長沼論証集
【職務質問の適法性】
警察官は,警職法2条1項により,異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がある者を停止させて質問することができる。この権限は,犯罪捜査の為に認めらたものではなく,犯罪の予防・鎮圧など同項所定の行政目的を遂行する為に必要な処分として認められたものであるから,流動的な警察事情について機敏に対応できるよう被疑者に限らず広くこの処分の対象となると解すべきである。
さらに質問を継続して不審事由を解明すべき合理的な理由が認められる。
【現行犯逮捕の適法性】
現行犯人は,憲法33条,刑訴法212条・213条により,何人も令状なくしてこれを逮捕することができる。このように令状主義の例外が肯定される理由は,現行犯人については犯罪の存在及び犯人の識別に誤認の余地がほとんどなく,かつ,直ちに身柄を保全すべき緊急性があるからである。刑訴法212条の定める現行犯人の要件は,この趣旨から解釈・適用しなければならない。
刑訴法212条1項は,狭義の原稿犯人の要件を定めている。前記の趣旨からその要件の充足は,逮捕者自身がこれを現認した者でなければならない。
刑訴法212条2項は,いわゆる準現行犯人の要件を定めている。これは,同項各号所定の要件の事由があることにより,犯行直後であることが明白な者について,これを現行犯人とみなす規定である。各号所定の事由には種々のものがあり,当該事由が犯人性を基礎付ける程度は,一律ではない。そこで前記の趣旨を踏まえ,各号所定の事由から準現行犯人の要件充足を判断するにあたっては,犯行と逮捕との時間的接着性や場所的近接性を考慮し,犯人性について刑訴法212条1項の現行犯人に匹敵する程度の明白性を要求すべきである。
「誰何」とは,一般に,相手方の身元を確認することを意味するから,現実に誰であるのかを発問することに限られず,適法な職務質問の開始・続行は,これにあたるというべきてある。また,「逃走」も,対象者が疾走するような自体に限られず,正当な理由を示さずにその場を離れようとすることも,逃走しようとするときに該当する。
逮捕者が犯人性を明確に現認したと言えなければ,同項柱書にいう「罪を行い終わってから間がないことが明らか」とはいえないのであり,同項4号の事由は1号から3号までの事由と比較すると犯罪と犯人との結びつきが一段と弱いというべきであるから,いっそう慎重に要件充足を判定しなければならない。
【捜索・差押えの適法性】
憲法35条,刑訴法220条1項2号・3項により,被疑者を逮捕する場合において必要があるときは逮捕の現場で,令状なくして捜索・差押えをすることができる。その趣旨は,適法な逮捕現場には当該被疑事実に関連する証拠が存在する蓋然性が認められ,かつ,当該証拠物を直ちに保全する必要性があるから,無令状によるこれらの処分を認めたものである。
【勾留】
勾留の要件充足性について
被疑者を勾留する要件は,207条1項本文・60条1項により,相当な嫌疑,60条1項各号の事由,及び勾留の必要(87条1項参照)である。
被疑者の勾留については逮捕前置主義が採用されている(207条1項本文)。その趣旨は,まず逮捕という比較的短期間の身柄拘束を先行させ,さらに留置の継続が必要な場合に限り相当期間にわたる身柄拘束である勾留を認めることとするとともに,現行犯逮捕の場合を除き,2度の司法審査を経由させることとして,不必要な人身の自由の制約を回避し,身柄高速の適否を厳格に判断することとしたものである。
このような逮捕前置主義の趣旨からすると,検察官が被疑者の勾留請求をすることができるのは,適法な逮捕が先行している場合を予定している。また,勾留裁判官としても,逮捕に対する不服申立ての手段がないこと(刑訴法429条1項2号参照),違法な逮捕を抑止すべき政策的理由が認められることから,令状審査にあたっては,勾留に先行する身柄拘束の手続についても慎重に審査し,逮捕に瑕疵があるとして勾留請求却下の判断をすべき場合があると解すべきである。最も,逮捕の瑕疵には,その性質・内容,重大性に関して種々のものが想定できることろ,あらゆる違法をとがめて勾留請求を却下することは,前記趣旨からすれば過剰であり,また操作の利益を不当に害する結果を招く。したがって,裁判官は,逮捕に対する不服申立てに相当する手続として違法の重大性を精査し,政策的な観点から勾留の相当性を否定すべきであると判断した場合に限り,勾留請求を却下すべきである。
【同一事実による再逮捕の可否】
逮捕は,人身の自由を制約する重大な強制処分であり,かつ留置には厳格な時間的制約が法定されている(203条から205条まで)。一方で,199条3項は,同一被疑事実について再逮捕がありうることを予定している規定である。したがって,何らの制約なく同一被疑事実により再逮捕をすることはできないが,正当な理由が肯定できる場合には,同一被疑事実による再逮捕も適法になしうるというべきである。とりわけ,違法な逮捕が先行した場合にこれを是正するために同一被疑事実により再逮捕することは,いわば未完の勾留請求手続を適正なものとする目的であると評価することができ,その適法性を肯定すべき場合がある。一方で被疑者としては,捜査官の判断の誤りにより,2度目の強制処分を受けることになるから,それがやむを得ないと認められるような事情がない限り,その不利益を甘受すべきいわれはない。したがって,先行する逮捕手続の違法の重大性,再度の逮捕手続までの間隔や手続,被疑事実の性質・内容,重大性,捜査官の意図などを総合して,そのままでは違法な勾留請求手続を是正するためにやむを得ないといえる場合には,同一被疑事実による再逮捕は適法であると解すべきである。
現行犯逮捕の要件欠如が速やかに判断され,捜査官において被疑者の釈放がなされないることが前提である。その機会は,司法巡査又は検察事務官に夜引致,検察官への送致の各機会において,それぞれ,司法警察員,検察官において手続を精査し,被疑者を釈放する手続として,予定されていると言える。そして,現行犯逮捕手続の瑕疵の是正が早けれ早い穂と,事後の再逮捕の適法性も肯定できるというべきである。
【勾留の可否】
先行する逮捕に重大な瑕疵があるときは,勾留請求を却下すべきである。しか,その瑕疵を是正するために,いわば未完の勾留請求をやり直すことは,政策的に見ても適法な手続きへの誘因となるから,一概にその適法性を否定すべきではない。
再逮捕の場合の逮捕・勾留の時間制限は,再度の逮捕が適法であることを前提とするのだから,再逮捕の時点を基準時として起算すべきである。
【逮捕前置主義の趣旨】
刑訴法207条1項は,「前3条の規定による勾留の請求を受けた裁判官」に勾留状発付の権限を認め,これに以外に被疑者勾留の権限を定める規定は存在しないから,強制処分法定主義により,被疑者を勾留することができるは,204条いかの規定により,逮捕中の被疑者について検察官が勾留請求した場合に限られる。
その趣旨は,まず逮捕という比較的短期間の身柄拘束を先行させ,さらに留置の継続が必要な場合に限り,相当期間にわたる身柄拘束である勾留を認めることとして,不必要な人身の自由の制約をできるだけ回避するとともに,現行犯逮捕の場合を除き,2度の司法審査を経由させることで,身柄高速の適否を慎重に判断することとしたものである。
違法な逮捕が先行する場合の勾留請求
逮捕前置主義の趣旨からすれば,①検察官が勾留請求できるのは,適法な逮捕が先行している場合を予定しているというべきである。また,②被疑者の装置を受けた検察官としては,その公益の代表者たる地位に鑑み,逮捕に瑕疵があるため留置の必要を肯定できないと思料するときは,直ちに被疑者を釈放すべきである。さらに,勾留審査をする裁判官としては,③逮捕に瑕疵があっても不服申立ての手段がないこと(429条1項2号参照),④違法逮捕を抑止すべき政策的理由が認められること,⑤交流の実体要件が充足されていても手続的理由により勾留請求却下がありうること(206条2項参照)から,令状審査にあたっては,勾留の要件のみならず,これに先行する身柄拘束の要件・手続についても慎重に審査し,逮捕に瑕疵が認められるときはには,勾留請求却下の判断をすべき場合があると解すべきである。もっとも逮捕の瑕疵には,その性質・内容,違法の重大性に関して種々のものが想定されるところであり,あらゆる違法をとがめて勾留請求を却下することは,過剰な判断であるから,逮捕に重大な違法がある場合に限り,裁判官は,勾留請求を却下すべきである。すなわち,裁判官は,逮捕に対する不服申立てに相当する手続として違法の重大性を指摘し,政策的な観点から勾留の相当性を否定すべきであると判断した場合に限り,勾留請求を却下すべきである。(違法収集証拠と同じロジック)
【緊急逮捕】
現行犯人は何人も令状なくしてこれを逮捕することができる(212条・213条)。これに対して,緊急逮捕は,一定の罪について,捜査官がまず被疑者を逮捕し,直ちに逮捕状請求するものであり,被疑者の逮捕時に令状がないことは同じであるが,これ以外の逮捕権者,逮捕の要件,逮捕後の令状請求は全て要件・手続を異にしている。とりわけ,直後の逮捕状せいきけをという手続の存在により令状主義(憲法33条)の要請が担保されているものというべきである。
【一罪一勾留の原則】
一罪一勾留の趣旨
一般に,一つの被疑事実については,一つの逮捕・勾留のみが許され,これを分割して複数の逮捕・勾留の根拠とすることはできない。すなわち,逮捕は特的の「罪」(刑訴法199条1項・210条1項・212条)について要件を定め,逮捕状には「被疑事実の要旨」を記載し,さらに「犯罪事実の要旨」を告げる手続が法定されており,勾留についても同様の要件・手続が法定されている(207条1項・60条1項・61条・64条)。そして,刑事手続は,「刑罰法令」の「適用実現」(刑訴法1条)を目的とするものであるから,これらの要件・手続きは,実体刑罰法令の罪数による規律を受ける。
実質てぎに見ても,一罪を分割してふくねうの身柄拘束を許すことは,人身の自由の制約という重大な強制処分の実施としては不当であり,又厳格な時間制限(203条1項・204条1項・205条1項・211条・216条・208条・208条の2)を設けた趣旨を潜脱することとなる。
このことは,広く包括一罪について妥当し,判例によれば,常習として複数の賭博行為がなされたときは,一つの常習賭博罪が成立するとされている。
一罪一勾留の原則は,全く例外を許さないものではない。2つ以上の身柄拘束に正当な理由があり,厳格な時間制限を設けた趣旨を潜脱するものではないと評価できる場合には,その例外を認めるべきである。
裁判例には,常習一罪のようにここの犯罪事実からなく罪については,逮捕・勾留もここの社会的事実たる犯行ごとに身から拘束の要件・手続きを判定して良いから,保釈中に犯された前件と常習一罪の関係にある罪を犯した場合,新たに逮捕・勾留してよいとするものがある。しかし,このような例外を肯定することは妥当でないと考える。なぜならば,これは実体刑罰法規を離れて 刑訴法独自に観念する犯行の個数を是認するものであり,趣旨を潜脱するからである。そこで,実質的に考察すると,法令上一罪と評価されるものについて刑罰けは一つしか存在しナポから,検察官においてこれらを包括して同時に処理すべき方的義務があるというべきであり,当該義務の前提として同時処理の方的可能性がある場合には,前期原則が妥当するものの,およそ同時処理の方的可能性がない場合には,前記で述べた例外を認めるべき正当な理由があると解すべきである。
【一罪一勾留の原則に反する例外を認めるべき判断基準】
検察官において前件と常習一罪の関係にある賭博行為が判明した場合,当該部分が前件と一括処理できる方的可能性があったかないかにより,一罪一勾留の原則に対する例外を認めるべき正当な理由の存否を判断すべきである。そこで,その方的可能性を考察すると,当該別部分の犯行時期により結論が左右されるというべきである。すなわち,当該別部分が先の基礎時点よりも前に侵されたのであれは,検察官には,それを含めて逮捕・勾留の基礎とすることが少なくとも論理的には可能であったというべきであり,前記の基準を満たさない。これに対して,当該別部分が先の起訴後,すなわち保釈人よる身柄解放中に侵されたものであり,それが後に判明したというのであれば,検索間としては,前件と一括処理することが論理的に不可能であり,同時処理の義務を課す前提がかけるということになる。
のちに判明した別の賭博行為の犯行時期と,先になされた常習賭博罪の起訴時点との先後関係の比較により,一罪一勾留の原則に対する例外が認められるかどうかを判断すべきである。
【逮捕に伴う捜索・差押えの趣旨】
220条1項2号・3項により,捜査官は,逮捕する場合において必要があるときは,逮捕の現場で令状なく,捜索・差押えをすることができる。これがあるときは逮捕現場には,被疑事実に関連する証拠物が存在する蓋然性が認められ,かつその場で当該証拠物を保全しておくべき緊急性が高いためである。判例によれば,逮捕する場合とは,逮捕する際のことを言い,逮捕の現場とは,場所的同一性を指すものと解されている。
【電磁的記録媒体の差押え】
判例によれば,捜索差押え許可状によりパソコンその他の電磁的記録媒体を差し押さえる場合において,捜索により発見された記録媒体の中に被疑事実に関連する情報が記録されている蓋然性があり,かつ当該情報についてその場で確認すると,その損壊の危険があるときは,内容を確認せずに当該記録媒体を差し押さえることができるとされている。
その趣旨は,電磁的記録媒体には,直接の可視性・可読性がなく,被疑事実との関連性の有無について確認することが必ずしも容易ではないため,関連女をほをの記録の蓋然性があり,かつその場で確認が不可能または困難な場合には,内容確認をせずに当該電磁的記録媒体を差押えても,その適法性を肯定できるとしたものであると解される。
【携帯電話の操作】
押収物についての必要な処分の趣旨
222条1項・111条2項により,捜査官は押収物について必要な処分をすることができる。そして,そのための別途の令状は必要ではない。その趣旨は,押収ふつの証拠価値を保全するために当該証拠物について私的情報を得ることが許され,そのために必要かつ相当な限度において,当該証拠物にかかる財産権その他の権利・利益の制約が生じることがあっても適法性は失われないことを注意的に規定したものと解すべきである。
携帯電話を差し押さえたとしても,その占有が移転しただけであるから,通信会社と利用契約に基づき当該機器を利用して通信を行うことまでもが捜査官の権限として認められることはない。これと異なり,すでになされた通信の痕跡が当該携帯電話に記録されている場合,その内容を確認することは,占有を確保した証拠物について,その証拠価値を保全するにとどまる行為であるから,それが必要かつ相当な限度で実施されるのであれば,適法性を肯定することができる。
【身分を偽る操作手段の適法性】
義兄を用いた捜査の適法性。いわゆるおとり捜査ではない。197条1項本文にいう,捜査「目的」を達成するため必要な」処分に当たるかどうかにより決すべきである。そして,必要な処分であっても,当該事情のもとで相当な限度を超えることは許されないと解すべきである。
【捜索の範囲】
捜索の範囲を限定する趣旨
憲法35条は,捜索の対象を明示することを要求し,かつ対象ごとに個別の令状によるべき旨を定める。これは,対処を特定・明示することにより,捜査機関による執行をの過誤・逸脱を防ぎ,被処分者に処分の受忍限度を明示し,かつ令状裁判官による厳格・慎重な審査を担保するためである。これを受けて,222条1項・102条は,捜索の対象を個別の場所・物・身体に分けて規定している。同じく私的領域への侵入を許すものであっても,対象の性質により法益制約の内容が異なり,とりわけ人の身体の場合には,人格的利益を考慮する必要があるからである。
【場所について捜索する令状とその場に現在する人の身体】
場所について捜索する令状によって,その場に現在する人の身体について捜索することは,当然には適法性を肯定することができない。対象となる人格的利益が存在し,またれいじょを裁判官の事前審査が及んでいないからである。
もっとも,捜索という強制処分の性質上,その執行を妨害する事象が生じた場合,これを排除し,元々その場所に存在したであろう物件について探索することも許される。その限りで,場所についての令状により,人の身体についても創作の範囲が及ぶと解すべきである。そして,妨害排除が必要な場合として,捜索場所に現在する者が証拠物を隠匿・毀損しようとしたことを現認した時のほか,証拠物の隠匿・毀損を疑うべき合理的な根拠があるときが含まれる。
(捜索場所にある証拠物の隠匿・毀損を疑うべき合理的な根拠がをる時は,捜査官は,創作の執行に対する妨害を排除するため,そのような行為をした者の身体について捜索することができる。当該捜索のために必要かつ相当な限度の処分(222条1項・111条1項)をすることができる。
【現行犯逮捕及び無令状の捜索・差押え】
220条1項2号・3項により,捜査官は,被疑者を逮捕する場合において,必要があるときは,逮捕の現場で,令状なくして,差し押さえをすることができる。その趣旨は,逮捕現場には当該技事実に関連する証拠物が存在する蓋然性が認められ,かつその場で証拠物を保全すべき緊急性があるから,令状裁判官の審査を経由せずに証拠物を差し押さえることを肯定したものである。
前記の趣旨によれば,差押えの対象物はひき事実に関連する証拠物・没収物に限られる。次に「逮捕する場合」及び「逮捕の現場」について,判例は,前者は単なる時点ではなく,逮捕する際のことを言い,逮捕との時間的接着性を要するが,その前後を問わないとし,後者は,場所的同一性をいうものと解している。これは前記1の趣旨のうち,証拠物存在の蓋然性を重視した者であり,当該証拠物の保全の緊急性については二次的なな考慮をしたものと考えられる。当該事案の結論において相当数の反対意見があったことを考慮すると,判例のいう「逮捕する際」とは,逮捕と同一機会と認められ,かつ被疑者又は第三者による証拠物の隠匿・毀損とうの状況が懸念される領域であって,被疑者又は第三者による証拠物の隠匿・毀損等の状況が懸念されるようて場所的範囲に限定されると解すべきである。
無令状創作の適法性
220条1項2号・3項により無令状で捜索が及ぶ範囲は,逮捕と場所的同一性が及ぶ領域,すなわち逮捕場所と,同一の管理・支配に服する領域であって,被疑者まは第三者に夜証拠物の隠匿・毀損等の状況が懸念されるような場所的範囲を指す。
【現行犯逮捕】
適法な捜索により法禁物を発見した場合において,その所持者を特定できるのであれば,同人を現行犯人として無令状で逮捕することができる(212条1項・213条)。
【任意提出を受けての領地】
221条により,捜査官は,所有者,所持者または保管者が任意提出した物を領置することができる。
【捜索差押許可状の記載】
差押対象物を特定する趣旨
憲法35条は,令状主義の内容として「押収する物を明示する令状」を要求し,これを受けて219条1項は,「差し押さえるべき物」を令状の記載事項として法定している。その趣旨は,捜査官による執行の過誤・逸脱を防止し,被処分者に受任範囲を明示して不服申し立ての機会を与え,かつ令状裁判官による厳格・慎重な審査を担保するため,対象物件を個別具体的に記載することを要求したものである。したがって,捜索差押許可状に記載すべき差押対象物は,その内容が前記趣旨をみたすように明示しなければならない。もっとも,捜索・差押えは,一般に操作の初期段階で実施されることがあり,かつ関係人の供述がないと品目の詳細までが判明するとは限らない。したがって,前記趣旨の範囲内で対象物をある程度概括的に記載することも許されると解すべきである。