山口結衣「弧の家」
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住宅を設計するにあたって事例調査をする中で、伊東豊雄さんの「中野本町の家」に出会った。その設計趣旨を調べ、住宅について考えているうちに、その家族だけのごく私的な空間が必要とされているのではないかと考えるようになった。その一方で、谷中のまちの雰囲気や町内会館と公園に隣接した計画敷地が持つ性格は、開かれたものであると感じたので、プライベートな内部空間とパブリックな外部空間が両立するようにスタディした。
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円弧の中心側は人が集まるような形。一方、複数の円弧で囲まれた内側は、ぎゅっと押されて内向的な空間になるのではないかと考えた。
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円弧の壁を用いることで真っ直ぐの壁よりも距離が生まれ、2階の子供部屋は、ひとつながりでありつつもお互いの空間が持てる。南側の壁面は一階ごとのセットバックさせて、外側の圧迫感を減らしている。
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内向的な空間に適した採光になるように、光が壁をずらした隙間から壁を伝ってぼんやりと入ってくるようにした。覗き込めば、上下階の活動が見える距離感を目指した。
講評:コロナ禍で家に籠って考える時間が増える環境だからこそ辿り着く、2020年らしい住宅のカタチである。面白いのは内側に籠るためのその形が、外側にパブリックな場所を提供しようとした結果として表れているところだ。自分(または建築)の内側をリアルな社会に問うという従来の社会的な関係が壊され、バーチャルな社会がリアルな自分(または建築)を規定するのだというコロナ禍ならではの回答に見える。(富永)
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