廣田 龍平「シミュレーションを活用した森化建築の設計提案 -渋谷区植物ふれあいセンターリニューアル事業を対象として-」
https://gyazo.com/58f076fe7a41b82d601e3cf6b68cb5ad
【 はじめに】
本修士設計は都市の建物緑化の変遷と時間軸を導入した設計手法に着目し、緑を媒体とした新たな都市の建築を森化建築と題して提案を行うものである。
従来の緑化建築=(竣工時に壁面や屋上に装飾的な緑を施した建物)は、建物解体時には緑も同時に喪失してしまうという時限的な緑化方法にあった。
今回提案する森化建築とは、緑(植物)を空間構成要素として設計段階から取り入れることで、竣工時から解体時、その先までをデザインの範囲へと拡大する事を可能にし、都市を漸増的に緑化していく時間軸を持った新たな建築像を提示するものである。
https://gyazo.com/4d0c1820be46a577dcf00d193a016cf9
【設計手法】
森化建築という経年変化(時間軸)を取り入れたデザインをするにあたり、植物の成長変化や、適応環境等をどう建築に統合するかが重要になる。
そこで、これまで設計に時間軸・環境のデザイン導入を試みている既往建築・植栽計画を対象に、コンポーネント図を用いて比較分析を行った。
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分析の結果、従来の緑化建築が時限的な緑化になってしまう要因は【建築計画後に植栽計画を行うという設計プロセス】に由来する部分が大きく、
改善する上で【コンピューテーショナルを活用したシミュレーションデザイン手法】が有効である事が考察された。
以上の経緯から、従来の設計プロセスとは逆順に当たる【植栽計画から建築計画】を行うという、新たな設計プロセスを再構築し、提案を行う。
以下のコンポーネント図は、それを可能にする再構築した設計プロセスと、その接続環境を整える為の構成要素の抜粋である。
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またこの設計プロセスを可能にする工法をSI工法の概念を応用し、逆SI植栽工法として提案する。
https://gyazo.com/1bf6360877bee739ceeae6cab1e3ce49
【計画敷地・プログラム】
計画敷地は現在リニューアル事業が計画されている渋谷区ふれあい植物センターの位置する一区画である。
https://gyazo.com/cae2287472dce6b79e44f816b92928d2
また渋谷区では、現在保育施設の整備が急がれている。しかし少子高齢化が加速する中で、その保育施設が近い将来供給過多になることは安易に想像できる。そこで森化建築の特徴である時間のデザインとして、保育施設から屋外植物園へとコンバージョンするプログラムを提案する。
【森化建築の実践】
作成した植栽モデルを活用し、植物の適応環境や経年変化を建築計画取り入れる。また、既存植物園の分析とを掛け合わせ、再構築した設計プロセス(=森化建築)の実践を行った。
https://gyazo.com/e5a72a889f53140e75f429549e5367da
【平面図】
樹種の数十年後の大きさ・環境ををシュミレーションにより予測した上で、逆算的な建築のボリュームや、配置ゾーニング計画を行なった。
https://gyazo.com/c3c52de8365852f42b3983cafcb8299f
【断面図】
樹種事の最大ボリュームによって、建物高さが規定されていく。
https://gyazo.com/d0a23492e6621ff447de32f5031f0f2b
https://gyazo.com/4677b215558e5bd6779f340bd3769ef8
【時のデザイン】
https://gyazo.com/b137baa23575e1d6a77a1a83c33fa477
植栽計画から建築計画を行う事を可能にすることで、建築が森へとコンバージョンしていく、緑を媒体とした新たな都市の建築像を示した。
【最後に】
これまで無機物と有機物として、建築と植物は平行線を辿っていた。しかし今日、コンピュテーショナルデザイン手法が加速した事で、デジタルを介してその関係は大きく変化し、両者の世界にパラダイムシフトが起きようとしている。
本修士設計では、建築側の起こりうるパラダイムシフトの一例として、従来の設計プロセスの逆転とその実践を示した。
講評:最後に工事される植栽は建物や計画地の隙間になんとか納め、大きくなりすぎて建物を圧迫しはじめると、バッサリ切り下げられるという運命なのが普通で、建物や人の目線に翻弄されている。そこで、植物が翻弄されるのではなく、堂々と生き続けるための建築や空間づくりを、コンピューターで解析して提案するということに挑戦した。空き家が朽ち、危ない空間になるより、人間以外の生物の住処になりうる森ができる未来は都市を新しい形に導いてくれると思う。(山﨑)