コンスタン
1816『アドルフ』
私は『アドルフ』のなかで、今世紀の主要な精神的な病のひとつ。すなわちあの疲労、あの不確実性、あの無力、どんな感情にも下心を見て、それゆえ、感情が生まれてもすぐに腐敗させてしまうあの永遠につづく分析を描きたかった。
恋は一種の魔法によって、永い思い出の代わりをし、その欠除を補うものである。他の愛情はすべて過去を必要とする。が、恋は、妖術によってのごとく、一つの過去を創造し、もってわれわれを取りかこむ。いってみれば、恋は、つい最近まではほとんど他人だった人と、もう何年ものあいだずっといっしょに暮らして来たような感じをわれわれに抱かせる。恋は輝かしい一点にすぎない、にもかかわらず全時間を占領してしまうかに見える。ほんの数日前には恋はまだ存在していなかった。やがてはもはや存在しないであろう。しかし存在している限りは、それに先立った時期とそれにつづくべき時期の上に、その光を投げかける。