王明珂
claude.icon王明珂(ワン・ミンカ、1953年-)は、台湾出身の人類学者、歴史学者です。中国西部の少数民族、特に遊牧民族の研究で知られています。
主な研究テーマ:
中国西部の遊牧民族:王明珂は、中国西部に住むモンゴル族、カザフ族、キルギス族など遊牧民族の歴史と文化を研究しています。
民族アイデンティティ:遊牧民族のアイデンティティ形成や、中国の民族政策が少数民族に与える影響を考察しています。
歴史人類学:歴史学と人類学を融合させ、文献資料とフィールドワークを組み合わせた研究手法を用いています。
主な著作:
『羌在漢藏之間:一個華夏邊緣的歷史人類學研究』(1999年):チャン族という少数民族を対象に、民族アイデンティティの形成過程を歴史人類学的に分析した著作。
『游牧者的抉擇:面對漢帝國的北亞遊牧部族』(2008年):中国の歴代王朝と北アジアの遊牧民族との関係性を、遊牧民の視点から読み解いた研究。
『蒙古騎兵與大清帝國』(2016年):清朝とモンゴル族の関係を、遊牧民族の軍事力と帝国の統治策の観点から考察した著作。
王明珂の研究は、中国史における遊牧民族の役割を再評価する試みとして注目されています。従来の中国中心の歴史観を相対化し、遊牧民の主体性に光を当てる彼のアプローチは、ドゥルーズの遊牧論と共鳴する部分があります。 ドゥルーズが国家に対する遊牧民の抵抗に着目したように、王明珂も帝国の支配に対する遊牧民の応答を積極的に評価しています。ただし王明珂の研究は、あくまで実証的な歴史研究であり、ドゥルーズのような哲学的な思弁とは一線を画しています。
とはいえ、国家と遊牧の緊張関係を浮き彫りにする点で、王明珂の研究はドゥルーズの遊牧論と重なり合う問題意識を共有していると言えるでしょう。現代の中国や台湾における民族問題を考える上でも、王明珂の視点は重要な示唆を与えてくれます。