耐戦略性の定義
基礎概念
個人の集合$ I = \{1, 2, \ldots, n \}
多くの場合、実行可能な資源配分の集合
選好:$ \succsim
選好はもっぱら個人iの選好$ \succsim_iの形で使われるが定義に際してはiは関係ないので添字を省いた
3つの条件を満たすX上の二項関係
反射性$ \forall x \in X, x \succsim x 推移性$ \forall x, y, z \in X, x \succsim y \wedge y \succsim z \Rightarrow x \succsim z 完備性 $ \forall x, y \in X, x \succsim y \vee y \succsim x 要するに選好とは全順序から反対称律(xがy以上でyがx以上ならx=yである)がなくなったもの 選好の対象部分
$ \forall x,y \in X, x \sim y \Leftrightarrow x \succsim y \wedge y \succsim x
選好の非対称部分
$ \forall x,y \in X, x \succ y \Leftrightarrow x \succsim y \wedge y \not\succsim x
選考の非対称性
$ \forall x,y \in X, x \sim y \Leftrightarrow x = y
相異なる2要素が同程度に好まれることはない
こういう選好を「強選好」と呼ぶ(線形選好と呼ぶ人もいるがこの本では誤解を避けて使わない)
X上の選好すべての集合$ \mathscr{R}
個人iが取りうる選好$ \mathscr{D}_i \subseteq \mathscr{R} を選好集合と呼ぶ
個人によって異なりうる定式化になってるが、具体的な問題によってはもちろん同一にもなりうる。例えば3人の候補者から1人選ぶ投票を考える時は各個人の取りうる選好は当然同一である
個人iの選好: $ \succsim_i \in \mathscr{D}_i
二項関係が「二項関係の集合」の要素なだけだが、脳内でパースエラーを起こしそうだ
$ X上の二項関係Rは、そもそも順序対$ X^2の部分集合に過ぎない: $ x R y \Leftrightarrow (x, y) \in R
ドメイン: $ \mathscr{D}_I \equiv \mathscr{D}_1 \times \mathscr{D}_2 \times \cdots \times \mathscr{D}_n
選好組: $ \succsim \equiv (\succsim_1, \succsim_2, \ldots, \succsim_n) \in \mathscr{D}_I
社会的選択対応とは非空対応 $ F: \mathscr{D}_I \twoheadrightarrow Xのこと
ドメインから帰結への対応
「対応」$ \twoheadrightarrowとは?
$ F: X \twoheadrightarrow Yのとき$ \forall x \in X, F(x) \subset Y
関数と比較してみよう
$ f: X \rightarrow Yのとき$ \forall x \in X, f(x) \in Y
$ F, G : X \twoheadrightarrow Y が$ F \subseteq G \Leftrightarrow [F(x) \subseteq G(x) \forall x \in X] のときFはGの「部分対応」と呼ぶ
$ F : X \twoheadrightarrow Y, f: X \rightarrow Y が$ f \in F \Leftrightarrow [f(x) \in F(x) \forall x \in X] のときfはFの「セレクション」と呼ぶ
非空とは対応の終域が空でないということ
空だと「どの帰結もダメだ!」となるから都合が悪い、たぶん。
社会的選択対応Fが常に一つの帰結を与える時、Fを社会的選択関数と呼び、fで表す。 「社会的選択対応Fが常に一つの帰結を与える」とは$ \forall \succsim \in \mathscr{D}_I, |F(\succsim)| = 1
$ \forall i\in I, \succsim \in \mathscr{D}_I, \succsim_i' \in \mathscr{D}_i, f(\succsim) \succsim_i f(\succsim_i', \succsim_{-i})
つまりどのような選好組($ \succsim)においても、以下が成り立つ
誰か一人iの選好$ \succsim_iを別の選好$ \succsim_i'に置き換えても、その結果得られる帰結$ f(\succsim_i', \succsim_{-i})は置き換えなかった場合に得られる帰結$ f(\succsim)よりiに好まれることはない
どの個人iにとっても、嘘をついて自分の本当の選好$ \succsim_i以外の選好$ \succsim_i'を申告しても、自分にとってより好ましい帰結が得られることがない。
だからみんな嘘をつかずに申告するよね、ということ