宮沢 豪 「徒歩t分の軌跡」
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1.設計趣旨
近年、我々の時間と空間の認識の変化により、商店街の形式は徒歩何分という絶対的時間価値に縛られて空間自体に認識が向かなくなっている。そこで私は地域住民だけでなく学生や社会人の利用が多く見受けられ、空間的需要が高いにもかかわらず、通り抜けの道としての利用が顕著な「六角橋商店街」に着目した。この商店街において、時間に対して空間を知覚する絶対的な時間による認識方法ではなく、空間の知覚によって時間経過の認識が輻輳していくような空間の知覚から時間を捉える相対的な認識方法を模索することで、現代社会における新たな時間と空間の捉え方を生む空間を設計する。
2.計画敷地
敷地は神奈川県横浜市神奈川区六角橋に位置する六角橋商店街である。 この敷地の特徴として六角橋商店街大通りと仲見世通りの二つの軸があることと、緩やかな傾斜であることが挙げられる。この商店街を
マンガ的手法により部分的に改修し、2 軸の関係性を再構築を行う。
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3.マンガへの着目
3-1 マンガ的時間性
時間と空間の関係性を考える中で、時間という観点から独自の時間性を解釈できる媒体として、マンガに着目した。マンガというメディアは紙面上(2D) に「時間と空間」を閉じ込め、コマの並置関係によって読者に物語として認識させる。このメディアを介して記述できる時間性に焦点を当ててみると時間の輻輳性ととその性質を見出すことができる。マンガは読み手の読むスピード、主観的時間、物語の時間、これら三つの異なる時間軸が同時に流れるような時間の輻輳性や主観的時間と物理的時間の伸縮性を引き起こすような作用を内在させている。 これらの時間性を担保するマンガ表現に着目し、マンガ的手法による空間形成を図る。
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3-2マンガというメディアの分析
マンガというメディアは紙面上の媒体である。紙面上のメディアを通して見出せるマンガ的時間性に着目する。この時間性を担保するマンガ表現から着想を得て、マンガ的解釈を定義する。ここで定義したマンガ的解釈を建築をつくる論理、マンガ的手法として提案する。以下の三つの視点に着目し分析を行った。
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4.マンガ的手法
4-1.マンガ的解釈
分析からマンガは三つの概念的操作「デフォルメ的操作、ビブン的操作、ストーリーライン操作」によって成り立つと考える。マンガは刹那の連続が断続的に描かれ、それぞれの刹那には固有の時間の幅が内包されている。
マンガというメディアの根本的な考え方は刹那に揺らぎを与えることであり、刹那の揺らぎは人の時間の感じ方に干渉し、滞留や加速を引き起こす。この考え方をマンガ的解釈とし、マンガ的体験を作っていく操作をマンガ的手法として提案する。坂道のある商店街というシークエンスの形式の中で任意の刹那の揺らぎを知覚させ、ページをめくって得るコマの全体性の把握とコマを読むというような、マンガを読むような体験を形成する。
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4-2.マンガ的手法
マンガ的解釈により、建築体験をマンガ的体験とする三つの設計手法を展開する。
a:デフォルメ的操作
既存の商店街をどう残すか。デフォルメ化により、既存の商店街の形態的特徴や人物関係性を対象としながら改修していく。そのデフォルメの強弱により、マンガのコマの表層・印象のように既存のファサードなどの形態に緩急を与え既存の関係性を再構築していく。
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b:ビブン的操作
デフォルメ化した既存のファサードとファサードの間の空間に作用させる。刹那を切り取り、揺らぎを与え、滞留と加速を引き起こす操作。ヨコビブン(水平分割)、タテビブン(鉛直分割)、ナナメビブン(空間分割)により空間を微分的に分割していく。ビブンの強弱により、刹那の揺らぎを作り、コマの中で停滞・加速して読み進めるように建築を体験させる。
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c:ストーリーライン操作
刹那の揺らぎによる物語の知覚を繋げ導線を構築。商店街の建築群をどう体験させて、物語を構築させるかに影響する。商店街の一本道に縛られない自由な導線を形成する操作。
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5.設計概要
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○フリーマーケット・交流広場
視点1:商店街の連続立面の中で軸をあえて45度傾けたフレームを挿入することで立面を微分し、二軸を繋ぐ。商店街の始まりでもあり終わりでもあるという点からコマのはじめとおわりのような緩急を与える役割をもつ。
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○魚大本店・オープンスペース
視点2:人物関係面から既存の商店とアプローチのデフォルメ化・強調と空間にビブン的操作を加えていて、両通りを通る人を迂回させる。微分化によって連続立面の単調なシークエンスに緩急を与え、時間感覚を伸縮させる。
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○闇市・コミュニティスペース
視点3:床と壁の曲面化によるビブンとファサードのデフォルメ化・省略の掛け合わせ。曲面化により視線を誘導し迷子を誘発し、感覚時間を停滞させる。
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○ミニシアターエリア
軸の回転・挿入、既存アーケードの強調・変形の操作。裏通りを横断するように2階部分に架け橋を設けて、下の道から導線として繋ぐことでリターンを創出し、時間を巻き戻すような感覚を与える。
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○図書・交流エリア
ヨコレイヤーや収束・発散といったビブン的操作で地形を生かした形態。駅方面から裏通りの商店街のアプローチを変化させ、絶対的時間に縛られないある種寄り道するような体験をつくることで主観的時間の揺らぎに重きをおく経験を生じる。
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この商店街の体験を通して、体験者が定量的面でも定性的面でも徒歩t分といういくつもの変数tを知覚する。
講評:ここに入力(改行は不可)(山中新太郎)