稲盛大翔・清水とおる「繁華街道路における時間帯別の交通・滞留・荷捌機能の分担手法ー『タイムシェアードストリート』の概念提案及び兵庫県神戸市・サンキタ通りにおける実践分析ー」
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本研究では、全国の『タイムシェアードストリート』の分析に加え、兵庫県神戸市・サンキタ通りを対象とした『繁華街版Link and Place理論』を用いた実践分析を行い、繁華街道路における時間帯別の交通・滞留・荷捌機能の分担手法を明らかにした。
『タイムシェアードストリート(以下、TSS)』とは
本研究におけるTSSの定義は、交通・滞留・荷捌機能を時間帯別で棲み分ける道路である。TSSの条件は、道路空間の時間帯別の使い分けには設置物の可動性が求められ、占用主体の存在により設置物が確実に設置・撤去されるため①占用制度を活用し、②道路交通法第八条に基づき特定の時間帯に車両通行を禁止する道路とする。
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研究の背景と目的
近年、我が国では車中心から「人中心の道路空間」への転換が求められ、「道路占用許可関連制度」の活用による滞留空間の創出が加速する。道路空間は、車両や歩行者の通行を支える交通機能及び人々の居場所としての滞留機能を棲み分けることが求められる。また、繁華街は飲食店が集積するため、荷下ろしに対応した荷捌機能の確保も求められる。しかし、貨物車の駐停車は快適な歩行空間及び円滑な自動車交通の確保を阻害するため、単一の道路で同時に交通・滞留・荷捌機能の兼備は困難だと考える。
そのため、繁華街の道路空間においては、これら3機能を空間的に分離するのではなく時間帯別で分担することで、歩行者の安全性及び快適性が向上し、「人中心の道路空間」の形成に寄与すると考える。実際に、国土交通省は2025年に「歩道と路肩等の柔軟な利活用に関するガイドライン」を策定し、道路空間の時間帯別の使い分けを示唆している。しかし、必要な調整事項の提示にとどまり、道路空間の時間帯別の使い分けについて、具体的な整備・運用方法は十分に示していない。
TSSは、交通規制により時間帯別で各機能を棲み分けるため、交通規制の最適化、時間帯別の周辺道路ネットワークを考慮した機能分担の計画が不可欠である。
以上より、本研究の目的は、全国のTSSの分析に加え、実践分析を行い、繁華街道路における時間帯別の交通・滞留・荷捌機能の分担手法を明らかにすることである。
研究の方法
文献調査により法規制の整理を行い、兵庫県神戸市・サンキタ通り周辺エリアにおける現地調査により「繁華街版Link and Place理論」を用いた分析を行う。
研究の成果
本研究ではTSSについて以下の点が明らかとなった。
① TSSは交通規制の実施日・時間の設定に加え、荷捌き場の設置や進入車両の制限を組み合わせることで、曜日特性、荷捌機能の需要及び歩行者交通量に応じた道路空間の機能調整が可能である。https://gyazo.com/afe2c43e8e789177ebd256cc6972e607
②サンキタ通り周辺エリアにおける「繁華街版Link and Place理論」を用いた分析により、サンキタ通り周辺の機能分布の特徴を明らかにした。周辺幹線道路は終日高い交通機能を担う。一方、サンキタ通り及び歩行者専用道路は昼から夜にかけて滞留機能が高まる。荷捌機能は、朝及び昼に荷捌き場を有する路線へ集中し、夜には大きく低下する。さらに、歩行者専用道路への貨物車進入や荷捌き場における一般車の駐停車といった課題があり、時間帯別の機能分担が十分に成立していない実態が示された。これには、荷捌機能の需要が高い道路へのTSS導入による機能の再配置が必要である。
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③機能の可変性を有する道路の特徴として、自動車交通量が極めて少ない道路は、昼夜を通じて交通機能が低く、滞留・荷捌機能の柔軟な切り替えが時間帯別にできる。この場合、歩車道境界の視覚的区別を低減する路面デザイン及び貨物車の駐停車位置を誘導する空間的操作が機能変化を成立させる要因である。自動車交通量が多い道路は、交通機能の維持が前提となる。しかし、昼の荷捌活動や夜の滞留行動が確認される場合、交通機能を維持したまま、時間帯別かつ部分的に滞留・荷捌機能を分担するための運用方針の検討が必要である。また、十分な道路幅員及び路側帯を有する道路は、機能変化は時間帯別ではなく、空間的な棲み分けによって実現する。交通機能を主軸としつつ荷捌機能を位置づけることで、周辺道路の機能負荷を調整する役割を果たす。
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他地域への示唆
繁華街における時間帯別の機能分担には、❶需要の時間帯別把握、❷道路特性に応じた機能配置、❸法規制と空間活用の一体的設定、❹継続的な検証・更新という段階的アプローチの有効性が示唆される。以上を踏まえ、繁華街道路における時間帯別の機能分担手法をStep1〜5の5段階に分けて提案する。
Step1.各機能の需要の把握:荷捌き調査や自動車交通量調査等を通じて、各道路単位ではなく周辺道路機能の需要及びその供給可否を踏まえ、交通・滞留・荷捌機能それぞれの需要を時間帯別に把握する。
Step2.機能分担の設計:繁華街の道路空間を最大限活用するため、交通機能は幹線・広幅員道路、滞留機能は条件に応じたTSSや歩行者専用道路、荷捌機能は幅員が十分な道路等へ機能を分担する。特定時間に集中する荷捌きスペースは時間帯によって他機能と兼用し、効率的に運用することで土地が限られる繁華街における道路空間の活用効率の最大化が可能となる。
Step3.法規制の設定:Step 1で算出した各機能の需要を根拠として、第2章にて提示した②-3〜②-6の法規制を設定する。②-6進入車両の制限は、貨物車のみの進入を許可する運用とすることで、交通規制時間外の歩行安全性及び荷捌機能を担保する。さらに、占用制度の活用による設置物の可動性の確保は、時間帯別の空間活用及び法規制の一体的な運用に寄与する。
Step4.空間計画:TSS導入空間の構築においては、歩車道の段差解消と路面材の統一により境界を低減させ、交通規制時の歩行者の滞留を誘発する。同時に、車寄せの整備による荷捌き機能の確保と、ボラード設置による規制時間外の歩行者の安全性担保を図り、各機能の両立を実現する。
Step5.検証及び更新:整備後も定期的に道路空間における機能分担の検証を行う。課題が確認された場合には、再度調査を実施し、その結果に基づき法規制の再設定及び空間構成の見直しを行い機能分担を調整する。
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参考文献
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7) 西村克彦,山口敬太,吉野和泰「英国におけるシェアド・スペースの実践と理論の展開に関する考察」土木計画学会・講演集,64 2111-,2021年
8) 吉野和泰,山口敬太,川崎雅史「ウィーン・マリアヒルファー通りにおける歩車共存道路の実現過程と合意形成:歩行者中心の道路空間への再編」土木学会論文集,第79巻,6号,22-00224,2023年
9) ヤン・ゲール「建物のあいだのアクティビティ」鹿島出版会,北原理雄訳,2011年
講評:ここに入力(改行は不可)(泉山塁威)