大塚達哉 「鬩ぎ合い、交じり合い、揺さぶる建築-都市のハザマに住まう」
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自分にとって南青山という地は、 出向くことのできない高級感のある場所である。何か萎縮してしまうようなそんなイメージがあるのだ。実際に足を運ぶと、 街並みが雑然としていて、 あまりに統一感がない。その窮屈さこそが「 賑わい」 ともいえる。自分はそんな賑わいは南青山に潜む対立関係から導き出されているように感じた。南青山に潜む多くの対立は個性を持って街に存在し、 それらは必ずしも二者択一で解決されていないのが特徴であった。 つまり、 この地に建物を建てることは、 対立の解決法をどう読みとるかが重要であり、 デザインや建築を描写する方法が異なるだろう。 だからこそ今のように個性を持った南青山があるのだ。対立する二項をどう配置するか。 複数の対立をどう並べるか。 取り扱う二項対立関係などがリズミカルに表現されたデザインや建築は、 例外なく豊かな体験を提供してくれるのではないか。それは二項の動的共存であり、「 体験デザイン」 である。サプライズ、 感動、 長く使って飽きの来ない愛着の体験などを提供してくれる。従来の様に、商業空間と住空間を別々にデザインするのではなく、今回はそれぞれを同時にデザインする。それは建築のカタチで解決できるのではないか。都市に埋蔵した住空間のための豊かなオープンスペースと、都市に開放された商業空間のための豊かなオープンスペースが同時に共存して、同時に体験できる建築を提案する。
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南青山には個性的な多くの対立が存在したが、それらは二者択一で解決される必要はない。建物を建てる際には対立の解決法が重要で、複数の対立をリズミカルに表現したデザインや建築が豊かな体験を提供する。これを「体験デザイン」と呼ぶ。
〇コンセプト
従来のようではなく今回は、それぞれを同時にデザインする。住空間と商業空間が本当に豊かなスペースを確保して同時に共存して同時に体験できるように提案する。それは建築の形でできるのではないでか。https://gyazo.com/29fa99c7181ac7b892684c9b4311e333
〇ダイアグラム
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郊外型の考えとして、戸建て住宅はそれぞれ同士離れていますが、一歩外に出るとダイレクトにつながっている。
都市型の集合住宅は壁一枚で区切られているだけなのに距離がある。その部屋から出ないと他とつながれないということだ。これというのは横とのつながりがなく、集住本来の意味である集まって住むとは言るえないのだ。
そうではなく、個の住宅自体が直接つながり集まって住むことが、新しい都市型の、文字通りの集合住宅になるのではないかと考えた。
そこで従来の個の住宅と共用部が反転している構成を考える。共用部のような大きな豊かな空間は集まって住むための住まいそのものになり、個の住宅のような小さな独立した空間は共用部のように都市とつながるためのものになります。従来の個の住宅と共用部の使い方を反転することによって、集まって住むことの新しい豊かさを考えた提案である。
〇1階平面図
表と裏をつなぐかのように十字のスリッドで繋ぐだけでなく、コンクリートをも1 メートル浮遊させることで商業と住空間を隔てない曖昧な空間にする。エントランスも平面としては長方形をキープしつつもパースで見た際に、吸い込まれるような造形になっている。住宅が密集する北東側に、人々を集客するような幾何学を利用する。反対に南西側は都市を表したような隔絶された世界を示すためにエッジのついた造形に。
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〇4階平面図
住居と商業のハザマと屋内と屋外のハザマをデザインする。
ごく普通に住居で生活する人たちの上や下で、まさか商業が展開されているとは誰も思わないだろう。
そんな閉塞的も見えるコンクリートに囲まれた住居に対して、一歩出ると吹き抜けを介して上下階の声や、商業施設の賑わいの様子を見ることができ、班屋外的空間で住民とのつながりが垣間見える。
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〇立面図
住戸の中で何気なく生活する住人は、 まさか自分の住む上や下で、 お店等の豊かな商業空間が開かれているとは想像しないだろう。https://gyazo.com/14f884b4dd707d16f8c74d40dc0a1254
〇断面図
採光を上手く取り入れるためにずらして積層させたメゾネットタイプである。 一方でコンクリート外は、飛び出た突起物の上や下では豊かな商業空間が展開されている。https://gyazo.com/37c4bab585d80cc4c8eb7cef559b3bd0
〇ストーリー
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〇模型写真
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宇宙船が降りたったような、舟のようなこのかたちは、この都市に集まって住むひとつの大きな家族の強い意志を表現している。
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立面を見てわかるようにビジュアル的に空間と商業空間が表裏一体となって表意しているのがわかる。
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上から下まで採光が貫くように行き届き、 それを拾うかのように住戸が配置され、 上手く生活にも反映させている。
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コンクリートとガラスによる中間領域に入り込むと、豊かなオープンスペースもった商業空間が広がっている中にいきなり切り取ったように住空間が表出しているのがわかる。
講評:都市という漠然としたものから感じ取った感覚そのものが作品となっている。その感覚を丁寧に、深く強く発酵させていったことで、結果として都市の中での商業施設というものも、集合住宅というものも従来のあり方を破壊してしまった作品である。表現方法も伴い、その都市に対して暴力的とも言える設計とは反して、多様な生物が豊かに暮らすことができる樹上の大きな巣のような、海底の珊瑚のようにも感じる不思議で魅力的な作品である。(篠崎弘之)