ミュッセ
ミュッセのいう「世紀病」とは、帝政下に生を受けた人間たちがナポレオン失脚後の時代を迎えて、世界制覇の夢破れ、未来への展望を持ち得ぬまま、為す術もなく虚空を見つめているという惨憺たる状態を指す。 https://scrapbox.io/files/6769965f8e03e78a0e4ed787.png
PART Ⅰ
CHAPTER1:TO THE LEADER
Attacked in early youth by an abominable moral malady, (...) Were I the only victim of that disease, I would say nothing, but as many others suffer from the same evil, I write for them
CHAPTER2:
それゆえ説明しがたい不快の感情が若い心に発酵しはじめた。世界の支配者たちによって休息を強いられ、あらゆる種類の知ったかぶり屋に委ねられ、暇と退屈を余儀なくされて、若者たちは腕によりをかけて待ちうけていた泡立つ波が引いていってしまったのを見たのであった(Un sentiment de malaise inexprimable commença donc à fermenter dans tous les cœurs jeunes. Condamnés au repos par les souverains du monde, livrés aux cuistres de toute espèce, à l’oisiveté et à l’ennui, les jeunes gens voyaient se retirer d’eux les vagues écumantes contre lesquelles ils avaient préparé leur bras)。
多くの害を与える社会は、インドの蛇に似ている。インド人の家は、蛇にかまれた傷をなおしてくれる植物の葉でできているのだ、社会はほとんど常に、それが引き起こす苦しみの傍らに、それをいやす葉を置いてくれる。たとえば、朝起きて身支度をし、何時には訪問し、何時には仕事をし、何時には愛し合うといった規則的な生活をする人間は、恋人を失っても、あまり傷つかない。彼の仕事や考え方は、戦場で一直線に並べられた無感動な兵士のものと同じだ。一人の兵士が砲弾で倒れる。すると彼の隣人たちは列をつめる。そして、外観からは、人が一人死んだことなど何もわからないのだ
ぼくは薄暗い通りに迷いこんだ。ぼくは、すべての窓の明かり、すなわち、家庭という奇妙なすみかのすべてを、行き来する車、ぶつかり合う人間たちを眺めた.ああ、なんという孤独!これらの家の屋根からでる煙はなんてさみしげなんだ!これらの曲りくねった道路はなんと苦痛に満ちていることか!そこでは、人間たちが踏みつけ合い、労働で汗水流し、多くの見ず知らずの人間たちが、肘をつつき合っている.この不潔な場所では、孤独な魂は置き去りにされたまま、肉体だけが一緒にやっている.そしてパサージュで君たちに手をさしのべてくれるのは、娼婦たちだけなのだ!「堕落しろ、堕落しろ、そうすればもう苦しまなくてもすむぞ、」これが、町が人間に向かって叫ぶ言葉なのだ
ガリレイは、「それでも地球は動いている」と叫びながら、地面をたたいた。それ故私も、(それでも人間には心があるんだと叫びながら、)自分の胸をたたいた。
実際放蕩には、非常な力、あるいはむしろ、非常に奇妙な力の濫用があるので、最も高貴で美しい性格をもった人々が、それにとらえられてしまうのだ。放蕩は、彼らには放で危険な魅力にあふれているように見える。そして彼らはそこで自分自身を浪費するようになる
私はこの世紀を理解しはじめた。そして我々がどんな時代に生きているのかがわかりはじめた