松野駿平「SPLIT」
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- おとなりの行方 -
「隣人」とはいわば、家を並べ積んでいくことの副産物である。合理的に住まう代わりに私事をつつく、それは見えた外力にほかならない。ならばせめて、その気配だけでも遠くに飛ばせないだろうか。それでいて、孤独を強いるようなものでもない。近くでありながら同時に遠くもある状態を模索した。その結果、それは「孤立した住戸と友好的なギャップ」というかたちであらわれた。各住戸を分離させ、共用廊下から引き離し、そして住戸種別を分散させることでそれらの戸口にも距離をとる。いったいおとなりは何処になるのか。その行方をたどるとき、翻ってギャップが紐帯となるような、守ることと受け容れることのあいだに暮らす家が見つかるかもしれない。
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△ ダイアグラム
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△ 居住階部分平面図(2F・SOHO)
2階から上が居住エリアとなっており,SOHOフロアのワークスペースと繋がるポーチでは,仕事の打ち合わせができるようなSOHOとしての外交的な側面を支えている.
また各住戸はLDKを軸に公私のグラデーションを意識してレイアウトしており,来客の動線と交わらないよう,メゾネットの階段はリビングに接続.
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△ 居住階部分平面図(3F・HOME)
一般住戸におけるポーチは客間として小上がりの和室と繋げることもでき,また無数の吹き抜けが上下の隣人関係を築いている.
更に二辺で対照的な開放度をもつL字のベランダは,隣人と適度な距離を保ちながら,日々の暮らしの中で共住の意識を触発させる.
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△ 長手方向断面図
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△ 短手方向断面図
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△ 上層階より下階を見下ろす
基本形を維持しつつも無数のヴォイドを抱えて変化するプランは,風を流して光を通し,各フロアに住人の気配を届けながら気持ちのいいコリドールをつくりあげる.
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△ 居住階平面図(2F-5F)
住戸は全4タイプから成り,それらを断面的に組み合わせ玄関をずらすことで,「お隣さん」の対象が不明瞭な状況をつくっている.
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△ 1階平面図(左:コワーキングスペース / 右:イベントスペース)
渋谷区では毎年「渋谷おとなりサンデー」という地域交流行事を行っており,大小様々なイベントが区内全域でおよそ1ヶ月間開催されている.
そこで,1階大通り沿いに配置したイベントスペース及びコワーキングスペースは,その会場として一体的な開放もできるよう計画.
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△ 地下1階平面図(左:居住者用エントランス / 右:トレーニングジム)
居住者用エントランスは,繁華街から外れた住宅街ならではの落ち着きある南西の角に配置.
またトレーニングジムは住人の利用も想定し,居住階からセキュリティを担保した上で直通のエレベーターを設置.
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△ 長手方向立面図
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△ 短手方向立面図
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△ 大通り側ファサード
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△ 住戸内部(メゾネット)
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△ 商業エントランス
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△ ポーチとコリドール
くっつき過ぎず,はなれ過ぎない.そんなフラットになった関係性の中で,“隣接の住人”だけに留まらない自由な近隣コミュニティの醸成に,私は期待している.
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講評:住人同士の自然なコミュニケーションが生まれるためには、「適度な距離感」が必要という直観を丁寧に建築空間に落とし込んだ力作。各戸のエントランス周りにも居場所が設えられ、各自の自由なアクティビティを展開することが可能となっている。(高橋)
KENCHIKU SHUKAN EXHIBITION 2021