押井守
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鳥がどこに辿り着いたのか、それとも水に呑まれ力尽きたのか。誰も知ることができなかった。だから人々はその帰りを待ち続けたのさ。待ち続け、待ち疲れて、いつか鳥を離したことを忘れ、鳥のことも忘れてしまった。水の下に沈んだ世界ごと。自分達がどこからやってきて、いつまでここにいて、どこにやっていくのかもね。獣たちが石になるほど遠い昔の物語だよ。僕が観た鳥もいつどこで観たのか忘れてしまうほど遠い記憶でしかない。夢だったのかもしれない。君も僕も、あの魚たちのようにとっくにいなくなってしまった人たちの記憶でしかなくて、本当は誰もいない世界に雨が降っているだけかもしれないんだ。鳥なんて初めからいなかったのかもしれない。
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