パフォーマティビティ
オースティンという言語学者が生み出した言葉の意味をジャック・デリダが批判的に書き換え、デリダの影響を受けたバトラーがジェンダーにあてはめた バトラーの論証のプロセスには、いくつかの重大な批判が提起されている
言語学におけるパフォーマティビティ
辞書的な意味の伝達 (コンスタティブ、事実確認的) ではなく、それ自体が行為でもあるような言語使用のスタイルをオースティンはパフォーマティブ (行為遂行的) と呼ぶ 「〇〇を約束します」 というのは、それ自体が約束するという行為
コンスタティブとパフォーマティブを厳密に区別することはできない
ジャック・デリダの批判
コンスタティブという表現で想定される辞書的な意味というものに疑問
語や句が使用される文脈は常に異なる
つまり、語や句は異なる文脈に流用できること、つまり、辞書的な意味が綻びることで成立可能
言語の根本的な特徴は、辞書的な意味を超える、パフォーマティブな側面にこそある
バトラーによるジェンダーへのあてはめ
言語のコンスタティブな意味とされるものは、パフォーマティブに産出される言語使用の最大公約数的特徴にすぎない、と考える
この意味は、言語使用の前から存在しているように見えてしまう
「男らしさ」 や 「女らしさ」 も、予め決まっていたように見えるものに過ぎない
1980 年代を通じて整理されてきたセックスとジェンダーの二分法に異議を唱え、フェミニズムの営みを大きく前進させた 身体の性差の変えようのなさは、身体や性に関する我々の言語使用の最大公約数的特徴なのであり、辞書的な意味を超える言語のパフォーマティブな特徴ゆえに、変えようのなさもズレたり綻びうる、と考える
身体の変えようのなさは、実際には反復の中で生まれる最大公約数的特徴にすぎない
身体の性別に応じた男らしさや女らしさがあるのは当然、という、変えようのなさに依存した乱暴な議論を退けられる
不変の生物学的性別という発想への批判に、哲学的根拠を与える役割を果たした 参考文献