前澤実優「なみなみ園」
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「すまい」と「仕事場」に分けられた町のようなこども園。10人ほどの子どもとボランティアの方が過ごす「すまい」では少人数での生活を学び、本屋や食べ物屋、道具屋と隣接した「仕事場」では、大人数の中での社会的活動も学ぶことができる。子どもたちは毎日、すまいから仕事場へ出勤する。
地域と関わり合うこども園とするため、本来はセキュリティの役割を持つ壁を波状にし、立体的に切断することで、視覚的・感覚的にこども園と地域との境界をやわらげることを試みた。
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町のようなゾーニング
波のような壁によってボリュームが分節され、町のようなゾーニングになっている。
赤線で示した壁が「すまい」を構成し、年齢や性別がバラバラな園児少数名+ボランティア1名の共同体が生活する場となっている。青線で示した壁が「仕事場」などを構成し、保育士と大勢の園児が遊戯などをして過ごす場や、「おつかい」などによって社会的な学びが得られる場をつくっている。すまいや仕事場などを繋ぐ「街路」の役割を持つ園庭は、主に芝とゴムマットで構成されているが、芝の部分を土にすることで畑をつくることもできる。
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南側から見る
住宅地に馴染む立面計画。
屋根は切妻と片流れの二種類を採用している。すまいや仕事場(遊戯室)は切妻屋根で、天井高と軒を低くすることで落ち着きや安心感が生まれる。お使いの場のみ片流れ屋根で高さを出し、お店のような印象を与えるようにしている。
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北側前面道路から見たすまい
壁や柵などの境界をつくることで安全を守り、その壁をなみなみにすることで地域との境界をゆるめる。立体的に切り取ったなみなみの壁から子どもたちが顔を覗かせる。
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「すまい」
各すまいごとに小さな庭、水場が併設されている。10〜15人の子どもとボランティア1人が共同体となって過ごす場所。細い波の壁が園児用のエントランスになっており、園児はここから登園しすまいに入っていく。すまいは大きな集団(仕事場など)に入る前のクッションの役割も果たす。
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「おつかい」
南西側にある本屋(本を借りて読める場所)。公園側に開いている。ボランティアの方が読み聞かせをしてくれることもある。
本屋の他にも、おもちゃを借りることができる道具屋や、園庭の畑で収穫した野菜を調理する食べ物屋がある。道具屋では物を借りたら返すということや、物を大切に使うことなどを学んでいく。
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「ランドリー」
東側にはランドリーがある。保護者が送り迎えの際に立ち寄ることができる。また、ランドリーを使うために訪れた地域の人が子ども達やこども園に興味を持つことで地域と園の距離が縮まる。
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平面図
保育士、子どもたち、地域のボランティアの繋がりが何通りにもなることで、子ども達は社会性を身につける。また、地域に知り合いが増えることで、将来成長した時に地域やそこの住民に目を向けるようになるのではないだろうか。地域に馴染んだ幼稚園が、地域に親しみを持ちながら成長する子ども達を支える、地域に寄り添うこども園。
講評:各世代の交流が乏しい閉じた住宅街という町の性格から、直感的に境界線を弱めるなみなみの壁からスタディしている。そこへ、擬似家族的な小さなコミュニティと幼稚園に出勤というプログラムを創り、積極的に多世代の交流を試みている。強いデザインだが、それを地域を開くことに昇華できている。(仲條)
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