杉山舞「波紋を描く」
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設計主旨
敷地が商業エリアと住居エリアの境目にあることから、商業と住居を混ぜることで街全体を繋ぐ役割を持たせたいと考えた。青山という商業が盛んな場所だからこそ、商業と住居を分けず、集合住宅と商業を混ぜた一つの新たな「街」のような複合施設を目指した。商業と住居の「個」たちが自然と融合し、商業の豊かさと住居の豊かさが建物全体に混ざり広がっていく。
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敷地
敷地は、根津美術館の道路を挟んだ向かい側の敷地で、商業エリアと住居エリアのちょうど境目にある。
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また、敷地の青山や表参道は、商業が盛んで、それぞれの店舗は外部にまで個性を漂わせ、それぞれの「個」がうまく混ざり合っている街だと感じた。
ダイアグラム
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敷地は商業エリアと住居エリアの境目にあり、一般的な複合施設は、プライバシーの観点から、上下階で分離されるなど、繋がりが希薄になりがちである。そこで、商業と住居を分離せず、混ぜることで、街全体を繋ぐ役割を持たせる。
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それぞれの「個」が混ざることで、商業空間と住居空間の2つの側面をもったオープンスペースが生まれ、そこでは、利用者と居住者のような本来、複合施設での交わりが浅い両者の関わりが強まる。その光景は人の居住から、ショッピング、アクティビティまでが複合的に行われる一つの「街」のようにみえる。
各階平面図
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▲1階平面図
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▲2階平面図
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▲3階平面図
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▲4階平面図
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▲5階平面図
この複合施設には、大きな広場から小さな共有部、開放的な共有スペース、細い道、小さな心休まる隠れた空間など、様々な場所がある。そこでは各々がその時の心情や状況に応じて好きな場所を選べる。
大きな共有スペースは、各階ずらして配置したことによって、各階に効果的な吹き抜け空間が生まれ、そこでは上下に視線が抜けて、各階の店舗へ誘導するようにした。
また、商業が密集しているところ、商業がポツンと1つだけあるところなど、各階、商業と住居の密度が異なる。それが街の地域性となり、歩くことで変化する街の様子を感じ取ることができる。
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この平面計画は、単なる箱を積層したものではなく、採光や通風等を考慮しながら行った。
住居について
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住居はプライバシーの確保をするため、庭を介して入ることとした。パブリックスペース、庭、住居の順で、プライバシーのヒエラルキーをつくっている。従来の住居は閉鎖的だったが、今回の住居は、庭があることで、人々との緩やかな繋がりが生まれるほか、採光や風通しも良くなる。
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それぞれの住居には必ず採光が入る庭がある。上下階の異なる住居の庭同士が適度な距離をもって隣接していて、庭が中間領域となり、互いの存在を認識し合う。
住戸プラン
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同じ形でも住む人によって、住戸プランを変えることができる。例えば、店舗をもった住居は、庭にまで商品が並ぶなど、庭の使い方も変わり共用部との関係性も変化する。
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▲断面図
立面計画
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▲立面図
商業エリアと住居エリアそれぞれを向く面で開口の大きさを変えて、二面性をもった外観としている。商業エリア側は大きく、住宅エリア側は小さな開口を開けた。これによって、商業スケールの住宅や住宅スケールの店舗など、スケール感が逆転した混ざり合いがみられる。
商業と住居を混ぜることで、まるで一つの「街」のようになり、訪れた人同士、住民同士、そして訪れた人たちと住民が、影響し合い、豊かな空間がつくられる。
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講評:複合された住空間と商空間という課題に真正面から取り組み、最高の解決をした秀逸な案である。単調になりがちな住空間を外部空間をうまく利用することにより、商空間をも取り込みながら、プライバシーを含めて、絶妙に解決している。設計プロセスも時間を含めうまくコントロールできており、教える側としても楽しく進めることができた。(永曽)