トークンスタートアップの比較優位
まとめ
トークンを活用したスタートアップはトークンを活用できなかった同業のスタートアップと比較して単位あたりの売上
と利益が上がる。
投資家にとっても社員にとっても魅力的になり、企業価値が向上する。
そのメカニズムを解説する。
前提
A社とB社は同じ業種、ステージのスタートアップである。
A社はトークンを活用し、B社はトークンを活用しない。それ以外の違いは無い。
単純化する為に以下の通り共通の仮定を置く。
A社B社の商品は1個10万円(税込11万円)で仕入ることができ、20万円(税込22万円)で売ることができる。
A社は全ての商品を自社で発行したトークンで仕入れ、B社は全ての商品を現金で仕入れる。
A社、B社共に日本の顧客から仕入れ、日本の顧客に対して現金で販売するものとする。
仕入時の仕訳
A社は自社で発行したトークンを現金で11万円で販売し、その現金で商品を仕入れたことと会計上同じ。
※あくまでも会計上の話であり、A社はトークンを法定通貨で販売することはできない
よって仕訳は以下の通りとなる
(借方)仕入高 10万円 + 仮払消費税等 1万円 / (貸方)売上 11万円
B社の仕訳は以下の通りとなる
(借方)仕入高 10万円 + 仮払消費税等 1万円 / (貸方)現金 11万円
販売時の仕訳
A社・B社共に以下の通りとなる
(借方)現金 22万円 / (貸方)売上 20万円 + 未払消費税等 2万円
税金支払時の仕訳
A社・B社共に以下の通りとなる
(借方)租税公課 1万円 /(貸方)現金 1万円
合計
A社 売上31万円 - 仕入10万円 = 粗利21万円
B社 売上20万円 - 仕入10万円 = 粗利10万円
A社の比較優位
10万円のものを20万円で売るのであるから限界粗利率は50%であるはずだが、
トークンを活用したA社の限界利益率は67%に上昇している。
よってA社はB社より効率的な経営が可能となり、投資家にとっても魅力的である。
上場時のバリュエーションもA社のほうが少なくとも2.1倍高くなる。
(実際の税引後利益は5-10倍になると考えられ、10倍以上のバリュエーションになる可能性は十分ある)
課題1 法人税
A社が十分赤字を掘るスタートアップであれば別だが、A社の利益が増えるに従って支払法人税が多くなる。
それに対してA社は下記のようないくつかの選択肢を取りえるだろう。
利益を活かして好条件でデッド調達してアクセルを踏む
優秀な人材を採用して研究開発を積極的に行い、長期的な利益を目指す
仮想通貨交換業者にトークンを上場し、金融庁に届出後、トークンの公開買付を行う
課題2 エクイティ投資家の理解
A社の利益の源泉はトークン保有者による経済圏のネットワーク効果である。
元々のトークン保有者はA社に商品を販売した会社又は個人である。
A社がトークン保有者からの信頼を失うとA社は商品をトークンで仕入れることが難しくなり、A社の業績は悪化する。
A社のエクイティ投資家はIPOやM&Aによるキャピタルゲインを得る為にA社に投資するべきであり、
配当等のインカムゲインを目的にA社に投資すべきではない。
長期的にはA社のトークン保有者からの信頼はA社の株価に反映されるはずである。
よって長期的にトークン保有者とエクイティ投資家と経営陣の利害は一致する。
A社は投資家にそのことを十分説明した上で投資を受けなければならない。
暗号資産古物商
暗号資産古物商はA社に商品を販売することで、トークン保有者となることができる。
一般人は暗号資産古物商に不要な物を売却することでトークン保有者となることができる。
和らしべ
和らしべはA社が商品を仕入れる際のプラットフォームとして使用できる。
また、暗号資産古物商や一般人がA社のトークンを使ってモノを売買することができる。
日本暗号資産市場
日本暗号資産市場は、暗号資産古物商がA社のトークンを使って商品を売買できるようにすることで、
A社のトークンや商品の流動性を高めることができる。