Yui 民法1B 2016後期期末試験(問2)
(2回目)
問2 不動産の登記に公信力が認められないと考えられるのはなぜか。根拠となりうる条文を示して論じなさい。
問2
第1 不動産の登記に公信力が認められないと考えられるのは,民法には動産の占有に公信力を認める条文の規定が置かれているのに対し,不動産の登記に公信力を認めた条文の規定が存在しないからである。以下,詳述する。
1. 物に関する権利を有する者しか物権の譲渡や設定をすることができない(206条)。よって,所有権を有しない者から所有権を得ることはできないのが原則である。
「公信力」とは,虚偽の外観を正当に信頼して取引した者が,本当は存在しない真の権利を得ることができる力のことである。
2. これを,動産についてみると,以下の通りである。
(1)動産の対抗要件
物権の譲渡は,その動産の「引渡し」をしていれば,第三者に「対抗」できる。(178条)
「対抗」できるとは,法的な力のある主張をすることができるということである。よって,動産の「引渡し」があれば,動産の所有権を得たといえる。
(2)動産の占有状態
取引行為によって,平穏に,かつ,公然と動産の占有を始めた者は,善意であり,かつ,過失がないときは,即時にその動産について行使する権利を取得する。(192条)
動産の外観は占有であるから,192条によると占有権を得る。
shioが安部先生からiPadを借りている状態で,安部先生のiPadを学生に譲渡する場合を考える。譲渡契約によって,争いなく,shioと学生間の秘密にせずにiPadを占有し始めた学生は,shioがiPadの所有権者でないという事情を知らず,iPadの所有権者でないことに気づくことが不可能であるならば,iPadの所有権を得る。学生がiPadの所有権を取得すると,その反射として安部先生は所有権を失う。177条は,iPadを占有する者に所有権を認めたといえる。
(3)ゆえに,動産の「占有」には,公信力があるといえる。
3. 上述のように,動産の占有には公信力が認められると条文から読み取れるが,不動産にはこれに対応する条文がない。よって,登記名義を有しているものの権利を有しない者から不動産に関する物権の譲渡を受け,又は物権の設定を受けたとしても,原則どおり,その権利を取得することはできない。
第2 以上より,不動産の登記に公信力は認められない。
以上
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(1回目)
第1 不動産の登記に公信力が認められないと考えられるのは,民法には動産の占有に公信力を認める条文の規定が置かれているのに対し,不動産の登記に公信力を認めた条文の規定が存在しないからである。以下,詳述する。
1. 物に関する権利を有する者しか物権の譲渡や設定をすることができない(Yui.icon民法206条)。よって(例えば?),所有権を有しない者から,所有権を得ることはできないのが原則である。
「公信力」とは,Yui.icon虚偽の外観を正当に信頼して取引した者が,本当は存在しない真の権利を得ることができる力のことである。
2. これを,動産についてみると,Yui.icon以下の通りである。(ここに条文をたくさん入れる)
(1)動産の対抗要件
「物権の譲渡」は,その動産の「引渡し」をしていれば,「第三者」に「対抗」できる。(民法178条)
「対抗」できるとは,法的な力のある主張をすることができるということであり,よって,動産の「引渡し」があれば,動産の所有権を得たといえる。
(2)動産の占有状態
「所有の意思をもって,善意で,平穏に,かつ,公然と占有する」者を「占有者」と推定する。(民法186条1項)←nocchi.iconこれは誤り。「逆,裏,対偶」の話,理解していますか?
「みかんは,オレンジ色の丸い果実である。」nocchi.iconこれは合っているよね?
「オレンジ色の丸い果実は,みかんである。」nocchi.iconでも,これは違うね?キンカンも,オレンジも,「オレンジ色の丸い果実」だよね。だから,「オレンジ色の丸い果実」を「みかん」であると断定することはできないのです。
第186条1項 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
nocchi.iconなので,これを分解してひっくり返した結依ちゃんの186条1項の紹介文は,内容に誤りがあるといえます。わかるかな?
この条文は,物の占有者が,物の所有権を持っていると信じてよいという内容を表している。
例えば,売買契約において,買主たる学生からみて,売主たるshioがiPadを「占有」しているだけで,「shioはiPadの所有権を持っている」と信じてよい,ということである。
/icons/rotate-clockwise.iconnocchi.iconそして,本当にごめんなさい。条文を誤っていました。188条でした。。。。(nocchi.iconすみません。書き直してください。)
第188条 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。
占有していたshioが,学生にiPadを譲渡する権利(処分する権利=所有権)は,適法にshioが有していると推定する。
「推定」とは,反論して覆されない限り,そういうものとして扱うこと。
(3)ゆえに,動産の「占有」状態には,公信力があるといえる。
3. 上述のように,動産の占有には公信力が認められると条文から読み取れるが,不動産にはこれに対応する条文は規定されていない。よって,登記名義を有しているものの権利を有しない者から不動産に関する物権の譲渡を受け,又は物権の設定を受けたとしても,原則どおり,その権利を取得することはできない。(無い物は譲れないからである。)
第2 以上より,不動産の登記に公信力が認められないと考えられる。
以上