評価と評価関数に関する考察
「計測と制御」の1979年18巻7号に「評価と評価関数に関する考察」という論文を見つけた。ほぼ自分の生まれた頃だ。
「計測と制御」の1979年18巻7号そのものが、「評価関数」という小特集で、さまざまな分野でどのような評価や評価関数が論じられているか多くの事例が報告されていて、ざっとだけ見たけど面白かった。
もちろん40年以上前なので、その後の発展があるはずだけども、さっきの記事にも『ところで評価関数のたてやすい対象とそうでないものがある。一般に目的自体が明瞭でない社会経済系に対してはたてにくく、物理工学的な系はたてやすい。』とあるように、難しさと戦い続けている分野は多いだろうなとも。
この号の最初の解説記事「評価の基礎論」では価値の問題から述べられていて、とても興味深い。
価値の問題は人間にとって永遠に未解決であり、評価法の体系化も困難である。評価を論じること自体がひとつの評価行動であり、本文もその意味では多属性の一面だけをのぞいたものにすぎない。
以下、「評価と評価関数に関する考察」からとくに目を引いた箇所を引用 一般に評価の手続きは、評価対象の分析→評価項目の選定→評価関数の同定→評価関数値の測定と意思決定 の順に行われる。数学的に考えると、対象→属性の空間→評価の空間→評価関数の空間→最終的スカラー評価関数の空間への写像と考えることができよう。
とにかく、何のために(評価目的)だれが(評価主体)何を(評価項目、指標、関数)どのようにして(評価方法)測り、何をするか(意思決定)の構図のうえで考えることである。
実際の場における評価の実施に際しては多くの難しい問題が存在する。“評価と評価関数”といった場合、おおよそつぎのような観点に大別できる。
1. 評価項目や評価関数(あるいは評価指標)の類型
2. 評価関数と意思決定との関係
3. 評価方法
1.について
ところで評価関数のたてやすい対象とそうでないものがある。一般に目的自体が明瞭でない社会経済系に対してはたてにくく、物理工学的な系はたてやすい。
新しいトピックスに付随して必ず評価の問題がおきる。
評価関数の形について論じられるべき点は多いが、環境変動に伴い時間的に変化する評価関数の適応化や評価関数の単位ならびに尺度の問題なども興味あるテーマであろう。
2.について
評価に関する別の重要な観点は、評価関数の多次元性ならびに決定問題(究極的には最適化問題)の構造との関係である。
いずれにしろ複数の評価基準、多数の実行目的あるいは2人以上の決定者が存在するような場合には、多次元評価関数を考えねばならないことになる。それらは、最終評価のための複数の部分評価に起因するもの、人為的に与える複数の目的に依存するもの、複数決定者の価値観の相違や相互的因果関係で結ばれる対立関係によって派生するものなどがある。
さて、意思決定のためには、複数の(部分)評価関数から最終的な目的関数あるいは評価関数を作ることが必要である。これは最終評価あるいは総合評価などと軽い気持でいわれているが、理論的には未解決のことが多い点である。多次元評価関数から合理的な選好関数を構成する問題は効用理論の分野で論じられているが、Arrowの一般可能定理が示すように決定的な困難を含んでいる。複数の(部分)評価関数から最終評価関数を構成することはたいへん難しい問題である。
いずれにしろ、最終目的が存在するとき、特定の最適解を求めるためには、最終評価関数あるいは決定者の選好関数を導入する必要がある。このような問題は多次元評価最適化といわれ、いろいろな解法が研究されている。
3.について
意思決定のための評価値のフィードバックの問題や評価のあいまいさの問題、心理学的問題など将来の研究課題はつきない。
(参考文献)
志水 清孝
計測と制御, 1979年18巻7号「小特集 評価関数」, p.615-616