佐野充季「オーストラリア・ヴィクトリア州・メルボルン市におけるLiveable cityの形成過程ー調査・計画・取組内容の分析及び空間変化に着目してー」
修士論文/2025年度
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本研究の概要
本研究は、オーストラリア、ビクトリア州、メルボルン市を対象に「Liveable city」(暮らしやすい都市や空間を示す概念)の形成過程を分析した研究である。
研究の背景及び目的
近年、我が国では、働く場(「職」)、住まう場(「住」)、余暇や滞留の場(「遊」)といった都市機能の混合が求められる。実現には、住宅・オフィスと公共空間を一体に捉え、調査・計画・取組を実施する必要があるが、現状では、屋外空間は居心地がよく歩きたくなるまちなかの形成に向けたウォーカブルな空間の展開、住宅・オフィスは手頃な価格帯の住宅供給の検討など、個別に計画が推進され、相互の関係性を意識した配置検討はなされていない。
そこで、本研究では、オーストラリア・ビクトリア州・メルボルン市に着目する。同市は、オフィス集積が顕著であり夜間・休日を中心に閑散としていた業務中心地区、CBD(Central Business District)を公民一体の中長期的な都市再生により、Liveable cityと評される地域へと転換した事例である。そのため、Liveable city実現までの過程及び都市の面的変化を分析することで、国内での屋外空間と住宅・オフィスが連動した配置検討による「職」「住」「遊」の都市機能の混合に向けた調査・計画・取組展開に対する知見を得られると考える。
以上より、本研究の目的は、メルボルンを対象に、調査・計画・取組の内容及び変遷、空間変化の関係性から「Liveable city」の形成過程を明らかにすることである。
研究の方法
本研究では、オーストラリア・ビクトリア州・メルボルン市を対象に、「Liveable city」の形成過程を調査・計画・取組等の行政計画と取組を展開した空間変化の2点から分析を行う。具体的には、行政計画は、州政府及び地方自治体が公開する文書による文献調査及び自治体職員・メルボルンの工科大学の先行研究者を対象としたヒアリング調査から分析を行う。空間変化は、州政府及び地方自治体が公開するオープンデータをもとにQGISを用いて分析を行う。
研究の成果
A.政策(調査・計画・取組の内容及び変遷)
①メルボルンの調査・計画・取組として、過年度の計画を踏襲・更新する階層構造が見られた。また、1990年代まではハード整備、2000年代以降は都市機能の管理・運用に関する内容が重視された。その中でLiveable city形成に向けた調査・計画は住宅供給計画(Postcord 3000)及び公共空間調査(Places for People)から始まった。
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②住宅供給計画(Postcord 3000)では、不動産開発を行う事業者に対し、住宅開発を促進するインセンティブの提供や支援を行い、集合住宅の増加や居住エリアの拡張を推進した。公共空間調査(Places for People)では、CBDの人々のパブリックライフ及びパブリックスペースに関する調査を実施し、Liveable cityの理想像のもと、調査に基づく提案や継続的な効果検証を行った。これらの2つが連動することでLiveable city形成へと至った。
③Liveable city形成後の維持向上に向けては、州政府・自治体がそれぞれ独立して調査・計画・取組を推進するのに加え、大学機関を含めた三者での連携等によりLiveable cityの領域を具体化し、政策策定プロセスや多様な主体が利用するプラットフォームを構築した。
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B.空間変化(1992年〜2012年の20年間で新たに整備された歩道、住戸、屋外空間、屋外カフェの件数及び分布)
①住宅供給を背景に、バイパス整備に合わせたCBD への自動車交通量の抑制や、住宅との近接性を考慮した屋外空間の提供を実施した。
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②屋外空間や歩行者交通量に応じて優先順位を設定しながら、段階的な歩道整備を実施した。
③CBD 外縁部では、既存の大規模な屋外空間や新たに整備された屋外空間を中心として、その周辺に屋外カフェを提供、CBD 中心部では、街区構造である「Hoddle Grid( ホドル・グリッド )」の特性を踏まえ、小規模な屋外空間や高密度な屋外カフェを提供した。そのため、街区の構造的な課題やポテンシャルに応じた滞留の仕組みを構築したと言える。
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我が国への示唆
「職」「住」「遊」の都市機能の混合に向けた調査・計画・取組展開の手法として、①「住宅開発においては、屋外空間との近接性を促進する仕組み(要件やインセンティブ等)を設定」し、②「公共空間調査により、そこで暮らす人々に向けて、余暇や滞留を楽しむ場を提供する際の課題やポテンシャルを把握し、優先順位の設定による段階的な整備により日常生活の受け皿となる仕組みを構築する」ことが重要である。メルボルンにおいては、街区構造や屋外空間の分布状況、歩行者交通量等が余暇や滞留を楽しむ場を提供する際の課題やポテンシャルであり、日常生活の受け皿の基盤として、カフェ文化に着目した。日常生活の受け皿の基盤は住宅及びオフィスの分布や地域固有の文化等を踏まえ、独自に検討することで地域独自のLiveable cityの形成につながると考える。また、③「継続的な調査・評価より、Liveable cityの核となる要素を多様な機関と連携しながら具体化し、空間更新や地域の魅力として対外的に示す」ことも重要である。
【参考文献】
1)国土交通省(2021)「都市の多様性とイノベーションの創出に関する懇談会 中間とりまとめ報告書」
2)Timeout「Yes! Melbourne has held onto its ranking as the fourth most liveable city in the world for
2025
3)City of Melbourne「Postcode 3000: A city transformed?」
4)Gehl Architects「Places for People Melbourne city 1994」
5)Gehl Architects「Places for People 2004—Melbourne, Australia」
6)City of Melbourne「Places for people 2015 – local Liveability Study(part 1)
7)NICHIGO PRESS「メルボルンの街造り/マーベラス・メルボルン」
指導教員:泉山塁威
講評:ここに入力(改行は不可)(泉山塁威)
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