松野駿平「ARTERY」
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生活規模に依存しない共同体が自由に形成される現代では、地域単位で顔を見合わせる繋がりの希薄化が、時代の副作用として生じている。加えて、街の色を醸成する公共施設や都市基盤施設は竣工からおよそ半世紀、今後順次更新の時期を迎えることになる。そんな時代の結節点とも言える今、同じ場所で同じ時間を共有する価値を再確認する必要があると思う。そこで、かつての市の構想であった「道=コミュニティの場」の意思を継承し、遊び場や居場所、そして生活動線といった多様な活動が共存する場をここに提案する。これは市に位置する最も古いコミセンの一つとして、そして”更新の筆頭”として、地域コミュニティの動脈を担う道としてのコミセンの在り方を提言する存在となることを期待している。
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公園は道のように細く長く伸びており、そこはただ子供たちの遊び場になっているだけでなく単純に生活動線として使われていたり、いろんな所に一息つける場所が用意されており、人と人とを繋げる場として静かに尽力していた。
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△ ボリュームダイアグラム
個々の活動をカーテンウォールのような“面”としてではなく、出っ張ったり引っ込んだりしながら展開させることで、それらが重なり一つの活気ある情景として中央に映し出され、公園の在り方を継承した楽しい道をつくり上げる。
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△ 1階
調理室(上)にはオープンダイニングと名付けた食事スペースを併設。試食会を開いたりみんなでお昼を食べたりと、施設での活動の一端を街へ発信する装置として北の端に配する。また南の端に位置する工作室及び展示室(下)には、気軽な施設利用を促す通り抜けの動線を引いている。
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△ 2階
多目的室(上)上部に入り込むデッキは観覧席としても利用でき、南側のデッキは若年層の施設利用を促すため勉強スペースの拡張を主な役割とする。
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△ 活気の氾濫
こうしたボリュームを侵食するように展開されたデッキは、建物の輪郭をそのまま活動との接点として、通り抜けようとする人がふと様子を覗き込んでしまうような、足を止めたくなるような、立体的に活気ある情景を中央の道に氾濫させる。
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△ 南北立面・断面
コミセン通りである北側(上)は公共建築としてのフォーマルな佇まいに仕上げ、戸建て住宅が整列する南側(下)は、「住宅街に突然現れる公園」という市の特色ある体験を反映。
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講評:通り抜けることとと広場に溜まることをダイアグラムとして分かりやすく建築化した全体とは別に、コミュニティが生まれるための緻密な細部が恐ろしいまでに作り込まれた松野君らしい素晴らしい提案である。全体と細部が別次元でどちらも正しく存在することに戸惑うが、細部が全体を侵食し始めているところに現代性が表れている。願わくば、矛盾を孕んだ全体性を細部が正していくみたいな展開も見てみたい。(富永)