知財技能士1級28回Q8
知的財産管理技能士1級特許専門業務 第28回 問8
前提知識
抵当権: 特許は動産なので(不動産と異なり)抵当権の設定ができない
不動産や一定の動産・財団のみをその目的とし、一般財産をその目的とすることはできない。
民法369条1項
質権: 質権の設定をする場合、占有権を質権者に移す必要がある。特許に質権を設定した場合、担保設定者が特許を使い続けることができない。
抵当権と同じく約定担保物権で、目的も抵当権と共通するが、占有の移転が要件となる点で抵当権と異なる。
民法342
特許権は占有可能な動産であるので質権の目的となる
特許原簿への登録が効力発生要件(特許法98)
譲渡担保
譲渡担保を用いれば、所有権を担保権者に移転しつつ、担保権者が担保設定者に担保の目的物を賃貸するという形で、動産においても抵当権類似の担保を設定することができる。
例
工場で用いる機材を担保に入れて金を借りる
譲渡担保がどの条文にもとづくものなのかに関しては難しい議論がある。(所有権を移転させ、貸借させている、とか)
いろんな対象物に対して広く使われている
譲渡担保の設定は譲渡担保設定契約(債権者に目的物の所有権を移転させ、債務者は目的物を賃借することを内容とする)による。譲渡担保の目的物は、工具や機械などの動産、土地・建物といった不動産、手形・小切手などの有価証券、特許権・ゴルフ会員権・電話加入権など様々である。
問題文を確認
ア: 特許出願をしても譲渡担保の目的とすることができない→特許出願は譲渡性があるので譲渡担保にすることもできそう→×
イ: 特許出願が抵当権の目的とできる→×
ウ: 特許権を取得すれば質権の目的とできる→特許権は占有できる動産なので質権の対象となる
エ: 出願公開がされていなければ仮通常実施権の許諾ができない→正解は×
出願公開されてなくても出願を相手に見せてネゴシエーションするなどによって仮通常実施権の許諾に到るのはあり得る
出願公開が必要なのは補償金請求権である
補償金請求権は、出願人が出願公開後、特許権の設定登録前に業として出願に係る発明を実施した者に対して、警告することを条件として、警告後から特許権設定登録迄の実施料相当額を請求し得る権利(特許法65)
というわけで正解はウ