“Anamnesis” プレイログ
舞台 : ファンタジー
Act 1: Pentacles――どこかの街で突然目を覚ます。何も覚えていない。
1. 星の大アルカナ / 星の07「何か言おうとした感覚が舌先に残っている。一言だけでも覚えていないか?」 見つけた。そう言おうとして言えなかった。それが確かにあったという確信だけ残して、何を探していたのか全く覚えがない。いや、それどころか……何も覚えていない。ここは何処だろう。石と煉瓦の家々が並ぶ街中ではあるが、見覚えも人気もない。凸凹に建物が切り抜いた空の端が白んでいる。誰も彼も眠っているのだろう。
2. 塔の大アルカナ / 星の02「自分は何を着ている? 自分の身形を見てどう感じる?」 風が吹き、慌てて上着を手繰り寄せる。なぜそうしたのか自分を見下ろして納得した。ひどい有様だ。斑に黄ばみ、裾は破け、所々穴の空いた外套――着られるだけ丈夫ではあるが、何かの拍子で衣服から布になりかねない。中に着ているものは生地が薄くて心許ない。靴は大きすぎるので、足に布を巻いて帳尻を合わせている。
3. 愚者の大アルカナ / 星の騎士「身体に傷がある。どこに、なぜ付いた傷か?」 額を何かが垂れる感触があった。遅れて冷や汗でも出てきたかと拭い、違うと気付く。濡れたものがぬるりと擦れ、乾いたものが額にこびりつく感覚。血だ。深くはなさそうだが、自分では見えないのでどんな傷かは分からない。こんななりだし、誰かに石でも投げられたのかもしれない。あるいは罪人の証でも刻まれたのか。
Act 2: Swords――思い出せないが、あなたはこの街を知っている。
1. 皇帝の大アルカナ / 剣の04「廃墟が思い出を呼び起こす。ここで何があった? なぜそれが重要なのか?」 起き出した人々に見咎められる前に路地に入った。さ迷って見つけた廃墟と思しき屋根の下でしばし蹲る。伸び放題の蔦に守られているようで妙に落ち着く。――あるいいは、記憶を失う前の私は、ここを仮の塒としたこともあったのかもしれない。古道具は打ち捨てられてはいても朽ちてはいなかった。誰かが時々手に取った証だ。
2. 死神の大アルカナ / 剣の07「気付けばあなたは市場を歩いていた。どんな店があなたを惹き付ける?」 表通りの方が賑わってきた。廃墟を出て路地から覗くと、市の準備をしているらしい。食品を乗せた台車がゴトゴトと行き交う。そういえば食事を摂っていない。果物のひとつも転がり落ちやしないかとさもしい期待をしたが、肉屋の台車が通り過ぎた瞬間、それどころではなくなった。肉の生臭いにおいで吐き気を催したのだ。
3. 月の大アルカナ / 剣の09「誰かが路上で口論をしている。あなたも口論したことを思い出しただろうか?」 吐き気を堪えて蹲っていると、賑わいに刺々しいものが混ざり始めた。露店の場所取りで揉めているらしい。言い争う声が胸の中の何かを呼び起こすが、言葉にならない。あの時もそうだった。自分の行く末に口出しできない私は露店に並べられる肉と同じなのだ。それ以上思い出す前に何とか立ち上がり、私は市場から逃げ出した。
Act 3: Cups――覚えはないままだが、自宅に戻って来られた。
1. 運命の輪の大アルカナ / 杯の06「あなたは贈り物を見つける。それは何で、誰から贈られたのだろうか?」 市場からは離れたかったが行くあてもない。一度休んだ廃墟に戻ることしか頭になく、人目を避けるどころではなかった。蔦で覆われた門を潜りかけたとき、通行人に呼び止められる。逃げるべきか迷ったがその声は気遣わしげだった。市で買ったのだろう果物をいくつか渡される。廃墟の軒を借りることを咎める様子はない。
2. 正義の大アルカナ / 杯の騎士「意図的に隠された箱を見つけた。それはどこにあった? 何が入っていた?」 果物を食べてだいぶ落ち着いた。……未だに馴染みはないが、通行人の反応からいって、この廃墟にいてもいいらしい。何か思い出すきっかけを探していると、壊れかけた寝台と床の隙間に箱が隠されているのに気付いた。取り出して開けてみる。入っていたのは僅かな金銭と屑鉄、そして古びてはいるが手入れされた短剣。
ごみを入れていたらしい木箱を覗き込む。最近の行動が思い出せるかもしれない。……半端に燃えた紙の切れ端に何か書かれている。私宛の手紙のようだ。断片的ながらこちらを案ずる単語が読み取れて暖かい。こんな身上だから焚火に与えざるを得なかったのか。或いは持ち歩けない理由でもあったのかもしれない。
Act 4: Wands――ここまで知り得た過去と向き合うときだ。
1. 恋人の大アルカナ / 杖の騎士「どうしても学びたいことがある。どんな疑問がある? 答えはどこにある?」 今のところ、過去の手がかりになるのはこの手紙だけだ。差出人の名前は焼けてしまっている。どうすれば分かるだろう? 手紙なら誰かが届けてくれたはずである。果物を渡してくれた通行人は何か知っているだろうか。廃墟の軒先に出て座り込む。石を投げられるかもしれないが構わないと思えた。
2. 月の大アルカナ / 杖の04「あなたは音楽を聴いている。何を聴いている? どう感じる?」 座っていると、表通りの方から何か聞こえてきた。いくつかの楽器の音色――身が竦むような厳かな響きがゆっくり通り過ぎていく。思わず両手で耳を塞ぎながらも聳てた。あの音色が我が家の前で途切れたとき、それ以外の全ての音も途絶えたように感じたことを思い出す。聞きたくないが、聞こえなくなるのも恐ろしい。
3. 太陽の大アルカナ / 杖の6「気晴らしが必要で、芸術を探し求めた。どんな芸術? なぜそれに惹かれるのか?」 耐え難い音楽から気を逸らしたくて手近な石を掴み、床を軽く叩く。しばらく繰り返すうち、石が当たった場所に白い点が散っていることに気付いた。チョーク石だ。尖った部分を滑らせるとぎこちない白線が現れる。私の手はそのまま誰かを描こうとしだした。名前さえ覚えていない、手紙をくれたあの人の顔を。
Act 5――自分は何者かを自分の意思で決める。
描き終えた頃には、厭わしい音楽はかなり遠ざかっていた。描いた「あの人」の出来栄えは拙いものだったが、今の私に思い出せることを形にできただけでも充分だ。石を握ったまま私は立ち上がる。探しに行かなくては。その人は案外近くにいるのかもしれない――最初の「見つけた」という確信は「あの人」だったのかもしれない。
感想
よちよち歩きで完走まで随分かかってしまった。ChatGPT が相談に乗ってくれなければ挫折していた。 大したことは相談していない。「ホームレス状態でゴミ扱いできるようなものって何? しかも『太陽』になり得る価値があるものって? 家族からの手紙を焼いた燃えさしとか……?」「いいんじゃないですかそれで」みたいな感じ。
何となく1ジャーナル3行(150文字)を目安にしたが字数が足りてない。起きたことを書くだけで精一杯。
訳しながら遊べば英語を読む練習にもネタバレ防止にもなるかと思ったが、難しい。 先の展開を一切知らないので、話を広げたり畳んだりするタイミングも全然分からない。
おかげで何も思い出していないのに Act 3 で自宅に戻ってしまってびっくりした。
仮に日本語だとしても、ソロジャーナルは一度通しで読んでから遊ぶべきなのかどうかも分からない。