要するにこの人にとってはワインこそ全自然が集まってゆく焦点なのだ。食事は酒を飲むのに都合がよいかどうかでしか価値をもたないし、馬の価値は貨幣ではなくマコン産ワインの小樽の数で測られた。彼にかかるとどんな話でも何のかのと言ってはいつのまにかワインの話題にされてしまう。この機転は才人気取りの教養人士には縁のないものた。こういうわけで、彼はただの呑み助ではなく、飲酒という主音の特徴を充分に備えた、単一情念者の鑑だった