塚本琉海「生きる家」
卒業設計/2025年度
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これは、実家を含めた4軒の仮の改修の計画です。人の生活や家族の構成は短いスパンで絶えず変化し続けるのに、その変化が起こっている場である家は変化することはありません。そこで、人の変化に合わせて家が人と共に生きていくように改修し続けたらどのように豊かな生活になるのでしょうか。
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敷地は茨城県の龍ヶ崎市という千葉県との県境に位置する郊外住宅地の中にあります。このあたりの家はどこも肩ほどの高さの塀に囲われていて、この中で生活を充実させようとすればするほど自己完結的になって、隣地へ背をもけるような姿勢が強くなります。
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敷地にある既存の4軒の建物は10年前に元々空き地だったところに建てられた分譲建売住宅で、上の写真で左、上、下、右の順にA邸、B邸、C邸、D邸とします。同時期に建てられて建売住宅であるため、部屋の面積、開口部、仕上げ材、階高、などがパターン化されほとんど同じになっています。また、4つの住宅の間は周囲の住宅とは異なり、100㎜程の高さのブロック塀で緩やかに分けられています。
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まず、実際に住んでいる人に対してインタビューをして、情報の収集、事情の確認をします。そして、これをもとに改修の時期、内容を決定しました。
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そして、改修をし、その改修内容について住民とまた話します。このことを7回繰り返しました。
〇第1期改修
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第1期の改修は2025年とし、余った/足りない子供部屋の使い方について考えました。そして、大きく2つの改修をしました。
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1つ目は使わなくなった子供部屋を隣の家におすそ分けすることを考えました。具体的には、廊下を延長、外壁にドアを新設しそれらをスロープで繋ぎました。最初に訪れたときのインタビューで、ある家では子供が多くて寝室を2人で使っていてよくケンカが起きていると言っていました。逆にその隣の家では部屋が一つ余る言っていました。そして改修後のお話でこのスロープで繋ぐことについて、お互いが向こうがいいよというような反応をしました。設計する人が住民に間に入ることで新しい関係性が生まれると考えました。
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2つ目は余った部屋を単身者用の住戸として貸し出すことについて考えました。この地域の部屋のストックは増え続けているのに新築でアパートが多く建てられている状況に対して何か提案できないかと思い、このようなことを考えました。https://gyazo.com/301b064e7a10e151990c129570d9069b
〇第2期改修
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第2期の改修は2030年とし、A邸に祖父母が引っ越してくるという仮の元行いました。近年、郊外住宅地は高齢化により老人ホームが多く建っています。しかし、その需要に対して従業員の数が足りず入居待ちや介護の質の低下のような問題が顕著になっています。そこで、ここでは一つの核家族用の住戸に複数の世帯が住まうことについて考えました。
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ここでは、リビングの床を抜く、床も素材をグレーチングへと変更する、玄関をT字路のようにする、増築で家の中に断面的、平面的に様々な距離をつくりました。家が2つに分かれるのではなく、2つの世帯が生活の中で時折交わるような距離感を意識しました。
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〇第3期改修
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第3期の改修は2035年とし、住宅の中で商いをすることについて考えました。
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具体的には、サロンを玄関の土間の延長に配置し、サロンと家のアプローチを同じにします。サロンは床を下げ土足で入ることにし、天井を現しにして部屋の中に領域をつくりました。
〇第4期改修
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第4期の改修は2040年とし、ここでも二世帯が共に暮らすことについて考えました。夫婦共働きの世帯が当たり前になり、介護、子育ての面から二つの世帯が共に暮らすことは社会的にフィットしています。このような状況の中、どのように豊かな空間や生活ができるのか考えました。
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ここでは、使わなくなった長女の寝室、和室を減築、スケルトン化して、共用のテラスとします。このテラスには親世帯の階段と廊下、子世帯の浴室とアトリエ、寝室、2世帯のリビングが面し、生活の中で時折顔を出します。親世帯と子世帯の活動が距離を取りつつもにじみ出る空間を目指しました。
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〇第5期改修
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第5期の改修は2045年とし、内壁の増減で祖父母世帯と親世帯から、親世帯と子世帯の二世帯へとリレーさせることについて考えました。
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具体的には、リビングの収納とその上部にある寝室の収納を抜き階段を増築、二階の廊下に壁を設けました。以前そこにあったドアの枠の中に壁を設けることで、壁の中にドアの枠が埋まっているような状態になります。今まで使っていたものが何となく感じられる、そんな現在の中に過去が見え隠れするような状態を目指しました。また、平面の割が変わったため以前の改修も違った解釈ができるようになりました。リビング上部にあるグレーチングは元々はリビングに光を入れるために設けたが、ここでは二世帯を断面的につなぐ役割をするようになります。
〇第6期改修
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第6期の改修は2050年とし、隣の家が空き家になったと仮定し、家での生活がどのように豊かになるのかについて考えました。隣の家が空き家になるという事は空き家に面する庭はよりプライベート性が高くなり、眺める野外ではなく生活を拡張するための野外になるのではないかと考えました。
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A邸では鉄骨のフレームを既存の木の軸組みを頼りに延長し、静かなバルコニーにしました。一階部分は親世帯がリビングに客を招く際の動線、子世帯の裏動線になります。カーテンを設けることで室内を延長するのようにも使えます。B邸ではサッシと額縁を押し広げ、その空間で窓際で行われる行為が外部へと拡張するようにします。内側に居ながら外外と限りなく近い距離で様々なことをするようになります。
〇第7期改修
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第7期の改修は2055年とし、D邸で母と長男が住まなくなったと仮定して、D邸の2階を2つの単身者用の住戸にし、1階を地域に開くことを考えました。https://gyazo.com/4bd443e1e1cea93626094aeae1d8d536
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ここの運営は設計者自身で行うこととします。改修については、道路方向から見る住宅の輪郭をぼかすことから始めました。住宅街のリズムの中で不確定な外壁があることで人が入れる余地をつくります。次に、4軒の中心を中庭にし高さ100㎜の塀を道路に置換します。これが中庭へのアプローチとなるのと同時に2つの家の領域を緩く分けます。中庭が開かれることで各々の住宅と庭、道路の関係性が変化します。
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〇過去と現在
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この改修は5年おきにある部分に対して、中で生活する者の変化に対応するように行なっています。外壁だけ剥がす、ドアの枠は残しその中を埋める、既存の木軸を参照して増築部の軸を決定するなど改修後の姿(現在)に過去がうっすらと見えるようにしました。昔の住宅には増築が多くみられ、当時の職人の技術や材料の大きさの違いで様々な時間のレイヤが重なって家ができていました。ここでは、増築部に鉄骨を多く用いました。既存の面影が残る鉄骨の軸組みが次の増築へと面影を引き継ぐのと同時に、多様な時間軸が混在することを表します。
この4軒の住宅は一見パターン化された商品住宅でありますが、その中では多様な生活が行われ、それぞれの家が愛着を持っています。そこで改修によって過去と現在が断絶してしまったら意識は向かう先を失い、拠り所が無くなります。そのためにも、過去と現在を丁寧に汲み取り繋げました。
〇建築家の新しい職能
この改修群は、複数の世帯と設計者、家の関係性の中で成り立ちます。設計者が住民にヒアリングし、改修しながら生活をアップデートし続けることは建築家がより包括的な役割をすることになります。この改修を繰り返すうちに4軒の関係性が変化し、何か1つの共同体のようになっていくことが予想されます。この4つの家族の将来的なあり方を考え、導いていく存在として建築家が必要になります。また、PHASE7では住宅を地域センターにコンバージョンし、そこの運営を設計者がするという事を考えています。自分が設計した建物を自身で調整し、実装していくことが必要になるのではないでしょうか。
〇部分と全体
まず、建物の部分と全体についてこの改修では毎回部分的な改修を行いました。これはある状態に対し建物全体において時間的な全体性を与え、建物が壊させるまで不変的な従来の建物と異なり、部分に時間的な全体性を生じさせるので容易に可変することができる余地を生み出すことが出来ます。
次に、もう少し広い視野でこの4軒を部分、地域を全体として見てみるとこの4軒が生きている状態になっているという事は地域の一部が生き始めたということになります。部分から徐々に生き始めていくと地域のいろんな家たちが異なった生き方を見せ、やがて地域がより生き生きとしたものになるはずです。
〇所有について
この改修では、土地の割り方が変化しています。例えば、増築部が隣の敷地のはみ出したり、2つの建物を繋ぐような増築をしています。これについて、土地の一部を所有権を住民同士でやり取りすることを考えています。部分所有に関して、住民によっては否定的な考えをもつ方もいました。土地や部屋に愛着があるからこそそれを他人に使って欲しくないとのことでした。なので、この改修から考えたことをもとに新築でどのような提案ができるかについて考えていく必要があると感じました。設計者が数世帯の家族を募り、家と共に変化しながら生きていくことに可能性を感じています。
指導教員:佐藤光彦
講評:ここに入力(改行は不可)(佐藤光彦)
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