『オペラ座の怪人』(光文社)
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0. いかにしてこの奇妙な物語の語り手は、オペラ座の怪人が実在すると確信するに至ったのか? まずはそれをここで、読者にお話しすることとしよう。
あらすじ: オペラ座で起きた事件と怪人騒ぎの時期が一致するし、証言してくれた人もいるし、地下から怪人の死体も見つかったんだから、オペラ座の怪人という生身の人間は実在したんだよ!
oct24.icon「オペラ座の怪人は実在した」、短くも興味を惹く書き出しで好き。 「怪人」にするか「幽霊」にするかは、訳者あとがきを見る限り結構悩みどころだった模様。 「怪人」だと人間離れはしてても血肉はありそう。まあ実在はするでしょうよ感がなくもない。
oct24.icon原著は1910年からの連載で「30年前の出来事」なので、本編の年代は1880年くらいになると思われる。 oct24.icon原注に「返ってこないと分かってるのに資料貸してくれてありがとう!」などと書いてある。なんてやつだ。
1. 怪人、あらわる?
あらすじ: 道具方主任のジョセフ・ビュケの話を皮切りに、オペラ座で「怪人」が目撃されるようになった。その顔は髑髏のようだとか、火の玉のように燃えているとか、そもそも姿が見えないとか、てんでばらばら。踊り子達もそうした噂を囁き合っていると、ビュケが首を吊って死んだという知らせが飛び込んでくる。
oct24.icon「怪人だと血肉がありそうだから幽霊の方がそれっぽい」とはいったが、しょっぱなからファントムは平気で姿を現しているので存在感がめちゃくちゃある。ストレートに幽霊と訳されないのもわかる。
oct24.icon醜いとは言うが、目撃者の証言によれば生きてるミイラか骸骨といった風貌なんだよな。
真の意味で骨と皮なのでお洋服がだぶだぶになってるのかわいいね……。 oct24.icon後で急に出張って来るペルシャ人もこの時点で話に出てきてる。
2. 新たなマルガレーテ
あらすじ: この日の公演では、クリスティーヌ・ダーエが観客を魅了した。幼馴染のラウールはクリスティーヌに逢うため楽屋に赴くが、やんわり追い出されてしまう。部屋の外で待っていると、クリスティーヌひとりしかいないはずの部屋から、知らない男の声が聞こえる。ラウールはクリスティーヌと入れ替わりに楽屋に忍び込むが、室内に男の姿はない。 oct24.iconラウルが天然のポジティブストーカーで怖い。
クリスティーヌに部屋から追い出されて「ははーん、ぼくと二人っきりになりたいけど医者とか小間使いの手前そういうこと言えないから一旦全員追い出したんだな!」と素で思えるのすげえよ。
幼馴染と書いてはいるが数年ぶりの再会で、今の好感度は未知数。素っ気なくされたら普通へこむだろう。
怪人がどこで聞いてるか分からないので、クリスティーヌは愛想よくできない。
oct24.icon年の離れた弟の恋にニヤニヤしてるラウルの兄が癒し。死ぬって言われてるけど……。
3. ここでドゥビエンヌ、ポリニー両支配人は、オペラ座の新たな支配人アルマン・モンシャルマン、フィルマン・リシャール両氏に、国立音楽アカデミーを去る不可思議な真の理由を初めて内密に打ち明ける。
あらすじ: オペラ座の支配人が交代するため、送別会が開かれる。誰の知り合いでもないのに怪人も参加している。ジョセフ・ビュケの死を知らされた前支配人はショックを受け、新支配人を連れて支配人室に引っ込む。追記された約款書を見せ、オペラ座の怪人の言うことを聞くよう新支配人に告げるが、新支配人は本気にしない。
oct24.icon送別会に参加する怪人も、バカウケして怪人に飲み物渡そうと殺到する参加者も、何?
怪人が参加するのは分からなくもない。関係者と言えばまあそうだし……。
バカウケしてるパーティ参加者のみなさんは分からん。怪人そんなに怖くないんじゃん!
その後飲み食いもせず無言でいるので段々不気味になって顔も見られなくなってきた、とはある。
行事かその打ち上げの時だけ馴れ馴れしくこっちをイジってくる陽キャの無神経さを感じる。
oct24.icon怪人の下手な字についての描写が見られるのはこの章だけ(かどうか分からない)!
「文字を習いたての子供がマッチ棒の先にインクをつけて写したかのようなぎこちない字」! かわいい。
素なのか、筆跡を読み取られないようにわざと拙く書いたのかは今のところ謎。
偽装してない筆跡で書いたものを読まれても困らなさそうなので素か?
oct24.icon月2万フランって当時どんなものなのか分からないので調べる。
4. 五番ボックス席
あらすじ: 送別会の数日後、ふたりの新支配人のもとに怪人から手紙が届く。手紙には、五番ボックス席が貸し出されたことに対する抗議が書かれていた。怪人を前支配人達の悪戯の存在だと考えている新支配人達は取り合わず、五番ボックス席を再度貸し出してしまう。
5. 五番ボックス席(承前)
6. 魔法のバイオリン
7. 五番ボックス席の点検
8. フィルマン・リシャール、アルマン・モンシャルマン両支配人が恐れ知らずにも呪われたホールで『ファウスト』の上演を決行し、それによって忌まわしい事件が起きたこと。
9. 謎の二人乗り箱馬車
10. 仮面舞踏会で
11. 「男の声」の主の名は、忘れねばならない
12. 切り穴の下で
13. アポロンの竪琴
14. 切り穴好きの名人芸
15. 安全ピンの奇妙な経緯
16. 「クリスティーヌ! クリスティーヌ!」
17. ジリーおばさんが明かした、オペラ座の怪人との驚くべき個人的関係
18. 安全ピンの奇妙な経緯の続き
19. 警視と子爵とペルシャ人と
20. 子爵とペルシャ人
21. オペラ座の奈落で
22. オペラ座の奈落でペルシャ人が味わった興味深く、示唆に富む苦難
23. 責め苦の部屋の中で
24. 責め苦の始まり
25. 「樽、樽! お売りになる樽はありませんか?」
26. サソリをまわすべきか、バッタをまわすべきか?
27. 怪人の愛の終わり
28. エピローグ
解説 平岡敦
訳者あとがき