私は、花咲いたシナノキが証人となった、人生で最も甘美な瞬間がどのようなものだったか覚えていないが、シナノキがしばらく前から静かに私の心の琴線をゆらし、すばらしかった日々に結びついた無意識的記憶を深い眠りの底から蘇らせるのを感じていた。私は、心と思想のあいだには一枚のウェールがあることに気づいていた。それをめくるのは甘美なことかもしれないが、もしかすると・・・・悲しいことなのかもしれない