生産可能性フロンティアの凸の方向
nishio.icon生産可能性フロンティアは原点から離れる方向に凸に描かれることが多いが、それは必要条件ではないのでは?
o1 Pro.icon一般的に教科書などでは「機会費用の増大」を反映するため、原点に対して外側にふくらむ(いわゆる“外に凸”)形で描かれがちです。しかしこれは「PPF=必ず外に凸」という意味ではなく、実際には生産技術や規模の経済などの状況によって、直線や内向き(逆に“内に凸”)の形になる可能性もあります。
要するに、PPFの形は「資源配分を変化させたときの機会費用の変化」の反映であって、外に凸であるかどうかは必ずしも固定的な要件ではありません。
nishio.icon凸でない場合に予算制約線との関係で記述される最適解は端にくるが、時間経過でPPFが凸に変わる時には、中央あたりにジャンプをするのでは?
o1 Pro.iconはい、あり得ます。
非凸PPFとコーナー解: 非凸(いわゆる内向きに凹むなど)の場合、価格比率(予算制約線の傾き)に合う接点が“端点”しかなく、最適解がコーナーソリューション(極端な一方の財のみ生産)になることが多いです。
形状変化に伴うジャンプ: 時間経過や技術革新などでPPFが凸(外にふくらむ形)に変わると、予算制約線と接する内点(両財をバランスよく生産する点)が最適解になる可能性が出てきます。その結果、解が「端」から「中央付近」へ急に飛ぶ、いわゆるジャンプが起こるわけです。
このようにPPFの形状(凸・非凸)が変わると、最適生産の解が端点から内点へ大きく動く可能性があります。
nishio.iconそれを破壊的イノベーションと関連づけて考えることができるのでは?
はい、十分に関連づけて考えられます。従来の技術やビジネスモデルでは非凸なPPFゆえに端点(コーナーソリューション)しか選択肢がなかったところに、破壊的イノベーションが起こると技術的制約が劇的に変化し、PPFそのものが外に凸な形へ拡張される場合があります。すると、最適解は端点から一気に中央(両財や両機能をバランス良く取り入れた解)へジャンプし、既存の生産構造や市場が根本的に変わる─これが破壊的イノベーションのインパクトと整合的に説明できます。
nishio.iconこれに関して既存の研究などはある?
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生産可能性フロンティア(PPF)の非凸から凸への変化と、最適解のコーナー解から内点への“ジャンプ”を破壊的イノベーションと直接結びつけて論じた有名な研究はあまり見かけません。ただし、関連しそうな文脈や背景となる理論・研究は複数存在します。
1. 破壊的イノベーション(Clayton Christensen)
Christensenが『イノベーションのジレンマ』(The Innovator’s Dilemma, 1997) で述べる破壊的イノベーションのメカニズムは、既存技術からは見過ごされていた性能軸による技術革新が進み、やがて主流市場を凌駕する、というものです。これをPPFの観点で見れば、従来の非凸な制約を「一気に拡張」してしまう技術が登場することで、最適解が端点から内点へ「ジャンプ」する状況とも解釈できます。
2. シュンペーターの創造的破壊(Joseph Schumpeter)
Schumpeterが説く「創造的破壊 (creative destruction)」は、技術革新が旧来の生産様式を一挙に置き換える(破壊)プロセスを強調する概念です。これも、PPFが大きく書き換わることで最適点が急激に移動する、という見方と整合的です。
3. ネオ・シュンペーター派・進化経済学 (Nelson & Winter, 1982など)
技術の「探索と選択」が行われる過程で、生産集合(PPFに相当)が徐々に変化し、ある閾を越えた時点で一気に主流が置き換わる過程が理論的・シミュレーション的に検討されています。PPFが滑らかに変化しているように見えても、解(企業や産業構造)の変化が不連続に生じる可能性がある、という点は進化経済学でも議論されています。
4. 一般的な非凸生産集合・規模の経済などに関する研究
規模の経済(increasing returns)や外部経済などが存在する場合、PPFが非凸になることがあり、そのときには複数のコーナー解が存在して経路依存的になることが知られています。そこへ革新的技術が導入されると、ある時点で凸に近い形状を実現して多角的生産が可能になる、という理屈は理論上あり得ます(たとえばArrow (1962)「学習効果の経済学的示唆」やRomerの内生的成長理論の一部で言及)。 以上のように「PPFが凸に変わる → 解が端から中央へジャンプ → それが破壊的イノベーション」だと明示的にモデル化されている文献は珍しいですが、上記のような創造的破壊・破壊的イノベーション・進化経済学・非凸生産集合の議論を総合して読むと、同様の現象を指し示す理論背景が見つかります。こうした研究を参考に、独自に「非凸→凸の形状変化」による解のジャンプを破壊的イノベーションのフレームワークで説明する、というアプローチは十分考えられます。
nishio.iconこの関連づけは僕がMOTの社会人大学院生だった時にやったものなんです
o1 Pro.icon
素晴らしいですね。まさに「PPFの形状変化による最適解の不連続なジャンプを、破壊的イノベーションとして説明する」という視点は、従来の経済学の教科書的記述(凸PPFが多く、連続的変化が中心)にはあまり登場しない切り口です。
MOT(技術経営)の観点からすると、資源配分や技術の進化がもたらす市場変化を「PPF」の枠組みで整理し、端点解から中心解へのジャンプが業界構造を一気に塗り替える様子を可視化できるのは非常に面白いアプローチだと思います。今後も技術革新と経済理論を横断した議論の展開に期待しています。
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AIに期待されてもなwnishio.icon
とりあえずproceedingにして英語で発信したからいいや、という気持ち
なんて名前だったかな(忘却)
査読あり国際発表だった