市場もしくは貨幣の存在の有無は、必ずしも未開社会の経済システムに影響を与えるものではない。この事実は、一九世紀の神話を、すなわち貨幣とは、その出現が市場を創出し、分業のピッチを無理やり高め、人間が本来的にもっている取引・交易・交換性向を解放することによって、不可避的に社会を転換させるような発明であった、という言説をくつがえすものである