宇佐見拓朗「再生建築における空間の構成方法と<床/壁/天井>の状態の関係性に着目した分析及び設計提案 -足立区千住の既存住宅をケーススタディとして-」
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論考部分:再生建築における空間の構成方法と<床/壁/天井>の状態の関係性を分析し、 空間構成の体系化及び効用の把握を行ない、概念モデルを作成した。
設計提案:足立区千住における区画整備予定地に対して設計手法を援用し、街区全体を改修することで地域資源(職住一体や芸術活動)の活性化を目指した。小さな操作の連続によって、区画整備に変わる公共性の再構築、 地域住民や活動の参入を図った。
既存ストックの利活用として注目される再生建築では、新旧の部位の操作による居住環境の改善に期待がされている。
そのため再生建築では部位をいかに操作し空間が規定されているのか、またそれによって生まれる空間的効用の把握を目指した。
そこで「空間の構成方法(新旧の部位の扱い方)」として<刷新/対比・同居/残存>の3つの構成を、「床/壁/天井の状態(下地の視覚的状態)」より<隠蔽/片側現し/現し>の3つの状態を定義し、185事例の再生建築の分析を行なった。
分析をもとに再生建築の空間構成を5つに類型化し、改修の指針を示す8つの概念モデルを作成した。
概念モデルは空間構成上の多様性があるだけでなく、改修後の用途、環境条件などから評価することで既存建築との適合性を獲得している。
設計提案にあたり、足立区千住日ノ出町における区画整備予定地である敷地を選定した。
敷地の選定では、本地域の空き家率の高さ、地域性の変化による文化施設や空き家の商業転用の増加、また商店街の終着点であることに着目した。
これらのコンテクストから「商・住・芸の複合化」をプログラムとし、商店街との連続性、周辺住宅街に対する公共性を再構築した。
点的な改修ではなく区画整備でもなく、街区全体の改修を行うことで地域資源の活性化を目指した。
小さな操作の連続により地域に大きな価値を見出す再生建築の姿は、縮退社会における一つのあり方ではないだろうか。
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分析方法
縦軸に「空間の構成方法」を、横軸に「床/壁/天井の状態」を取り、各部位の関係性を折れ線グラフで記述することで再生建築の空間構成を把握する。
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分析シート・分析結果
折れ線グラフの形状が近似している事例(=内部の空間構成が類似している事例)を抽出し、5つのTypeに類型化する。
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概念モデルの抽出・作成
内部空間に対する5つの類型をさらに外観から考察し、8つのモデルを抽出する。
さらに改修設計に援用する8つの概念モデルを作成する。
「機能的/環境的/意匠的効用」を記述した上で、改修後の用途・環境条件などから評価することで既存建築との適合性を獲得する。
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設計プロセス
①②「劣化条件」「採光条件」に応じた増減築
③コンテクストに応じたプログラムの規定
④ ①〜③よりプログラム、環境条件を考慮して概念モデルを適用し、全体を再構築する
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北西からの俯瞰
大きく開けた裏側に対して、商店街から連続する正面性を踏襲したファサードと抜けのある外部空間が見られる。
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一階平面図
歩行空間に対してギャラリー・SOHO・商業のプログラムを配置することで公共性を再構築し、内部と外部が一体的に利用される曖昧な領域を形成する。
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減築空間・共用部
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半屋外空間・テラス
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建物① 断面詳細図・内部空間
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建物② 断面詳細図・内部空間
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建物③ 断面詳細図・内部空間
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建物⑤ 断面詳細図・内部空間
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南側からの外観
住宅街に対してテラスや中庭・路地が現れ、地域住民に開かれた全体像を見ることができる。
講評:昨今の再生建築に見られる傾向を探りながら、折れ線グラフで記述された独自の表記法は、研究成果として高く評価できる。このノーテーションから導き出された8つの空間概念モデルを駆使して、木造建物が立ち並ぶ日本の典型的な都市風景に、自らが構築した再生手法を介入させていく一連の手続きは鮮やかである。詳細に描かれた図面の数々に裏打ちされた密度高い提案から、再生建築ならではの空間性を垣間見ることができるだろう。(古澤)
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