非計量MDS
Kruskal, J. B. (1964). Nonmetric multidimensional scaling: a numerical method. Psychometrika, 29(2), 115–129.
o1 Pro.iconこの論文は、Kruskal(1964)が提案した非計量多次元尺度法(Nonmetric MDS)を数値的に実行するための手続きとアルゴリズムを詳細に説明したものである。主なポイントは以下の通り。
目的:与えられた対象間の非計量的類似度(順序情報)から、距離の単調変換を前提として、低次元空間内に点を配置し、その適合度を「ストレス」と呼ばれる指標で評価する。
基本手順:
対象間の類似度を順位付けし、それを満たすような点間距離を近似的に求める(「単調回帰」手続き)。
ストレスを最小化するため、反復的な勾配降下法(steepest descent)を用いて配置を更新する。
計算上の工夫:
部分的な欠損データへの対処:欠測値がある場合、観測可能な部分のみでストレスを定義。
Minkowski距離など一般的な距離関数に対応可能。
ローカルミニマム問題への対策として、異なる初期配置からの反復や、妥当な停止基準(勾配の大きさやストレス水準)を設定。
単調回帰手続き:
類似度の順位を保ちつつ、最適な距離のフィットを行うために、ブロック結合アルゴリズムを用いて距離値を調整する。
本稿は、実装上の詳細(配列構造、正規化手順、ステップサイズ制御、反復停止条件など)まで具体的に示し、当時としては新規性の高い計算手法を体系的にまとめることで、後続研究者が容易に非計量MDSを適用・改良できる基礎を与えた。