夫婦間の家事分担はどのように決まっているのか?
「どういった要因によって夫婦間の分担の差が生まれているのか?」 という問い
具体的には 2 の要因が考えられている
1. 時間 : 「時間に余裕のあるほう (たいていは女性) が家事を多くするだろう」 という説明
2. 経済力 : 「家計に多くの収入をもたらしているほう (たいていは男性) が家事を余計に免除されるだろう」 という説明
日本においてはこの 2 つの要因は家事分担をうまく説明しているか?
→ 結論をいうと、「少しは説明している可能性がある」 程度 (実質的にはあまり影響がない)
筆者が推計した結果によれば、1 日の平均の妻の労働時間が夫のそれと比べて 1 時間長くなると、1 週間あたりの家事の頻度の夫婦差が 0.05 〜 0.08 回ほど縮まる
収入の差については、著者が分析した限りでは影響がなかった
夫がすべて稼いでいる状態から、稼ぎの額が夫婦同じである状態まで妻が稼ぐようになっても、平均的には夫婦間の分担はあまり変わらない
ではなぜ家事が女性に偏るのか?
「夫は外で仕事をしてお金を稼ぎ、妻は家庭のことをする」 という性別分業的な考え方に対して肯定的な態度を持っているかどうかで家事分担が決まるのではないか、という仮説 アメリカの研究
対等に働いても女性が家事を 「手放さない」 ケースに対する説明
女性が 「家庭の責任者」 としてのアイデンティティを維持したいがために、容易には夫の参画を認めない
妻よりも稼ぎの少ない経済力のない男性があえて家事をしないケースに対する説明
「稼ぎ」 によって男らしさ・男性の権威を表現することができない夫が、あえて家事をしないことによって男性役割を維持しようとする
男性は 「稼ぐ」 ことでその代わりに家事を免除されている、と私たちは考えますが、実際には 「稼ぐ」 ことができない男性にとっても (あるいは 「稼ぐ」 ことができないゆえに余計に) 「家事をしない」 ことが男性のアイデンティティになることがある
とはいえこういったイデオロギー仮説でも、家事分担のせいぜい 1 割ぐらいしか説明できない
参考文献