米中対立の先に待つもの
著者 : 津上俊哉
『TOPPOINT 2022 年 5 月号』 より
アメリカの対中政策は過去 5 年の間に劇的に変化
新型コロナウイルスによるパンデミックの責任が中国にあると言ったり、新疆ウイグル自治区での人権侵害批判など
中国の対米政策もコロナ・パンデミックを境に大きく転換
理由
米中関係の回復が見込めそうにないと見切りをつけた
2020 年を境に、中国の対米感に大きな変化 : 中国の経済発展
時間が経てばアメリカは衰退して中国が勝てる、という楽観
中国における問題 : 格差拡大
2021 年 8 月、習近平主席の 「共同富裕」 発言
貧富の格差拡大を懸念してのことだと考えられる
2021 年のネット上の流行語がそのことを示す
躺平族
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所得格差よりも資産格差が問題
不動産バブル
ゾンビ企業の処理を先送りし続けてきたこと (暗黙の政府保証)
格差是正には課税強化しかない
不動産価格の急落も暗黙の政府保証の廃止も、大きな問題を発生させる
中国のこれまでの経済政策
2000 年代は中国経済成長の黄金時代
2008 年にリーマン・ショック
成長率低下による社会不安定化を恐れて、4 兆元の投資刺激策
それ以降も、成長率が低下するたびに景気刺激のアクセスを踏む習い性に
2009 年以降、特に固定資産投資が増加
中国の不動産バブルは暗黙の政府保証などで崩壊はしないが、それによって富の配分の歪みが発生しているという問題
中国は、左派と右派の間で振り子のように揺れている
左派 : マルクス・レーニン主義、一党独裁、経済面では政府の経済指導を重視、外交面では反米色
右派 : 権力の監督を重視し、西側価値観に理解を示す、経済面では市場の働きを重視し、資本市場による監督を重視、外交面では国際協調
1990 年代の WTO 加盟がよい例
中国の自虐意識は薄れてきた
30 ~ 40 年前は中国は遅れていると考える中国人が多かった
2008 年のリーマン・ショックからの回復で欧米よりも中国が先に戻ったこと
2016 年のブレグジットやドナルド・トランプの大統領当選 → 西側が進めてきた国際化や自由貿易を自ら否定する決定に、西側の政治体制に欠陥を感じる
2020 年の新型コロナウイルス感染症の対応で、アメリカが多くの死者を出したこと
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