知識創造の三つの特徴
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第一に、表現しがたいものを表現するために、比喩や象徴が多用される。
第二に、知識を広めるためには、個人の知が他人にも共有されなけ ればならない。
第三に、新しい知識は曖味さと冗長性のただなかで生まれる。
メタファーによって、人びとは既知のものを新しく組み合わせ、わかってはいても言葉 にしにくいものを表現しはじめる。したがって、知識創造の初期段階でのメタファーの使用は、創造 プ ロセスヘのコミットメントを引き出すのに効果的である。...
アナロジーはメタファーと比べると、二つのアイデアあるいはモノの特徴を明らかにする方法とし ては、やや論理的である。それは、二つの事物のどこが似ていてどこが違うかをはっきりさせるので ある。その意味で、アナロジーは純粋な想像と論理的な思考を媒介するものなのである。
個人知から組織知ヘ
新しい知識はいつも個人から始まり、...
ホンダのトップが与えた使命の曖味さは、開発 チーム内に混乱を引き起こした。逆説的に聞こえるかもしれないが、この混乱が実は、まったく新しいクルマを目指すというきわめてはっきりした方向感覚をもたらしたのである。曖味さは、ときに新しい方向感覚の源泉として有意義であるばかりでなく、物事に新たな意味を見いだしたり、新しく考え直すきっかけともなる。この意味で、新しい知識はカオスから生まれてくるのである。
トップダウンで明確な指示を下すと、模索の余地がなくなる
冗長性を持つ組織を作ることは、知識創造プロセスのマネジメントにとって非常に重要である。 なぜならそれは、頻繁な対話とコミュニケーションを促進するからである。冗長性は、社員のあいだ に 「認識上の共通基盤」を創り、暗黙知の移転を助けるのである。組織成員は情報を重複共有してこそ、お互いが四苦八苦しながら表現しようとしていることをわかり合える。この情報共有という冗長性によって、新しい形式知が組織全体に広まり、 一人ひとりのものになるのである。