小澤寛径「移り行く関係」
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設計主旨
集合住宅と商業施設という性質の異なる施設が同じ空間に備わっている今回の複合施設は、その繋がり方が大切な要因になってくる。この二つの距離感が近いとそれぞれの施設を使う人間が不自由になってしまう。
かといって離しすぎると二つの施設を複合する意義を失ってしまう。この塩梅を調整し、バリエーション作ることによって、多様化する生活スタイル、家族構成にあった住宅を提供できるのではないかと考えた。
ダイアグラム
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ファサードを利用した施設の分離
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この建物は南側立面と北側立面で形態が大きく異なる。南側の立面は主に住宅部分で構成されており、穴が開いたコンクリートの箱が積み重なったような外見となっている。一方で北側は旧山手通沿いにあり、通行人を商業施設に取り込むために中庭中心に大きく開けている。手前側は柱と梁によって構成されており、ファサードに四階まで続いている階段が見えるため、一目で商業施設が上の階層まで続いていることがわかる。
この建物は一階から四階まで商業施設と集合住宅が共存しているため、それぞれを利用する人間が混同しないように、ファサードに大きな違いをつけ二つの施設を分離している。
集合住宅と商業施設という二つの異なった性質を持つこの複合施設だからこそ、訪れた人間にその特徴をわかるようにしたかった。
人を導く
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一階部分は扇状に広がる中庭を中心に商業用施設、イベントスペースが広がっている。この中庭が旧山手通り沿いに広がっており、中心に樹木が存在していることで外から視線が集まりやすく、人を広場に引き付けることができる。レストラン、イベントスペースは中庭に向かって凹凸を作ることで表面積を増やし、大小さまざまな空間を造っている。一階からの住人の動線外の人間とは動線をわけて、裏の階段からエントランスに入る方法、正面の商業施設の奥にひっそりと続く道からエントランスに入る方法、正面の手前の階段から各階へ上がっていく方法の三つが存在する。住人の生活スタイルと気分によって、家の出入りを自由に楽しむことができる。
集合住宅部分
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.住戸部分の共用廊下は4m×4mのブロックに穴が開いて、その中をくぐるような形になっている。住宅部分がブロックの積み重ねで構成されているという事が内部からもわかる。
また、ブロックのくぼみを利用した。ポーチがついている住宅もある
建物全体の構成
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上の図のようにこの建物は上に上がるにつれて役割が商業施設から住宅に切り替わっていく。さらに商業施設の内容も下層のレストランやイベントスペースから徐々に住民に対しても利用しやすいような内容に切り替えていくことで、階層ごとにグラデーショナルに質を変えている。また四階まではすべて商業施設の奥に住宅が位置しており、二つは常につながり続けている。しかし外見上の質感は異なっており。二つの施設を利用する人が混ざらないような設計となっている。
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講評:住居や商業を細かい単位(ここでは4m角)に細分化し、その組み合わせ方を慎重にデザインすることで多様な場所を生み出している。商業建築だけなら4mグリッドでつくらないし、集合住宅だけなら2種の箱のアイデアには至らない。その意味で、集合住宅と商業施設の複合だからこその建築にたどり着いた秀作である。(雨宮)