エンゲージメント
学生エンゲージメントは、その用語の持つ性質から広い概念として理解する必要がある。たとえば、所属意識や参加、動機づけ、自己効力感、学校接続といった領域を統合する「メタ構成体(meta-construct)」(Fredricks, Blumenfeld, and Paris 2004)、アカデミックな環境下での情緒的なつながりや学生の積極的な行動を理解するための「多次元構成体( multidimensional construct )」( Appleton, Christenson, and Furlong2008)、あるいは大学生の学習や発達に影響を与える大学での経験についての一連の研究や概念を総称した用語(umbrella term)(McCormick, Kinzie, and Gonyea 2013)といった形で表現されることもある。その上で、学生エンゲージメントの定義として以下のようなものがある。
・OECD によるPISA では、「生徒の学校への関わり」と表現し、広い意味での生徒の学校教育に対する態度や学校生活への参加の意味で用いられている(相原 2015)
・ 「学生の学びへの取り組みや関与」という意味で、学修時間に加え、学びへの関心・意欲・態度、学びへの取り組み方などの質的なものを含み、大学が学生を学びに参画させる働きかけとも関わる、総体的な用語(小方 2016)
・ 学生の経験を最適化し、学生の学習成果や成長・発達、大学のパフォーマンスや評判を向上させるために、学生と大学の双方が投資した時間、努力およびその他の関連資源との相互作用(Trowler 2010)
これらの定義を踏まえ、学生エンゲージメントとは、大学生の学習と発達を促すために、彼らの置かれている状況や文脈も考慮しつつ、大学が提供する制度や環境、教職員が日常的に行う教育・指導等における深い関与、学生が自らの意志で選択し、学びに対して主体的に関与するというプロセスや一連の経験、そして大学、教職員、学生それぞれが払う関与の質と量の相互作用やダイナミクスを捉える概念として定義する。
(引用)山田剛史, 大学教育の質的転換と学生エンゲージメント, 名古屋高等教育研究, 第18号, 2018.