バーバラ・スタフォード
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はじめに
不可視のものを可視化しようと18世紀に現われたさまざまな視覚の戦略と理論にはどういうものがあり、それらをどう解釈すればよいのかを論じる、それがこの本の主たる眼目である。
そして「目に見えぬものを目に見えるようにするという感覚の問題」を「美と医の諸活動からとりあげられた一群の支配的身体メタファー」を中心に「超領域的」に研究したのが本書である。なぜならこうしたメタファー、換言するなら「イメージはその時代に力を持ち〜近代のある認識論的、芸術的、科学的な大きな追求の動き」と至っているからである。またそうした系譜は「表には表れぬ身と心の経験を表に表そうという我々の時代のテクノロジーの目標の中に、なお脈々と生き続けている」という。
切解
解剖術を「より深みにあるとか隠されているとかいう部位を見るために切り開くこと」とするガレノス的解剖観が啓蒙主義の中核的問題の、その核を真っ芯にえぐる。どうすれば事物の内部インテリアを見られるか。解剖学(anatomy)と、それと切っても切れない切開(dissection)の術が、深部を相手にする強いられた技の巧みな、工夫を重ねた、あるいは暴力的な研究すべてに対する十八世紀の模範パラダイムであった。解読(decoding)、分割(dividing)、分離(separating)、分析(analyzing)、測深(fathoming)のメタファーが、宗教から哲学、尚古趣味から批評、観相学から言語学、考古学から外科学まで、知のあらゆる領域について考え、表象する仕方に骨がらみ浸透していった。