植田智大・室田悠介「マニュアル策定に基づくパークレットの計画及び空間的特徴ー海外81都市網羅的分析及び事例研究を通じた日本への示唆ー」
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本研究は、海外都市におけるパークレットマニュアルの記載内容を網羅的に分析するとともに、代表都市の事例調査を通じて、マニュアル策定に基づくパークレットの計画的特徴及び空間的特徴を明らかにしたものである。1,015都市を対象とした文献調査から、パークレット実施167都市、マニュアル策定81都市を抽出し、さらに代表的な海外5都市と神戸市を比較対象として検討することで、日本におけるパークレット普及への示唆を導いている。
【パークレット】とは
路上の駐車スペースや縁石沿いの空間を、ベンチや植栽などを備えた小規模な公共滞留空間へ転用する取組である。歩行者の居場所を増やし、地域の交流や沿道商業のにぎわいを支える手法として各都市に広がってきた。起源は2005年のサンフランシスコにおけるPark(ing) Dayにさかのぼり、2009年には同市のPavement to Parksで制度化され、現在では街路を人中心に再編する代表的な都市空間活用策の一つと位置付けられている。
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「研究の背景及び目的」
近年、我が国では道路空間活用が各地で展開され、賑わい創出や滞留空間への需要が高まる中、路上駐車帯等を歩行者空間へ転用するパークレットが注目されてきた。しかし、日本の既存ガイドラインは留意点の整理にとどまり、申請手続の標準化、設置基準、維持管理を含む継続運営の枠組みを一体的に示すには至っていない。その結果、民間主体の参画や継続的運営を前提とした普及が難しい状況にある。そこで本研究は、海外都市のマニュアルに着目し、その記載内容の網羅的分析と事例分析を通じて、パークレットの計画的特徴と空間的特徴の双方を明らかにすることを目的とした。
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「研究の方法及び論文の構成」
本研究では、主に以下の3点の調査及び分析のもと、海外都市におけるパークレットの計画的特徴と空間的特徴の双方を明らかにし、日本への応用可能性を考察した。
❶.196ヶ国を対象としたインターネット調査により、パークレット実施都市とマニュアル策定都市を抽出し、普及傾向とその要因を整理した。
❷.抽出したマニュアル81事例を対象として、①計画、②デザイン・空間構成、③管理・運営の3分野から記載内容を比較し、類型化を行った。
❸.各類型の代表都市と日本の比較対象として神戸市を取り上げ、マニュアル調査に加えてGoogle Street Viewを用いた空間調査を実施し、関係主体の役割分担、普及の変遷、空間構成の特徴を分析した。
「研究の成果」
❶.パークレットの普及傾向:
パークレットの普及は特定の気候帯や経済条件に限定されず、寒冷地を除く多様な気候で実施・マニュアル策定が確認され、GDPの大小にかかわらず導入されている。
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❷.パークレットにおける計画的特徴:
マニュアル81事例を対象に記載内容を整理した結果、パークレットマニュアルは①計画、②デザイン・空間構成、③管理・運営の3分野から構成され、とくに①②の記載が厚いことが明らかとなった。なかでも「設置可能な位置」「幅・長さ・高さの基準」「バリアフリーへの対応」「申請プロセスの明示」といった項目の掲載が多く、マニュアルは単なる参考資料ではなく、申請条件と空間条件を標準化する政策文書として機能している。そのうえで、記載内容の差異からType.A〜Fの6類型を導出し、最低基準・申請要件・維持管理を包括的に備える類型ほど、民間主体の参画と継続運営を支えやすい一方、未整備型では導入や運営が個別対応に依存しやすい構造が示された。
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❸-1.パークレットにおける分布、設置年数、関係主体の特徴:
6都市の比較より、パークレットは商業地域及びCBDを含む中心地域に集積する傾向を示す一方、住宅地やオフィス街にも一定数確認された。また、設置年はCOVID-19を契機に集中的に増加した都市と、複数年にわたり段階的に展開した都市との差異が確認できた。加えて、制度面は道路管理者による道路占用許可と交通管理者による道路使用許可から成る二許可制が共通基盤であり、海外都市では民間主体が占用・維持管理を担う役割分担が成立していた。
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❸-2.パークレットにおける空間構成の特徴:
パークレットの空間的特徴として、全体的に「木材」を基調としつつ、交通安全を担保する「壁」を設け、利用行為を柔軟に支える「可動式の椅子・机」を配置する構成が基本形であることが明らかとなった。一方で、「安全テープ」、「植栽」、「暖房器具」などの付加要素には都市差がみられ、これは各都市の許可制度やマニュアル記載内容の違いを反映している。また沿道1階用途ではレストランが過半を占める都市が多く、パークレットが飲食・滞留利用を支える路上空間として定着していることが明らかとなった。
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「結論及び日本への示唆」
結論:
本研究より、パークレットの普及に資するマニュアルの要件として、以下の3つが明らかとなった。
①.申請要件の標準化による参画のハードルの低減
②.安全性及び公共性を担保する最低基準の提示
③.維持管理等を含む継続運営の具体化
これらの要件において、パークレットの導入を公共空間として定着させる機能を担う。
日本への示唆:
我が国において既存のガイドラインが留意点の提示にとどまり、申請手続、設置基準、運営手法の共有が十分でないことが、合意形成や許認可取得を難しくし、暫定的導入にとどまる一因であると考えられる。したがって、日本においては、既存のガイドラインを発展させ、許認可手続の標準化、安全性及び公共性を担保する設置基準、継続運営に直結する管理要件を体系的に示す「日本版パークレットマニュアル」へ転換する必要がある。これにより、民間参画の促進と公共空間としての定着の両立が期待される。
参考文献 (3章の調査に用いたマニュアル81事例のうち、75事例を省略)
1)黒川雄代, 小山了介, 泉山塁威, 宇於﨑勝也「国内におけるパークレット導入の傾向に関する研究」,日本大学理工学部学術講演会予稿集, F2-20,pp.255-256, 2021年
2)伊藤孝紀,岩崎翔太,鈴木篤也,西田智裕「道路空間再編に向けた社会実験の効果検証-岡崎市康生通りのパークレットを対象として-」,日本建築学会計画系論文集,第86巻,第779号,pp.197-208,2021年
3)遠藤新「サンフランシスコにおける道路の広場化デザインに関する考察-パークレットとプラザによる人間中心の道路空間の創出-」,日本建築学会計画系論文集,第81巻,第725号,pp.1589-1598,2016年
4)佐々木宏幸「路上駐車帯の屋外飲食空間としての利用に関する研究-フレキシブルゾーンとパークレットの比較を通して-」,日本建築学会計画系論文集,第83巻,第747号,pp.885-895,2018年
5)渡邉真理,村山顕人,清水裕之「サンフランシスコの "Parklet" の手続き・費用・技術基準に関する研究」,日本建築学会東海支部研究報告集,第52号,pp.637-640,2014年
6)Stevens, Q. and Morley, S.「The contested value of parklets」,Journal ofUrban Affairs,Vol.47,No.9, pp.3154–3172,2025
7)SF.gov「Shared Spaces Manual」
8)CITY OF MELBOURNE「Outdoor dining permits」
9)Prefeitura de Porto Alegre「MANUAL PARA IMPLANTAÇÃO Parklets Porto Aleg」
10)Wellington City Council「Parkelt design guide」
11)parklet-stuttgart.de「How To Parklet」
12)神戸市建設局道路計画課「KOBE パークレットの取組み」
講評:ここに入力(改行は不可)(泉山塁威)