Slack ゆとりの法則 - 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解
#技術書 #仕事 #組織
Tom DeMarco 著
https://www.amazon.co.jp/dp/4822281116
2024-05-31
https://scrapbox.io/files/663f56088d8aa6001c47cf5d.png
とても良い本だった、プロジェクト管理的なテーマを扱った本に分類されると思う
Slack とは、ゆとりのことを意味している
変化するために、ゆとりが必要だということをいろんな側面から述べていると思う
時間のゆとり、組織のゆとり、リスク管理・・
あらゆる変化の源になるものは、ゆとり
ゆとりの時間帯に再生は起きる
ゆとりとは、会社の業務に追われて余裕のない時間以外の時間、まったく忙しくない時間のこと
ゆとりをうまく組み込むことによる効用
柔軟性。組織を継続的に改変していく余地がある
人材を維持しやすくなる
投資する余地が増える
ゆとりは無駄と考えず投資と考える
急がせる組織には常にプレッシャーがかかっている
人間は時間的なプレッシャーをいくらかけられても、速くは考えられない by リスターの法則
プレッシャーをかけすぎると、長期的な影響として、重要な人材が士気を失い、燃え尽き、流出する
不可能なスケジュールはプロジェクトにダメージを与える
管理者が自分で仕事をやり始めるのは、管理の挑戦から逃避してよく知っている仕事に戻っている状態
管理が難しいのは、習得が難しい技能を必要とするから
それらの技能を習得すれば、組織に影響を与えられるはず
スター社員は、作業手順は他の仲間と大して違わないが、人とのつながりのネットワーク、仕事を完成するために協力を求める必要のある仲間との連携網の管理のしかたが大きく違っていた
スターはすぐ仲間から答えを得られる
周囲に好意を示し、素早く対応し、人間関係を大事にし、他の人が心から求める事柄に気を配っていた
スターは他の人より繋がりが豊かだった
「権限委譲」は、プロセスの所有権を広くその仕事をしている人々の手に行き渡らせること
権限を譲り受けた人は「大変だ、もし失敗したらボスは私を信頼したために馬鹿にされることになる」
上層部から押し付けられるプロセス標準化は、権限搾取である
失敗から身を守る重い鎧
動きが取りづらくなるという副作用
最高のソフトウェアを考えた時に、その理由として9つ考えたが、欠陥がないことと関係しているものは1つだけだった
製品の品質は、欠陥の有無とはほとんど関係がない
本当の品質は欠陥とほとんど関係ないが、品質向上プログラムは全て欠陥と関係している
「効果」と「効率」は全く別のもの
「効率的」無駄を最小限に抑えて何かをすること
「効果的」適切なことをすること
効果的だが効率的でない組織→ 着実に本当の目標に向かって進む
効率的だが効果的でない組織→ 誤った方向に進む
組織が最適化するほど、効果的であるために必要なゆとりが失われる可能性が高い
「変化できない人は成長もできない」は目新しいことではない
変化できないことを認めておきながら、成長を期待している組織によく出会い、驚く
人々は参加したい、一員になりたいと思っている、組織が成り行きに流されている時に、突然舵を取る人が現れたら安堵感があるはず
リーダーシップとは、自分の課題にほかの人たちを参加させる能力
リーダーシップの要素
1. 方向性を明示する
2. 短期的には痛みが伴うことを率直に認める
3. フォローアップする x 3
1だけの場合、それはリーダーシップではなくポーズにすぎない
本物のリーダーシップとは、権力の届かない範囲にいる人たちを参加させること
企業の変化に対し、「言葉」で皮肉・嫌味・グサリとくる批判、目の前で嘲笑いなどは変化にとっての本当の敵である
変化のためにあえて苦労を受け入れようとすれば尊敬されるとわかるようにする
変化の最中はどんな失敗でも教訓を伝えるものとして尊重されるべき
失敗した人はヒーロー、変化の立役者
信頼を得る方法
まだ得られる理由のない信頼を得ること
信頼を集めるために、個人としての魅力が必要
「信頼を与えることによって信頼を得る」
リーダーは、リーダーシップに欠かせない要素である才能を元に、誰を、いつ、どれだけ信頼すべきか判断する
変化に適した時期がある
変化を導入するのに適した時期は権限に成長している期間である
中間管理職の任務である「再生」は、日常業務の指揮に忙殺されていない時間に遂行される
ゆとりの時間
さらに、協力し合う必要がある
チームが重要なわけ
メンバー全員が同じ方向へ進めること
学習環境、共同学習者がいる
管理能力は、チームでなく、何もない学習環境で学ばなければいけないことが多い
指導者も教材も共同学習者もいない
孤立した状態で管理を学ばなければいけない
新人管理者は、チーム環境で技能を学習できない
変化と学習は、組織図の中間の「空白地帯」で起きる
中間管理職どうしの間にある空白地帯が、再生の起きる場所である
知的組織には「健全な」競争などというものは存在しない
内部に競争が起きると、攻撃側にも問題はあるが、防御は有害
同僚の管理者どうしが防御しあう(相手が勝つのを妨げようとする)ことは非協調的な行動をとること、害悪
ピアノの練習、ゆっくり練習する
訓練=新しい仕事を、ベテランより遥かにゆっくりやることによって練習すること
「遅い」という特徴を欠いている訓練では、学習できない
新人管理者にプロジェクトを担当させ、ベテランと同じ条件でやらせる
期間を長くしたり、参加人数を少なくするなどすれば経験による学習を吸収しやすかったであろう
学習する組織にするには
組織から内部の競争を排除、管理者どうしで協力できるようにする
新しい技能をベテランより遥かに遅い速度で練習する機会を与え、訓練の練習段階にたっぷり時間をかける
リスク管理とは、失敗計画に関する規律である
全体的な成功を目指す過程で、多数の小さな失敗に明確に備えている
保険業界のリスク管理の考え方
リスク管理を簡単に定義すると、不確定性を明示すること
いくら不可能に思えても、大胆な仕事に挑むにはやると約束しなければ、という「できる」型思考
「できる」型思考は、リスク管理とは正反対のもの
リスク管理は、できない可能性を率直に認める必要がある
企業には、「できる」型管理者と、「できない」型管理者が混在することが可能
後者は、失敗に結びつくことが予想されるあらゆる可能性を警告してくれれば大成功、警告されなかったことが発生したら失敗
リスクには「全体リスク」「部分リスク」がある
全体リスクが実現すると、事業全体が無効になる
リスク管理の肝心な仕事は、「部分」リスクを管理すること
リスク管理の実際
リスクをリストアップして数える
新しいリスクを発見するプロセスを継続する
各リスクが与えると予想される影響と、その確率を数量化
リスクが現れ始めたことをなるべき早く知らせる変化の指標を設定
万一、リスクが現実になり始めた場合の対応計画を事前に建てておく
リスク管理は動的でなければならない
リスク貯金
プロジェクト全体の貯金
実現したリスクのコストを十分にカバーすることを、半部以上の確率で補償できるだけの時間と資金を貯金しておく
少しでも早く安くと求める人がリスク貯金を削らないようにする
「安全速度」で目的地に到達するまでの時間と、「危険速度」で到達するまでの時間の差がゆとり
ゆとりは、すばやく、しかも破綻せずに到着するためのもの
いま採用すべき新しい計画は、リスクの大きなものだけ