ニュッサのグレゴリオス
二重創造説に基づくキリスト教的反出生主義
原罪に始まる第二段階は、男女を隔てることで生殖を育む。しかし悲劇的なことは原罪とは誕生と同時に科されることに他ならない。すなわち原罪や死に代表される悲劇は、生殖によって再生産されるのであり、処女とはその悲劇の連鎖を絶ちきることができる。よって理想とされるは、アダムにはじまり、マリアに終わるその過程にある。
こうして〈生殖〉のメカニズムは、腐敗を次世代へ継承=再生産し、新たな死を育む行為であることが明らかになった。その意味でグレゴリオスは「肉体的に子孫を残すことは人類にとって、生命のではなく死の端緒となる」とするのだ。また、そうした再生産の連鎖を断ちきることは「処女性」によって可能になるのであり、処女こそ死への勝利に他ならないのである。こうしてグレゴリオスは下記のように帰結する。