給付金業務
給付の手間を地方自治体に押し付けるな、システムを作っとけよ、という主張
様々な党から国民に給付金を支給する案が浮上しています。物価高騰対策をしたいのは理解しますが、どうか、やり方を考えていただきたいです。
5年前の一律10万円の給付金、覚えていらっしゃいますか。申請は、市区町村にしたはずです。
この給付金業務は、国が決めたことでしたが、作業はすべて市区町村の職員が行いました。ただでさえコロナ禍でてんやわんやの中で、作業に当たった全国の職員の皆さまに、改めて敬意を表します。
そのとき、市区町村の職員はみんな思ったはずです。なんで国がやらないんだろう、と。
■給付金事業は「市区町村が自らやりたいと名乗り出た」ことになっています
本来なら国がやらねばならない事務でも、地方に任せているものはあります。例えば、国政選挙や生活保護、戸籍に関する事務は、本来国の仕事ですが、地方自治体が担っています。これが「法定受託事務」です。地方が担うことは、法令で決まっています。
でも、給付金事業はその「法定受託事務」ではありません。つまり、あくまで地方自治体が、「自治事務」として自らやりたいと名乗り出て、国が財源を負担する形になっています。
これって何か、おかしくありませんか。
うちの市だけ給付しません、は事実上困難です。
しかも、支給開始日は市区町村ごとに設定する運用です。どこの市区町村が早く給付したかを競わせるような報道もあり、職員の精神的な負担が増していることも忘れてはなりません。
■緊急時、市区町村の職員にしかできない仕事は他にある
財源を国が負担するから良いじゃないか、という声もあるかもしれません。
でも、結局業務を担うのは市区町村の職員なんです。いくら追加で人を雇っても、チームを率いるのは正規職員です。2020年も、多くの職員が元の業務を返上して携わったと聞いています。
給付金が支給されるのは平時ではありません。緊急時です。そんなときこそ、市役所の職員にしかできない仕事があるはずです。
目の前の市民一人ひとりに寄り添い、支えることは、市民の暮らしに最も身近な存在である市役所の職員にしかできません。
一律の金額の申請を受け付け、振り込む仕事は、国の方でやっていただきたいです。
もちろん、国家公務員が手作業でやればいいとも思いません。コロナ禍から5年が経ちました。この間に自動で給付するシステムが整備できていないことが全てだと思います。
マイナンバーに公金受取口座を紐づける制度は進んでいますが、全員が紐づけているわけではありません。あくまで全員給付にこだわるのなら、むしろ手間が増えます。二重支払いのおそれがあるからです。
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地方自治体は、国の下請けではないはずです。
そろそろ、国でやるべきことと、地方でやるべきこと。地方の現状を理解した上で、整理しなければならないのではないでしょうか。これからも、市長という立場でできる発信を続けます。
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7万円の給付金の支給にマイナンバー紐づけの公金受取口座を活用すれば効率的だ、というご意見が多数。 まあ、ふつうに考えればそう思いますよね。私も昨年から活用できないのか、と言い続けてきました。
しかし一般にイメージされるような、給付金が国から公金受取口座にポンっと入金されるほど単純な流れではありません。
まず自治体では、給付金と支給にかかる事務経費を予算化して議会にはかります。(ここを首長の専決処分ですっ飛ばす自治体もありますが、それは首長の考えや議会との関係性にもよる)もちろん、財源は国費です。
市議会を開いて可決されたら支給事務に取りかかれますが、給付金を支給することは市民との「贈与契約」になるので、その契約が成立するためにも通知書を送付しなければいけません。
そして、送付するためには、正確に対象者を特定しなければいけません。たとえば、〜年〜月〜日時点で、住民税非課税の、支給対象者を1人ももらさず正確に特定する作業です。
対象者が特定されれば、支給を通知し、かつ振込口座の確認となる確認書を郵送します。デジタルでやりたいところですが、全ての対象者へきちんとデジタルで届ける手段がないので紙用紙です。
そのなかに、受給拒否もしくは受取口座の変更を申請する返書も同封して、必要ならば郵送頂きます。
口座情報に問題がなく、受取るという意志があれば何もしなくて結構です。このプッシュ式を昨年から採用しました。それまでは受取の意志も、わざわざ返書をもって確認していましたが、受給拒否の意志表示がなければ受取意志ありとみなし、支給しています。
給付金の支給は、コロナ禍で繰り返されていたので、直近1年以内の支給実績のある口座を自治体で把握していることがほとんどです。
なので、公金受取口座よりも、支給実績のある口座情報を確認し、支給させていただいています。
支給実績のない方の口座について、今後、マイナ紐づけの公金受取口座を活用するかどうかについては検討が必要ですが、以前は審査支払業務を委託した業者のシステムとの情報連携の検証作業が必要となっていました。
そして、ようやく指定金融機関からの給付金の振込作業です。今後はこうした公金振込についても、金融機関へ支払う手数料が生じてくる可能性が議論されています。振込作業も間違いが生じないよう、慎重を期します。
さらに今までは家計急変世帯といって、上記の「〜年〜月〜日時点で、住民税非課税」といった時点要件にあてはまらない、その時点以後に家計が悪化してしまった方々も申請して頂くことで把握し、支給対象とするような作業も生じていたので、そちらの事務もかなり生じていました。数が多いと職員ではまかないきれないので、民間事業所へ委託することになります。
さらにさらに、市民の皆さんからの問い合わせも多いです。私は対象者じゃないのか、いつ振り込まれるのか、こんな事業無駄じゃないのか(国の施策なのですが…)、などなど。
そうした問い合わせにも通常の職員では対応しきれないため、別途コールセンターを設置します。それにも経費がかかります。
以上、ざっくりとした説明です。
私が現場で従事しているわけではないので、細かい点は不正確なところがあるかもしれませんし、言及が足りない部分があるかもしれません。
マイナンバー紐づけの公金受取口座でさくっと入金されてOK、という単純な作業ではないことが少しはイメージされましたでしょうか…
なので、こうした非効率な事務が生じない対策であればいいのになあ、、、と個人的には思います。
面白い意見
9xvBzCwKbsTwfie もういっそ参議院の投票所で2万円配ってついでに国勢調査もやってしまおう。投票率上がるしお金配りの事務コスト下がるしお金すぐ貰えるし調査の手間暇減るし国・地方・国民みんな喜ぶ三方全面得っ。 やるっきゃないっす。