捧弘紀「束の間の齎」
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△今回は、建築学生、教員のためのキャンパスを設計した。近年、新型コロナウイルスの影響により、大学に行かなくてもオンラインで授業が受けられるため、キャンパス行くという行為が疎かになっていた。そこで、キャンパスという空間に存在意義を持たせるべきだと考えた。大学は、利用者によっては、滞在時間も長く、マンネリ化してしまう空間になる。そこで、私は木材を被覆材として利用した「木」で囲われたキャンパスを提案した。木材には、空間に温かみを生み出し、人を豊かにする空間をもたらすことができると考えた。また吹き抜けを道路側に多く設けることで木材がより象徴的な役割を担い、建築学科の活動を外に表出させるきっかけを作った。その空いた空間テラスなどを設けることで、より開放感のある居場所を提供した。そして名前の「束の間の齎(つかのまのもたらし)」は、大学生という、人生の束の間の時間を、木によって”齎される”空間で、たおやかに、過ごしてほしいという願いが込められている。
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△1階は半屋外の空間を設けて、大学関係者以外の方にも、ベンチで一休みできるような空間を目指した半屋外空間は吹き抜けているため、非常に開放的で豊かな空間となっている。
◯柱と被覆材:構造体である鉄骨(600×600mm)、燃え代(木材厚さ100mm)を用いることで、構造、ルートAの耐火建築物(2時間)を満たしている。(耐火構造とする主要構造部は、壁、床、屋根、柱、梁、階段が、耐火部材である必要がある)
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△階段をあがると通路途中に展示コーナーがあり、作品の展示を誰でも目を通せるようになっている。
そのまま南に向かうと、講義室がある。講義室は半分吹き抜けを設けることで、集中力を散漫させず、ほどよい開放感の中講義に望むことができる。
テラスは道路境界線から、オフセットされた一に配置することで、落ち着く空間を目指した。
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△3階には主に講評スペースを設けた。
間仕切壁を腰の高さにして、外からも講評の様子が見えるようにした。また講評スペース内は可変的な空間にすることで、様々な用途に対応可能とした。
図書コーナーは展示コーナーと同様に共用空間に設置することで、誰でも利用できるようにした。
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△4階は大きな吹き抜けを設け、壁を腰高さにすることで、教員と学生だけではなく、学生間の交流、互いに高め合えるような空間を目指した。
外からも活動の様子が見えるように、建物中心の4階に配置した。設計の授業は建築学生を重きを置くべき授業だと思ったので、学生の想像力を刺激してくれるような空間を設計した。
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△5階から7階には、研究部門(研究室・院生室・会議兼ゼミ室)を配置した。
1~4階は人の出入りが多いため、低層に配置。
比較的人の出入りの少ない研究部門を高層に配置した。
研究部門の諸室は、「研究室2、院生室1,会議兼ゼミ室1」を一つのユニットとして捉えて、学生、院生間の交流も生まれるような空間を心がけ配置した。
また、研究部門は滞在時間が長く、リフレッシュできる空間が必要だと考えて、
各ユニット毎の会議兼ゼミ室の奥に専用のテラスを設けた。共用のテラスではなく、会議室の奥に封じ込むように配置することで、より落ち着く空間を提供した。
また5Fは、4F吹き抜け確保のために、テラスはないが上部吹き抜けを設けることで平等性を保った。
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講評:オーソドックスなラーメン構造から階高の変更や吹き抜けだけで、かなり豊かな空間構成を作り出せている。単なるラーメン構造は経済合理的で敬遠する学生も多いが、そのリジッドで整理された空間は、強く主張しすぎないことで、中の振る舞いが引き立つということがある。内部を作り込むことや被覆として木材を使うなど細やかな配慮を積み重ねていくようなことでそれらを示してくれた。建築は、創造性や新規性を評価しやすい批評構造を持っているが、まとめ上げていく総合力も必要な能力として評価したい。(斎藤)