Why is Meta destroying its engineering organization?
https://newsletter.pragmaticengineer.com/p/why-is-meta-destroying-its-engineering
Gergely OroszによるMetaのエンジニアリング組織崩壊についての記事
概要
2026年4月頃からMetaのエンジニアリング文化が急速に破壊された
約20年続いた高パフォーマンスなエンジニアリング組織がわずか数週間で崩壊
ソフトウェアエンジニアリングがプロフィットセンターからコストセンターへ転落した
AI以前のMetaのエンジニアリング文化
文化は2つの時代に分けられる
Move Fast and Break Things(2010年代)
2012年にFacebookが10億ユーザー達成時に「リトルレッドブック」という文化本を作成
スピード、恐れないこと、オーナーシップ、既成概念を超える思考を重視
Move Fast with Stable Infra(2020年代)
かつての無謀さは消え、安定インフラを保ちつつ高速に動く方針へ移行
Big Techの中でも極めてエンジニア中心の文化
個人のインパクトを最重視
厳格なプロセスが少ない
テスト・ドキュメント・コードコメントが驚くほど少ない
創業者Mark Zuckerbergがエンジニア出身でエンジニアを高く評価していた
AIへの投資とエンジニアへの利用強制
Metaは5大Big Techで唯一ハードウェアプラットフォームやOSを持たない
Mark Zuckerbergはプラットフォームの機会を二度と逃さない決意
VRのOculus、ARのMeta Glassesに投資
2021年に社名をFacebookからMetaへ変更したがVRは主流化せず
LLM開発の経緯
Llama 1(2023年2月)、Llama 2(2023年6月)、Llama 3(2024年4月)
Llama 4(2025年4月)は深く失望させる出来だった
2025年6月、Scale AIの49%株式を148億ドルで取得
Scale AIのCEOAlexandr WangがMetaのAI戦略を統括
Scale AIはトレーニングデータ・データラベリング・RLHFの専門企業
Alexandr Wangは自身の専門であるデータ生成・ラベリング・RLHFを全社展開
コアエンジニアがゴミのように扱われる
問題1: キーストロークとマウスクリックの追跡、オプトアウト不可
4月下旬、全エンジニアのキー入力とクリックをトレーニングデータ化する追跡システムを導入
個人の銀行ログインやメールも追跡対象かというプライバシー上の懸念
Reuters報道後、最大30分の一時停止と例外申請が可能に
イギリスではデータ保護規制により未導入
問題2: コアチームの30-50%が強制的にデータラベリングへ再配置
製品エンジニアリングチームの30-50%がADO組織(Agent Data Optimisation)へ異動
Metaは創業以来エンジニアに勤務先・業務の自律的選択権を与えてきた
ブートキャンプでチームを選び、内部異動も容易だった
突然インパクトの不明な部署に配属され、キャリアを損なう懸念
データラベリング業務の実態
単純なラベリング(サイトを見て良し悪しを判断)は少数派
AIトレーニングタスクが中心
AIにやらせるタスクを考案し、結果を確認するテストを記述
Harbor frameworkを使いDockerコンテナにパッケージ化
AIが書いたコードを読みフィードバックする
良いエンジニアが必要だが、すぐに反復的で退屈になる
業界では時給100ドル超で発注、OpenAIやAnthropicもモデル訓練以上に投資との噂
インフラ・セキュリティチームが特に大きな打撃を受けた
ADO組織には約6,500人、OpenAIやAnthropicより多い
うち4,000-5,000人がソフトウェアエンジニア
Metaの約25,000人のエンジニアの5-6人に1人がデータラベリング専従の可能性
問題3: 1ヶ月に及ぶ待機ゲームで社内に恐怖が蔓延
4月20日、ReutersがMetaの10%レイオフ計画を報道
4週間誰もが失業の可能性を意識する期間が続いた
問題4: Metaのパフォーマンスレビューは超攻撃的でメトリクス最適化を招く
社内評価PSC(Performance Summary Cycle)はGoogleやAppleより厳格
マネージャーが部下の評価を巡って争い、他チームの評価を引き下げる
ビジネスインパクト、コードレビュー数、コード行数などが武器化される
問題5: トークン使用量が評価対象となりエンジニアが過剰最適化
低トークン数だと低評価・解雇の懸念
社内トークンリーダーボードがトークンマクシング(tokenmaxxing)を助長
30日間で60.2兆トークン使用、AnthropicのAPI価格換算で9億ドル相当
最大の問題: 実質的な仕事より見せかけの仕事に注力するようになる
全員が個人スタッツのためAIを過剰利用
手書きコードが職を危険にさらす一方、レビュー不足による障害は解雇理由にならない歪んだインセンティブ
在籍年数の長いエンジニアは全員が転職を検討
interviewing.ioへのMetaからの登録が5月以降前年比で急増
リテンション目的の株式付与も、自律性喪失への不満から退職を後押しする例も
史上最も恥ずべき障害
コアインフラ・セキュリティチームが突然深刻な人手不足に
5月30日、Meta史上最も恥ずべき障害が発生
Instagramアカウント(オバマ・ホワイトハウス含む)が乗っ取られた
攻撃手順
対象のユーザー名を入手し、対象都市付近のVPN/プロキシ経由でアクセス
MetaサポートAIにアカウントが乗っ取られたと伝え、任意のメールに認証コードを送らせる
それだけで完了する(ゼロ認証パスワードリセット)
メールが本人のものか確認する追加チェックが存在しなかった
AIがこの障害の中心にあった
InstagramのTrust and Safetyチームが約50%をデータラベリング・レイオフで喪失
人間の入力なしのAI生成・AIレビューの変更が原因
監視・アラートを担うTrust and Safetyチームが混乱状態だった
翌日MetaのCISOGuy Rosenが辞任を発表
セキュリティ組織の弱体化を警告したが無視された可能性
社内の混乱
Wiredが社内の深刻な状況を報道
数千人参加の社内プレゼンで暴言による中断が発生
3月結成のApplied AIチームで広範な不満
「文字通り強制収容所だ」との従業員の声
MetaのCPO Chris Coxが上層部(C-level)が混乱を生んだと認めた
「この会社の狂気」が作り出した「過酷」な環境と表現
自業自得の傷
エンジニアは2人の人物を原因として指摘: Mark ZuckerbergとAlexandr Wang
Mark Zuckerbergがビジネスを完全に支配し全決定を下した
記録的な収益・利益の中で10%レイオフを決定
レイオフ以外は全てScale AIのプレイブックに由来しAlexandr Wangが源と推測
コアビジネスよりコーディングAIの訓練を優先する判断
6月12日にもFacebook・InstagramでSEV0(全面障害)が発生
Metaは本来年末にGoogleを抜き世界1位の広告ビジネスになる軌道にあった
MetaのCTOAndrew BosworthがAIリオーグが酷かったと認めた
エンジニアリング文化は死んだ。コストセンター扱いが明確になったため
「AI精神病」はMetaだけの問題か
Mitchell Hashimoto(Ghostty作者、HashiCorp創業者)が他社にも同様の挙動を指摘
「AI精神病」状態の企業が存在し、理性的な会話が不可能
MTBF対MTTRの議論がクラウド移行期と同様に再燃
「MTTRさえあれば良い」という思考の危険性
ローカルなメトリクスでは健全に見えてグローバルには崩壊しうる
テストカバレッジが上がっても意味的理解が下がりうる
Instagramの乗っ取り障害はまさにこの典型例
創業者がAIの能力を過大評価し安全策を捨てる懸念
教訓
AIへの過度な集中が会社の生命線である人々を排除した
イギリスでは10%レイオフの一部が突然撤回された
AIに過剰投資する経営層はMetaの結末を見るべき
Metaからの人材流出は他のスタートアップやBig Techの利益になる
「Move Fast and Break Things」が今や自社のエンジニアリング組織自体に及んでいる