプルは主に自分で制作していて、SerumとFM8を利用しました。
SOPHIE的な金属音はELEKTRON社製のシーケンサーであるMONOMACHINEの仕組みを真似る形で制作しました。
制作について
音源自体は2022年に出来上がったものなのですが、曲名が上手く付けられず、結果としてかなり寝かせることになりました。
しかし名前を考えながら聴き返していく中でバイレファンキの展開を増やしてみたり音を増やしてみたりと、サウンドにも変化を加えたことで、別で制作していた絵とも親和性が高まっていき、最終的には寝かしてよかったなと思っています。
(元々はどれも完全に独立していた作品たちでした。)