エスピン=アンデルセン
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女性革命の未完成さ
アンデルセンはまず「福祉国家に革命的な変化をもたらした原因を見逃している」として「それは女性の社会的地位の変化である」と論ずる。
女性革命は、社会の基盤に根源的変化をもたらす。女性のライフスタイルは短期間のうちに信じられないほど激変した。変化に要した時間は、ほんの一世代である。戦後数十年間の典型的女性像とは、主婦として家庭に納まることであったが、彼女らの娘の世代では、自ら働いて経済的自立を手に入れる生活を選択できる機会が増えた。(...) こうした意味で、女性は自らのライフスタイルの選択において「男性化」を体験したのである。 一見喜ばしい「女性の新たな経済的役割はよい兆候であるが、深刻な社会問題も引き起こしている」という。
女性が新たな役割を得たことにともない、同じ社会階層に属する者同士の結婚は増え、第一子の出産時期は遅れ、出生率は人々の希望よりかなり低くなり、夫婦仲は不安定となり、「変則的な」家族は増えた。ちなみに、こうした「変則的な」家族の多くは経済的に脆弱である。また、少子化傾向は長期的な人口推移に悪影響をおよぼす。社会が急速に高齢化するのは、女性革命の副産物といえよう。(...) 社会階層の似た者同士が結婚する傾向が強まることで、稼ぎの悪い世帯と、稼ぎのよい世帯との間で、福祉の違いが拡大するようになった。(...) 快進撃を続けてきた女性革命であるが、キャサリン・ハキムが述べるように、女性革命はいまだに未完成である。 これは勿論ミソジニックな発言ではない。アンデルセンが言いたいのは「女性革命はいまだに未完成である」ということである。そしてアンデルセンが焦点をあてるのは「ほとんどの先進国社会では、採用する政策が女性革命にきちんと対応してこなかったこと」なのである。それゆえ「女性革命が我々の福祉制度に深刻な挑戦状を叩きつけている」というのだ。では具体的になにが原因としてあるのか、それを次のように論ずる。 つまり古典的家族主義から、ポスト女性革命-家族主義に移行せねばならないのであり、前者に依拠したままでは家族主義が家族の形成を妨げるパラドクスから脱することはできないのだ。
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初期の段階では、現代福祉国家はいずれも家族主義を前提としていた
彼によれば,「家族主義」とは下記を前提とした福祉レジームである。
家族がその成員の福祉に対して最大の責任をもつ〜戦後の社会政策は、男性稼ぎ主と主婦からなる家族を前提としていた。最近まで、福祉国家があまりにも所得維持(金銭給付)に偏り、子どものためにであれ要介護高齢者のためであれ、社会サービスの供給の面では未発達だったことの理由は、家族主義の前提から説明される
変化がもたらされたのは、970年以降のことである。北欧諸国において女性の雇用が急増したのに伴い、家族向けサービスが重視されるようになった。また北アメリカとイギリスでは、家族サービスの代わりに部分的税控除により市場を促進する政策が選択された。ベルギー、フランスでも保育サービスが発達した。国家による社会サービスの供給、市場化の促進と方向は異なるが、多くの欧米諸国で「脱家族化」が進行した。