建築設計Ⅳ/2023年度
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建築設計Ⅳ/2023年度
これまで取り組んできた課題では、与えられた「敷地」の中で設計を行ってきました。一般的には、敷地の中に立てられるものが建築物であり、建築基準法もその中で適用されます。しかし、私たちが住む世界の風景は、個別の敷地内の建築物のみで構成されているわけではありません。また、コロナ禍の影響もあり、日本でもようやく歩道や車道上を人々の活動の場とする試みなども増えてきつつあります。敷地の中だけで閉じて完結する建築ではなく、法規や慣習的な区分を超えて、これまでとは異なった視点からの設計を試みてください。道路や河川、公園といった敷地以外の場所での計画、土木構築物と建築の融合、あるいは敷地外の場所から得られた学びを建築物に適用して設計するといったことも考えられるでしょう。設計の対象とする場所は、大学周辺(千代田区内)とします。まずは千代田区を歩き観察し、対象を定めて分析を行うことから始めたいと思います。
建築の境界はどこにあるのでしょうか。その外壁でしょうか。それとも、その敷地境界でしょうか。それとも、それが在る周辺、まち、都市でしょうか。この課題では、そこに在ること、から建築を考えます。まずは、敷地を見つけてください。そして、その敷地を取り巻く風景を理解するための手段をスタディしましょう。どのようにこの敷地を見るか、どのように風景を感じるか、という視点を獲得するところから始めたいと思います。時間も空間もどのスケールで対象を捉えるかで、見える風景も変わってくるでしょう。あるいは、環境保全という視点で見るのと、文化の継承という視点で見るのとでも、風景の捉え方は変わってきそうです。敷地は₁ ヵ所でも複数箇所でもかまいませんが、考える建築および建築群の合計の延べ床面積は指定範囲内とします。つまり、ある規模の建築を成立させること、ということが条件です。プログラムや機能は、追って考えていくこととします。
ごく単純に言えば、住宅とは食べて排泄して寝るところ、すなわち消費のための場所といってよいでしょう。かつて住宅は、消費だけでなく、農作業や家畜の飼育、販売といった生産のための場所でもありました。しかし、近代以降、時代の変化とともに集約的な空間は分化・純化し、現在の消費のみの住宅となったわけです。近年、住宅を取り巻く状況は変化しつつあります。小規模ながら生産活動が住宅に組み込まれることも見られるようになりました。そこで、生産と住宅をさらに緊密な関係に置くことで生まれる新しい住宅の可能性を考えてください。可能性を広げるために、住宅は単一ではなく複数の集まりがいいですね。また、どんな生産活動を組み込んでも構いません。ただし、まったく住宅の枠組みから外れてしまうのも違うでしょう。もしかすると、これは住宅の境界線を探る作業なのかもしれません。その他の条件は課題説明時に提示します。
あらゆる形を普遍的に取り扱うトポロジーという思考法がある。位置の学問とも呼ばれ、形を連続的に変形しても保たれる性質に焦点を当てるもので、例えばマグカップとドーナツは「トポロジカルに同じもの」とみなされる。一方、身体を超えたスケールをもち大量の部材の集合体でさまざまな場所と時間を横断して生産・使用され続ける建築には、様式や構成や形式といったそれらを普遍的に認識し、定義・分類・共有する方法が模索されてきた。この課題では、まず実在する建物を対象に普遍的な性質を探索・収集し、表記を試みる。そして次に、それらを運用し「トポロジカルな変形体としての建築」の創作に取り組んでほしい。対象は各々の自宅とする。個人の生活に寄り添う私的な存在にも建築の普遍性はきっと備わっている。最も身近な建物である自宅を掘り下げて創造的に見直(MINING)し、社会や時間を横断するような自律的建築を生み出す挑戦である。なお敷地は自宅と同様、用途は前半の最後に抽選で決める予定。
『構造は光を与え 光は 空間をつくる』建築家、ルイス・カーンが残した言葉です。今回の課題では、「光」が建築空間にどんな影響を与えていくのか、そこで過ごす人の心境はどう変化していくのか……ということを共に考えていきながら、具体的な〈建築〉へと繋いでいくことを目指します。敷地の設定は、都内エリアで各自が想定することを考えています。「光」をキーワードとして建築を構想していきますが、具体的な〈建築〉へと導いていくために、各
自が「用途」を決め、その目的空間を支えるためのサーヴァントスペースもあわせて計画します。その結果、生まれる建築は、そこで過ごす人にとってどのような場になっていくのだろうか。〈空間の質感〉を決めていく要素は実に多様です。「光」を手がかりに、空間としての「豊かさ」とは何かを考えていってほしいと思っています。
モノ消費からコト消費への移行、コロナ禍によるリモートワークの普及など都心部の都市開発プロジェクトは複雑な状況に直面している。しかし、施設やインフラの更新時期にあり、建築物の建て替えや都市開発の機運は各地で立ち上がりを見せている。そのような中で、せっかく都市開発プロジェクトが動いても、テナントの未入居・撤退による空室化など、人々に使われない施設ができるのは事業のみならず街にとって不幸である。本課題では、人々に使われる都心部の複合開発プロジェクトとはどのようなものか構想したい。
これまでの建築設計課題と異なるのは、開発用地には土地の権利者がおり、周辺地域の文脈や歴史、立地特性の読込みなど都市的リサーチが肝となるため、課題書で与えられた設計条件をもとに事業企画から組み立てていくことが必要となる点である。したがって、そうした都市的リサーチと事業企画提案など都市開発プロジェクトの全体像をまとめた企画書(A 3 判)も重要な成果物の一つになる。なお、この課題はたんなるハコモノとしての建築物の設計ではなく、企画立案および「新たな都市生活の提案」であることを心してほしい。