小林由実「谷中の小道」
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谷中には古い街並みと仏教の寺院が多く残されており、また谷中周辺は文学にゆかりのある土地が多い。そんな昔ながらの街並みと歴史や文化を後世に残すためには世代間の交流と外部への継承が必用だと考えた。そのため、住宅を設計する中で人々が交流しやすい空間づくりを行った。
その中で私は谷中の密集した建物とそこをつなぐ細い数多くの道に注目した。谷中の道はプライベートな住居と様々な商業施設や観光施設をつなぐだけでなく、細い道だからこそ生まれる近隣住民や観光客同士の近い距離感が様々な交流を作っておりとても魅力的な空間である。よって、その魅力的な空間を立体路地として住宅に取り入れてプライベートな住民の個室とだれでも自由に訪れることのできる空間をつなぎ、ここを利用する人がお互いに交流が深められるような住宅を提案する。
1.プラン
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住宅には大学生の男女5人が生活しており、谷中の人や観光客に向けて自由に開放している空間も設けられている。自由に開放している施設の中には谷中を訪れて気づいたことや学んだことを共有したり商店街の帰りにふらっと寄る事のできる休憩スペース、また谷中についての様々な展示物や本が置かれているギャラリーから谷中の魅力をより多くの人に伝えている。またあえて最短距離ではない形でぐるぐると部屋の周りをめぐっている道と、5人の住民が部屋の前の道で作る様々な仕掛けは、ここでしか体験できない魅力的な立体路地の空間を作っている。
2.各階平面図
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1階は谷中の人や観光客に向けて開放しているキッチンやダイニング、2階には訪れた人に向けたギャラリーと住民の部屋、3階には住民の部屋と住民が共同で使うプライベートな生活空間が配置されている。街の人や観光客に向けたスペースはできるだけ開放的で外から興味を持ちやすいように道路よりも床の高さを下げたり、開口部を大きく設けている。一方プライベートな個室や水回りの部屋は地下や高さの高いところに設け、前面道路を歩く人と視線がぶつからないよう工夫している。また個室同士の配置も個々のプライバシーを守るために開口部の位置や部屋の高さを変えて室内同士で視線がぶつかり合わないようになっている。
3.模型写真
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南側の道路から見た様子
狭い道と敷地の中で、圧迫感を感じさせ無いように道路側の空間をできるだけ広く設けたり、全ての部屋に光が差し込むような断面計画を行った。よって地面に近い場所でも明るく広々とした空間が生まれている。
https://gyazo.com/882407a21cb78297d5b728472e630de7公園側から見た2階の様子
部屋を孤立させることでできた建物の隙間からの光が下の階にまで伝わる。
講評:住宅の設計課題は、対象規模が小さく用途も身近であるため一見すると取り組みやすい。ただ、身近でありすぎるが故に主観や個人の価値観が強く出てしまうことが、難しさの一つではないだろうか。小林さんの作品は、谷中の街に存する活きた路地を立体的に再現した住戸群と言える。文化をつくる立体路地が住戸を繋ぎながらめぐり、集まった住戸が群としてのファサードをつくりだす。その立ち現れかたが、社会性や地域性をもつ独りよがりでない建築となっているように感じた。(佐屋)
KENCHIKU SHUKAN EXHIBITION 2021